――(……死んだな) 霞みがかる脳裏で、自分の敗北を理解する。 もう指の一本も動かない。このまま握り潰されるか、食われるかのどちらかだろう。 彼は諦め、最後に唾でも吐いてやろうとキングの顔を見る。 笑っていた ようやく見れた敵の悶える姿にか、自分の勝利を予感してか、キングの顔にはべったりとした笑みが張り付いていた。(……あ?) 状況も忘れ、唖然としてしまう。(……何、笑ってんだ?)(……俺が、笑われてんのか?) 極限の身体状況の中、思考が暗い闇に呑まれ、感情の濁流に意識を持っていかれる。 緊張? 焦り? 恨み? 後悔?(……なぜ?)自分という定義の境界が曖昧になっていく。不安? 自責? 嫌悪?(……俺が、守れなかったからか?) 諦念? 絶望? 憎悪? 悲しみ?(……俺が、皆を、死なせたからか?) 自分の中にある願望が、欲望が、無理矢理広げられていく。(………………違うだろ) 怒り?(……悪いのは、お前だろ)(俺から奪ったのは……お前だろ) 自分が抱いてきた大切な感情、想い、記憶は漆黒の中へ消え、『奪われた』という他者からの干渉のみに強烈な執着が纏わりつく。 (……笑うな) 思い通りにならない世界に対しての、 放心? 容認? 拒絶? (その顔を……) 自分をを阻む全てに対しての、 恐怖?(……やめろ) 不可侵な程に自己中心的な、 殺意 ――――「……」 ゆらりともたげた東条の貌は、のっぺりとした漆黒に包まれ表情が無かった。
Terakhir Diperbarui : 2026-07-25 Baca selengkapnya