Semua Bab Real: Bab 91 - Bab 100

146 Bab

93話

  ――「ふ~、くったくった。ごちそーさま」「おう」 身体の殆どが胃袋なのではないかと疑う量を平らげた彼女は、腹をさすって満足気に店を出た。 帰り道、コートをずって歩く後ろ姿を、東条は黙って見つめる。「……なぁ、服見に行くか?」「ん?これでもいいけど」「動き辛ぇだろ」「……確かに」 彼女は余った袖を持ち上げ、言われてみれば邪魔だと頷く。「行くか」「ん」 次の目的地を決めた彼等は、スポーツ用品店へと足を向けた。 ――「適当に選び」「ん」 子供用売り場へ、トテトテと走って行く彼女を見届ける。 椅子に座って休もうとし……、一度漆黒を解き、自分の着ているボロボロの服を見た。(……この際だから俺も変えるかな) 思えば、洗濯はしているものの、握り潰された時からずっと同じ服を着ている。 彼としては常時服を着ている様なものなので、二、三日裸でも問題ないのも要因ではある。 東条は服を脱ぎながら商品を物色し、遅めの衣替えの準備を始めた。 ――数十分後。「まさー、まさー!」「なんじゃい」 試着室から顔だけ出した彼女が、大声で東条を呼びつける。「そこ座って」 試着室前に一つ置かれた丸椅子。 東条は言われるがまま腰を下ろした。「いくよ」「おう」「じゃーん」「おー、似合ってるじゃん」 飛び出した彼女が身につけているのは、白の上下インナー、白の半袖、白の短パン、白のランニングシューズ。「ファッションもクソもないけどな」「えっへん」「まぁ褒めてはいる」 全身白コーデなど、余程自分に自信がある者か、選ばれた美形以外に出来るものではない。 目の前の蛇は直感でそれを分かっているのか、それとも自覚してやっているのか、どちらにしても性質が悪い。「まさのも見せて」「あ?」「着替えてたでしょ」 どうやらバレていたらしい。「しゃーねーな。俺のセンスに酔いしれな」 漆黒をパッ、と霧散させ、新しいコーデを見せつける。 黒の上下インナー、黒の半袖、黒の短パン、黒のランニングシューズ。 ……ファッションもクソの欠片もない。 彼女は自分の服と彼の服を見比べ、一言。「……似た者同士」「YEAH~」「YEAH~」 拳を合わせた。「ジャケットは山岳用から選ぼうぜ」「なんで?」「耐水、耐寒、耐熱、どれをとってもトップクラス。
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94話

  ――「スマホ欲しい」「いきなり?」 テレビの中でモンスターを一狩した後、彼女が思い出したように東条を見た。 娘にスマホを強請られる親は、こんな気持ちなのだろうか。「ねぇ」「おぅ」「まさはスマホ持ってる?」「いや、ぶっ壊れたな」 彼のスマホは、握り潰された時一緒に粉々になってしまっていた。 当然、それっきり誰とも連絡を取っていない。「じゃあ行こ」「だけどよ、このデパートの中に売ってるとこないぞ?」「?出ればいいじゃん」 何の問題があるのか?当然の事を彼女は言う。 しかしその言葉に固まる東条は、納得したような、元から分かっていたような、そんなうら寂し気な空気を纏い、画面の一点を見つめた。「…………あぁ、そうか。……そうだよな」「……」 彼女は何故か俯く東条をじっと見つめ、コントローラーを置いて立ち上がる。「行こ」「あ、あぁ」 彼の手を取り、ジャンパーを持って下階へと向かった。 ――外を染めるのは、何物にも染まらない純潔の色。 東条と彼女はブーツに履き替え、別世界の入り口に立った。「雪だね」「……あぁ」 しんしんと降る風花が、街に、破壊の痕跡に、自分好みの化粧を施している。 そういえば今日は雪だったか。 東条は白い息を吐き、晴れ渡る空を仰ぎ見た。「あ、おい」 銀世界の中に躊躇なく飛び込んでいく、一人の女の子。 その中でも一際輝く白を持つ彼女は、まるで妖精の様であった。「早くっ」 お前も来い。彼女はそう呼ぶ。 しかし東条は足元の白の境界線を見つめ、一歩を踏み出すのを躊躇する。 彼はあれから一度も、デパートの外に出ようとしなかった。 いや、出れなかった。 屋上は問題ないのだ。ただ、出入り口から外に行くことが出来なかった。 一歩でも外に出てしまうと、何か、大切なものが消えてしまいそうで、それが怖くて、いつも引き返してしまう。 ……本当は分かっている。 ここには何もないことも。 ここに留まっていても仕方ないことも。 ……彼等はもう、何処にもいないということも。 そんなこと分かっている。 ただ、どうしても動かないのだ。足が、身体が……どうしても! 前に進むことを、全力で拒否する。 ……どうすれば良いのか、もう自分には分からない。 ……どうすれば良かったのか、もう自分には分からない。
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95話

 「……」 初めて見る、彼の表情。 初めて見せてくれた、彼の心の奥。 いつもは大きくて頼りになる彼の身体が、いまはとても小さく、弱弱しく見える。 彼女は突き動かされるように、東条の元へ向かった。 俯き地面を映す視界に、彼女のブーツの先が入り込む。「まさ」「……わりぃ」 きっと今自分は、相当情けない顔をしてしまっているだろう。 すまないが一人で行ってくれ。そう口に出そうとした、その時、「んガっ⁉」 頬を両側から挟まれ、勢いよく地面に膝を付かされた。 驚き目を見開く東条。 そしてその瞬間、息を呑んだ。 ――眼前に現れる、吸い込まれるような、深い、深い、紫の瞳。 恐ろしく美しい、しかしどこか儚げな。 ……それはまるで、彼女に渡したブローチの様で。 それはまるで、彼女自身の様で……。「まさ」「……」 ――「大丈夫だよ」 優しく、諭すように、白い妖精は言った。 彼女が何を思い、何を伝えたくて、その言葉を口にしたのかは分からない。 深い意味など、そもそもないのかもしれない。 ……ただ、傷だらけの彼の心に、ゆっくりと染みていく。 ……癒すように……包み込むように。 東条は唖然とその瞳を見つめ、そして、怒気を宿して彼女を睨んだ。 お前に何が分かる? この痛みが。 この悲しみが。 この喪失感が。 奪う者だったお前に分かるか? お前に俺の、何が分かる⁉ 声に出そうと、怒鳴ってやろうと開いた口からはしかし、何も出てこない。 代わりに頬を伝う、温かい雫。「大丈夫だよ」 やめろ。「大丈夫」 やめてくれ。 呟かれるごとに、雫の量は増え、やがては一本の線となる。 抑えていた何かが、自分でも分からなかった何かが、止めどなく溢れ、雪を濡らしていく。 東条は泣いた。 声を上げて泣いた。 今だけは、小さな胸の中で、全てを吐き出すように泣いた。
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96話

  ――「……わりぃ、もう大丈夫だ」「ん」 頭に回されていた腕が解かれ、東条は自力で立ち上がる。 どうにもこっ恥ずかしくて、下から覗き込む彼女から眼を逸らした。「その、なんだ。……ありがとうな」「ん」 差し出される手。 小さく頼りない手が、今だけは、とても大きく見えた。「――っ……」 握り返すとグイ、と引かれ、一気に扉の向こうへ連れ出される。 振り返れば、デパートのドアは後ろにある。  ……こんなにも簡単だったのか。前に進むというのは。 自分を照らす太陽に目を窄め、漆黒を出そうとして、……やめた。 胸いっぱいに冷たい空気を吸い込み、埃塗れの肺を一新する。  ……彼等はいなくなった。 でも、自分の中からいなくなったわけじゃない。  進んでいけばいい。  これからも。 彼等と共に。  重い荷を背負い直した東条は、きっかけとなった彼女の方を向く。 改めて礼を言わねば。「ありがブふッ……」 振り向いた直後、顔面に固い雪玉が直撃した。「バーン」「……ほぉ?」 綺麗な投球フォームのまま、彼女が言ってのける。 ……せっかく感謝してやろうと思っていたのに。……やめだ。 東条は腕部分を顕現、肥大化させ、筒状に構成。 無数に飛んで来る雪玉を躱しながら、その中に雪を詰めていく。 一瞬で肉薄し、砲口を突き付けた。「やば」「ふっとべや」 ボンッ、と砲声が鳴り、小さな身体が容赦なく宙を舞う。「――うげっ」 彼女は木に激突し、落ちてきた雪に埋まった。「……死んだか?」 大砲を肩に担ぎ、白い小山を見つめる。すると、「怒った」 にょきッ、と頭が生えた。「ハハハ、来いや」 飛び出す彼女を前に、漆黒を消し、今度は正々堂々と腕力だけで迎え撃った。 ――「――はぁっ、はぁっ、……やるじゃねぇか」「――はぁっ、はぁっ、……まさも」 お互いを湛え拳をぶつける。 手当たり次第に雪を投げ続け、禿げたコンクリートの上に寝っ転がる二人。 東条はジャンパーを脱ぎ、汗を拭う。  久しぶりに、こんなに身体を動かした。  下手したらホブよりも手強かったかもしれない。「はぁ、はぁ、……決めた」「何が?」 唐突に呟く彼女を不思議に思い、目を向ける。「名前」「……お前の?何で今よ」「思いついた」 彼女は空に手を翳し、降りしき
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97話

   ――「わぁ」「どれにすんだ?」 ずらりと並ぶスマホに飛びつくノエル。東条も店内を見て回る。「Orange」「安定のな」 背面のロゴ、齧られたオレンジがキラリと光る。勿論色は白と黒。 物珍し気に商品を弄っていたノエルだったが、そこであることに気付いた。「あ」「どした」「SIMカード無い」「なんじゃそりゃ」 SIMカードとは、簡単に言えば本人識別のためのICチップの様な物だ。これが無ければ通話すらできなくなる。要するに、携帯が携帯足り得る為の必須物だ。「売ってないん?」「売ってるけど、ノエルじゃアクティベートできない」 東条には難しくてよく理解できないが、それなら、「しょうがねぇ。引っぺがしに行くか」「……新品欲しかった」 むくれるノエルを連れ、虫取りならぬスマホ取りへと店を出た。 ――先にシャワーを浴びた東条は、タオルを肩にかけテレビを見ていた。「ただま」「おう、おかり」 濡れてぼさぼさの髪そのまま、ノエルがソファに飛び乗る。「……まさ、結構寝てるのにクマ酷い」「ん?あぁ、……寝ようとはしてるんだけどな、寝れなかったんだよ」 睡眠不足を感じた頃から寝る努力はしたが、全く眠ることが出来なかった。 ……だが、それも昨日までのことだ。「もう寝れる?」「……あぁ、お陰様でな」 頭をワシャワシャして、その湿度に驚く。「おまっ、全然髪拭いてねぇじゃん」「拭いた」「ったく。タオル貸せ」「わ、あわわわわっわわわ」 前に座らせ、タオルで頭をこねくり回す。 大体乾いたらタオルを放り投げ、先ほど木から引っぺがしてきたスマホを取り出した。 新品が使えないのなら、中古で我慢するしかない。運が良いのか悪いのか、そこらには持ち主のいなくなったスマホがゴロゴロと実っている。 既にノエルによってパスワードの解除と初期化を行われた二つのスマホは、新しい主として彼等の手に馴染んでいた。 汚くなったボディを拭き、ガラスフィルム、ケースを装着する。 何だかんだ、自分だけのスマホを創り上げるこの瞬間が一番興奮するのだ。「……でもよく考えたらさ、俺達電話番号持ってないよな」「SNSで何とかなる時代」「確かに。アドレスは適当に作ればいいしな」「ん」 すぐにアプリのダウンロードとアドレス作成の準備に入るノエルを後目に、東
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98話

  破壊されたドアを抜けると、一陣の寒風が彼の髪を撫でた。 雪は止んでいる。 開けた場所まで木々を抜けていくと、そこからは白い絨毯が敷き詰められている。 足部分を顕現させ、中央の巨木まで向かった。「……」 幹に身体を預け、ある番号を押していく。 最後に一瞬躊躇い、発信のボタンを押した。 プルルルル、プルルルル――『はい』「……よぉ」『――っ……何か言うことないの?』「わりぃ」『何日ぶり?』「2週間、くらい」『………………どれだけ、心配したかっ……』「……」 聞こえてくる震える声につられ、こちらの涙腺も緩くなる。『……何で?』「色々大変だった」『仲間の人達とは上手くやれてる?』「…………死んだよ、皆」 通話相手というよりも、自分自身に言い聞かせる様に、東条はその言葉を口にした。『……そう』「……あぁ」 沈黙が流れる中、ゆっくりと母が切り出す。『……今から、とても酷いことを言うかもしれないけど、これだけは聞いておいて。 ……私は、あんたが生きていてくれて良かった。……桐が生きていてくれて、本当に良かったっ』「……っ」 決壊しそうなダムを歯を食いしばって踏み止める。『これからは、メールでも何でもいい。お願いだから、連絡して』「……あぁ」『お父さんまた飛び出して行っちゃったんだから』「っ」「自衛隊の人に捕まって帰って来たけど」「……」『……あんたの事だから、冒険とか旅とか、止めても行くんでしょ』「……あぁ。見とかなきゃいけねぇ奴ができた」『……そう』 今まで以上に覚悟の籠った声に、母は一度考える。『……私達家族は、これからもずっと反対し続ける。でも、それに従うか従わないかは、あんたが決めなさい。そして決めた以上は、必ず後悔のない生き様にしなさい』「あぁ」『私から言うことはもうないわ。ちゃんと連絡寄こしなさいよ』「あぁ」『じゃあね』「……母さん」『ん?』「……ありがとうな」『――っ―――― 返事を待たずに切った東条は、一息吐き、空を見上げた。 前より星が美しく見えるのは、気のせいではないだろう。「まさー」「あ?」 彼を探しに来たノエルが、キャンプ用具一式を持って走って来た。「まさ?また泣いてる」「泣いてねぇよぶっ殺すぞ」 過去最速で全身漆黒を顕現させる。「……そ
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99話

  ――次の日から、彼等は早速行動を開始した。 東条とノエルの持つ『夢』をすり合わせ、『現実』へと昇華させるべく準備を始める。 運の良い事に、大まかな路線は同じ。 予め具体的な策を練っていた東条のやり方に、ノエルが全面的に乗っかることとなった。 そして、そうなると一番必要になってくるのがやはり、知名度・信頼・金・即ち、スポンサー。 無視できない程の影響力を持てば、銀行の口座も勝手に用意してくれるだろうという楽観的思考だ。 その足掛かりは、ノエルの希望通り『動画配信者』から始める。 ジャンルは無制限、彼女がその日体験したもの、事を、動画にして流す。 勿論国や企業の欲しがりそうな情報も流すが、そこは彼女の気分次第。 二人が上からの指示によって動く事は決してない。 彼等はそれに足る力を、度胸を、持ってしまっているのだから。 余談だが、この配信を機に全世界でにモンスター関連の動画投稿が急激に増加することとなる。 多くの命を奪った化物を、一般人がネタにすることは暗黙のタブーとされていたが、彼等が発端となりその枷が壊されたのだ。 安全地帯にいる者は、我先にと魔法やモンスターという未知を求め始めた。 §「進捗は?」「順調」 パソコンに向き合うノエルの周りには、山の様に積まれたプログラミングの本が並んでいる。 彼女が今ゼロから創っているのは、X tubeとは別の新しい動画サイト。 彼等が投稿するのは、基本赤色飛び散るスプラッタ動画となる。 そんな物をお茶の間でも流されるような場所にぶち込めば、秒でBANなど火を見るよりも明らかである。 だったらその為の場所を創ってしまえ、というのが彼女の見解である。「……なんかわりぃな。機械関連は力になれねぇ」「別にいい。まさには動画内で沢山働いてもらう。 撮るのがノエル。動くのがまさ。偶にノエルで目の保養」「……そうかい。お前目当てで来る奴も沢山現れるだろうぜ」「知ってる」「はっ。くえねぇ奴だ」 自分の美を理解してる女ほど厄介なものはない。 彼女は伸びを一つして、椅子から飛び降りた。「でも、二日もやってると流石に飽きる。身体動かしたい」「別にいいけど、何やる?」「……これから背中合わせで旅をする。相手の力は知っておく必要がある」 あまり好戦的ではないノエルからの予想外な発言に、
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100話

  ――場所は雪合戦と同じ場所。デパート前の大通り。 そこに立つ二人には、以前見られた楽しげな雰囲気など一切ない。 知らない者が見れば、彼等が仲間だなどとは到底思わないだろう。 それほどまでに濃密な、殺気、基魔力の衝突。「……思えばお前のcellを見んのは初めてだな。どうせ持ってんだろ?」 首の骨を鳴らしながら、東条は離れた位置に立つノエルに話しかける。「見せた奴は全員殺してきた」「怖ぇ~」 表情の変わらない彼女の目が、それを事実だと言ってのける。 人間も、モンスターも、彼女にとっては有象無象に過ぎない、と。「準備は?」「いつでも」 東条は全身を漆黒で武装し、戦闘形態に入る。 一瞬で身体強化を完了し、膝を曲げ前傾姿勢になった。「そんじゃ、スタートッ」 今まで本気を見せ合ってこなかった二人が、遂にその牙をぶつけた。 弾丸の如く飛び出した東条は、とりあえずノエルに真っ向から突っ込む。 彼のcellありきの、脳死の突撃。先ずは敵の攻撃方法を炙り出す。「ん」「――っ」 初動無しに大地から突き出した棘を掌で受け止め、足場にして再度跳躍。 その一瞬で、今度は全方向から土棘が東条に迫った。「しゃらくせぇ」 しかし全身から放った衝撃波で棘は砕け散り、何事も無く着地。 と同時に真下からものすごい勢いで石柱が生え、彼を空へ誘った。「――おぉ、高ぇ」 グングンと離れていく地面に、一種のアトラクション的楽しさを覚える。 本来なら上空に打ち上げられるか、耐えたとしても上からの風圧で押さえつけられ身動きが取れなくなるほどの速度。 しかし東条に物理攻撃はほぼ無効。 石柱の直撃だろうと風圧だろうと、彼には痛くも痒くもない。 何処まで伸びるのか、と石柱の上でヤンキー座りをしていると、「おっと」 下方から超速で槍が飛来。苦も無く掴んで止めた。 遥か下では、投擲のフォームを崩すノエルがしかめっ面をしている。 槍の飛来と同時に止まった石柱の全長は約十五m。加えて、ここまで伸びるのに一秒とかからなかった。 その速度と距離にドンピシャで合わせ、東条を射殺さんと槍を放ったのだ。 そんなノエルの魔力と動体視力、膂力は、正にモンスター級と言える。「やっぱ普通じゃねぇな、あいつ……ん?」 彼女の底知れ無さに戦慄する東条だが、ふ、と、自分が
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101話

 「……なんだよ、そりゃぁ」 ノエルを中心にして、大地が緑に染まっていく。コンクリートを貫き若葉が芽吹き、新芽はかえり花となる。 辺り一面が青々とした草原と化した。 東条は眼下に満ちる光景に、自分の目を疑う。 原理は一切不明。しかし、 無から有を創り出す。 それは正に、神の所業である。「まさー、降りてきてー」「……やだよっ、罠じゃん!」「……チっ」 見抜かれたノエルは不満気に、されど気にした風もなく、掌を東条に向けた。「なん、だッ⁉」 途端、持っていた槍がばらけ身体に巻き付く。絞殺さんとばかりに彼を締め上げた。「――ッあ⁉」 瞬間石柱が爆散し、中から四本の巨大な植物の根が現れる。 宙に投げ出された東条は、抵抗する間もなく四肢を固定され宙吊りにされてしまった。「……何だよこの辱めは」「いい気味」 鼻を鳴らすノエルをジト目で睨む。 確かに根の一本一本が、速く、固く、そして強い。 溜まっていくエネルギー量から察するに、生身だと全身グチャグチャになるくらいには力が籠っている。 東条はぐるりと周りを見て、一つだけ気になったことを問う。「なぁノエル!この木もお前が生やしたのかっ?」 二日目から突如現れたスカベンジャー。未だ謎だらけの木々を首で指す。「ん?違う。この子達モンスター。ノエルのは植物」「あ、やっぱこれモンスターなんだ」 その答えに納得する。 歩いて死肉を漁る木なんて、それはもう木ではない。トレントと命名してやろう。 別段深い意味はない只の質問であったが、謎が一つ解けスッキリした。「降参?」 見上げるノエルを、しかし東条は快活に笑う。「冗談っ、本当に俺をこんなので抑えられると思ってんのか?」「……」「……おけ、遊びは終わりな」 漆黒の腕が肥大化し、指は鉤爪の様に変形する。 自分の攻撃は触れた傍から打撃に変わってしまうため、斬撃系統の攻撃はできないが……まぁビジュアルは大切だから。 その黒は、あの時一時的に発現したものと同じ。いや、より禍々しさを増して、彼の全身に纏わりついていた。 初めて見る彼の化物染みた姿に、ノエルの頬を冷汗が伝う。 初めて感じる、本物の脅威。 自分の命を脅かし得る、本物の捕食者。 一歩下がりたい気持ちを抑え、グっ、と気合を入れた。「あん時は完全に呑み込まれちまったけ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-01
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102話

  ――「へー。じゃあ魔力使いすぎると元に戻っちまうのか」「違う。元に戻ったんじゃない。戻した」「何が違うんんだ?」「こっちも、こっちも、本当のノエル。生まれた形の方が楽ってだけ」 下半身だけ蛇化している彼女が、交互に自分の身体を叩く。「あー、んで原理は?」「パーってして、全部組み替える」「んん……」 ノエルの回復を見計らい、色々聞いていた東条だが、どうもパッとしない回答が多く困っていた。 そもそも彼女自身詳しくは分かっていないのかもしれない。そんな気がしてならない。「あの木生やすやつは?」「まさの言う、cell」「急速成長的な?」「違う。元は魔力。それを植物に変えれる」 少し現実的な度合いから突いてみたが、やはりというか、無から有を創り出す途轍もない能力。乾いた笑いが出てしまう。「いやー、神やん」「神」 ピースするノエルにピースで返す。「でも、まさのcellはその上。反則」「それほどでも」「まさのcell、単純に衝撃を吸収してるだけじゃない。衝撃は運動エネルギー。寝てる時キャンセルしてるのは光エネルギーと音エネルギー。……音は少し聞こえる様にしてるみたいだけど」「……なるほど」 確かに、そこら辺について深く考えたことは無かった。『吸収』と『放出』それが自分の能力の全てだと考えていた。「まさのcellの本質、エネルギーの変換だと思う」「変換?」「ん。今は取り込んだエネルギーを運動にエネルギーに変換してる」「……他もまた然り、か」「ん」 もしそうなら、やれることが大幅に増える。疑似的な魔法を使うことすら可能かもしれない。 一度諦めた夢の再燃に、東条の口角が上がる。「ありがとな。これから練習してみるわ」「ん」 新しい発見の感謝に、東条は休んでろと言い残し食料調達に向かう。 その背中に、「そう言えば」、と声がかけられた。「まさのcell、デメリットは?」「ん?別に無いと思うけど」「ありえない。Cellは、んー……魂、そう、自分の魂とか、在り方を具現化したもの、だと思う。限度を越えれば、肉体にしろ、精神にしろ、必ず浸食されてく」「ノエルに葉っぱが生えたみたいに?」「ん」 嫌に真剣な表情の彼女だが、思い当たる節が無いのだからしょうがない。「分からん。なんか気付いたら言ってくれ」「……ん。分か
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