――ステーキを頬張りながら、キーボードを叩くノエル。 長い間忙しくなく鳴っていた音が突然止み、東条がそちらに顔を向けた。「……よろしくおねがいします」 カチッ、とエンターキーが押され、一息吐き椅子に凭れる彼女。 達成感に満ち溢れた顔が、此方を向いた。「できたか?」「でけた」 皿を置き、興奮気味に歩み寄る東条。彼女の後ろからパソコンを覗き見ると、そこには歴とした動画投稿サイトが出来上がっていた。 真っ白なホームは、これから自分達が足跡を刻む場所である。「ノエル」「ん」 パチン、とハイタッチの音が、ボロボロの室内に気持ち良く響いた。「荷物は纏めといたぜ。下着類数着。雨靴。救急用品。キャンプ用具一式。その他もろもろ。あとこいつね」 ドガン、とドラム式洗濯乾燥機を地面に置く。「飯類は現地調達でいいだろ」「ん。いざとなったらあいつら食えばいい。動画伸びそう」「ハハハっ、投稿者らしくなってきたじゃねぇか」 殺戮スプラッタ動画の中にも、やはりユーモアは必要だろう。やってる方も見てる方も、面白いのが一番いい。「他に何かいるか?」「これと、ビデオカメラと、アダプター類と、予備バッテリーと、SDカード沢山」 事前に用意していた機械類を並べる。 既にパンパンな巨大リュックではあるが、「まぁ、押しこめば入るか」 たぶん入るだろう。「リュックはノエルが持つ。洗濯機は任せる」「それはいいけど、重くないか?」「余裕」 ヒョイ、と片手で持ち上げるその姿に、そう言えばこいつ人外だった。という事実を思い出す。 漆黒に乗せてしまえば済む話ではあるが、戦闘時のリソースを無駄に裂くことになるのも事実。ここは素直に甘えようと考えた。「それで、準備は完璧に整ったわけだが……いつ出る?」「今」「却下」「明日」「おけ。……いよいよだな」「ん。楽しみ」 遂に迫る冒険の門出に、二人は無邪気に笑い合った。 § ――静謐が包む夜の屋上。瞬く星空の下で、東条は墓を作っていた。 ノエルに作って貰った大きめの木の杭。そこに、共に過ごした皆の名前を、一人一人丁寧に彫っていく。 名前を覚えるのが苦手な自分が、彼等の名前だけは鮮明に思い出せる。 それほどまでに濃く、美しかったあの時間。 出会い、 打ち解け、 遊び、 喧嘩し、 恋をした。
Terakhir Diperbarui : 2026-08-01 Baca selengkapnya