――「ふ~、くったくった。ごちそーさま」「おう」 身体の殆どが胃袋なのではないかと疑う量を平らげた彼女は、腹をさすって満足気に店を出た。 帰り道、コートをずって歩く後ろ姿を、東条は黙って見つめる。「……なぁ、服見に行くか?」「ん?これでもいいけど」「動き辛ぇだろ」「……確かに」 彼女は余った袖を持ち上げ、言われてみれば邪魔だと頷く。「行くか」「ん」 次の目的地を決めた彼等は、スポーツ用品店へと足を向けた。 ――「適当に選び」「ん」 子供用売り場へ、トテトテと走って行く彼女を見届ける。 椅子に座って休もうとし……、一度漆黒を解き、自分の着ているボロボロの服を見た。(……この際だから俺も変えるかな) 思えば、洗濯はしているものの、握り潰された時からずっと同じ服を着ている。 彼としては常時服を着ている様なものなので、二、三日裸でも問題ないのも要因ではある。 東条は服を脱ぎながら商品を物色し、遅めの衣替えの準備を始めた。 ――数十分後。「まさー、まさー!」「なんじゃい」 試着室から顔だけ出した彼女が、大声で東条を呼びつける。「そこ座って」 試着室前に一つ置かれた丸椅子。 東条は言われるがまま腰を下ろした。「いくよ」「おう」「じゃーん」「おー、似合ってるじゃん」 飛び出した彼女が身につけているのは、白の上下インナー、白の半袖、白の短パン、白のランニングシューズ。「ファッションもクソもないけどな」「えっへん」「まぁ褒めてはいる」 全身白コーデなど、余程自分に自信がある者か、選ばれた美形以外に出来るものではない。 目の前の蛇は直感でそれを分かっているのか、それとも自覚してやっているのか、どちらにしても性質が悪い。「まさのも見せて」「あ?」「着替えてたでしょ」 どうやらバレていたらしい。「しゃーねーな。俺のセンスに酔いしれな」 漆黒をパッ、と霧散させ、新しいコーデを見せつける。 黒の上下インナー、黒の半袖、黒の短パン、黒のランニングシューズ。 ……ファッションもクソの欠片もない。 彼女は自分の服と彼の服を見比べ、一言。「……似た者同士」「YEAH~」「YEAH~」 拳を合わせた。「ジャケットは山岳用から選ぼうぜ」「なんで?」「耐水、耐寒、耐熱、どれをとってもトップクラス。
Terakhir Diperbarui : 2026-07-30 Baca selengkapnya