Semua Bab Real: Bab 111 - Bab 120

146 Bab

113話

 「ここかー」 女子大に辿り着いた二人は校門に立ち、その地球が喜びそうな風景を眺める。 グラウンドは軽い森林地帯と化し、校舎からは窓を突き破り植物が飛び出している。 やはりというべきか、今まで通ってきたどの場所よりも人の痕跡が多い。 しかし、「人はいっぱいいたみたいだな」「ん。望み薄」 それは生者の跡ではなく、死者の痕。緑の濃さと死の濃さは比例する。 無駄な捜索は御免被りたい。東条はどうしようかと考え、「大声出してもだいじょぶかね?」 呼びかけてみるか?と提案する。「ノエルもここら辺来たことないから、どんなモンスターいるか知らない」「そりゃそうだ」 腕を組み策をを練ろうとするが、もうどうでもよくなってきた。女子大生がいないのなら、自分にとってこの場所は用済みである。「……行くか」「ちょいまち、いいのあった」 そう言うノエルがリュックを漁り、いつの間に入れたのかスピーカーを取り出した。 ――スピーカーを校門の前にポツンと置き、二人は物陰から様子を見る。「ブルートゥース」「良い案だ」 ノエルがスマホを操作すると、大音量で軽快な音楽が流れだした。同時に二人は複数ある建物に目を凝らす。 もし生き残っている人間がいるのなら、外の見える位置にいるはず。そこでこの音楽を聞けば、顔を見せないはずがない。 ……だが、「……いたか?」「モンスターなら」「そりゃ、奴らもいきなり音がなりゃビックリするわな」 窓に見えるのは、何だ何だと顔を出す人外ばかり。人の姿は一つもない。「全滅だな」「ん。ドンマイ」「残念ではある」 ポンポンと背中を叩くノエルに恥ずかしい同情をされたまま、東条は中腰になる。「補助は?」「マズいと思ったら頼む」「ん」 ノエルを背負い立ち上がり、一番の功労者であるスピーカーを見やる。 その小さいボディは、既に集まったモンスターによって包囲されてしまっていた。「行くぜ?」「ん――っわー」 踏み込み、加速。 純白の髪が靡き、景色が飛んだ。「それうちのなん、でッ」「バギャしゅ――」 巨大な爬虫類型を跳び蹴り殺し、包囲網を破った東条は、ブツを拾いすかさず跳躍。 状況に気付いたモンスター達の雄叫びを背に、一直線で東へと走った。 別に大した理由は無い。次の目的地である帝国大学が東にあるからだ。「
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114話

 「……強ぇな」 牛頭の魔物、ミノタウロス。単純な膂力はゴブリンキングと同等かそれ以上、魔力量は自分と同じ位か。「撒ける?」「やってみっ、かッ」「ゴブルァ‼」 踏み込み、一気に駆け出す。 戦闘を楽しむ節のある東条だが、自分から死に首を突っ込む様なバカな真似は基本しない。 面倒臭そうな相手とはなるべく戦いたくないし、やり過ごせるならやり過ごしたい。 絶対に勝てる相手とだけ戦いたいし、そっちの方が楽で楽しい。それが彼の本音であり性根だ。 槍の様に飛んで来る電柱が地面に突き刺さるのを横目に、再度跳躍してミノタウロスの拳を躱す。 木々が吹き飛び、地面が放射状に罅割れた。 同程度の魔力で殴り合えば、勝敗が分かれるのは単純に肉体性能の差。遺憾ながら、今の東条と言え、それに関しては向こうに軍配が上がる。 久しぶりに出会った、格上。「無理っぽい。使うぜ?それともお前がやるか?」「よろ。じゃあ倒しちゃお」「はいよ」 ただしそれは、cell抜きでの話。 パワーぶっぱの筋肉達磨など、彼にとって手玉以外の何物でもない。 顕現する漆黒はノエルとリュックも一緒に包み込み、傍から見たらその姿は二足歩行のカメの様にも見える。 動画ではもう少し後に見せて更なる話題を呼びたかったが、流石特区、そう簡単には進ませてくれない。「普通に外見える」「そりゃそうだろ」 不思議な感覚にキョロキョロするノエル。 東条の腹にミノタウロスのボディブローが突き刺さった。「手、おっきくない」「ありゃ本気モードだ。なんか色々疲れるから普通はやらん」 ミノタウロスの殴打が彼の顔面を襲う。「ノエル強かった?」「いやめっちゃ強かったぜ?あのパンチは一点集中してなかったら普通に死んでた」「惜しかった」「惜しかったじゃないわ」 電柱を引き抜き、ぶん回し殴りまくるミノタウロス。 しかし全く動かないそれに、遂には鼻息を荒くして一旦攻撃を止めてしまった。「ブフゥ、ブフゥ――」「……んじゃ、終わらせるか」「ん」 全力を尽くしてくれたミノタウロスに向き直り、彼は大地を蹴り砕いた。「――っ」 ノエルはその馬鹿げた加速に目を剥く。風圧やGを感じることはないが、今まで飛んでいた景色が、一瞬線になったのだ。外から見ても凄かったが、体感するのとではまた違う。 彼女は錯覚的な
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115話

 §「「「――ッ⁉」」」「な、なんだ⁉」 警戒に警戒を重ね目的地を目指していた四人の男女。 何かの破裂音の直後、民家をぶち抜いてきた、瓦礫に埋もれるそれに驚愕する。「……死、んでる?」 見たことのないモンスターの首なし死体は、当然かなピクリとも動かない。「い、一旦隠れましょうっ。音に集まってくるかもしれません」 中年の指示に従い、四人は恐怖に固まった筋肉を叱咤して近くの民家に息を潜めた。 ――暫く外の様子を窺っていると、複数の足音が聞こえてきた。 さっ、と窓の下にしゃがみ、近づいてくる音をやり過ごすべく息を殺し耳を澄ます。 心臓の音がうるさく響き、口の中が乾いていく。 死への覚悟など、そうそう出来るものではない。 今まで生き残って来たからと言って、今日死ぬかも分からない。 恐怖と懇願に、震える拳を握りしめた彼等は、 徐々に響いてくる話声に目を見合わせた。 § ――「……できたか?」「あとちょい」 東条の背中でパソコンを弄るノエルは、先程思いついた案をプログラミングに書き込んでいく。 というのも、「バトルシーンだけ有料化するっつっても、俺ら金保存する場所なくね?」「ダイジョブ。ポイント化して後で換金できるようにする」「はー。そんなことも出来んのか」 彼女が考えたのは、よくあるプレミア会員制度の導入。 モンスターの特徴や戦闘方法など、羽振りのよさそうな連中が欲しがりそうな情報の大体が、バトルシーンに集約されてしまう。 しかしだからと言って一切の情報を秘匿してしまうと、相手方が此方に要求する際、欲しい情報を明確にできない。 ならばいっそ、バトルシーンはそれとして全国民から金を毟り取ればいいと考えたのだ。 会話でも、バトルでも、これはマジで売れると思える箇所だけ、適当に切り抜いてしまえばいい。 彼女の労力は多少増えるが、ノエルにとってもこれくらいなら許容範囲内であった。「モザイク処理とかは?」「めんどくさいし、多分そーゆーの欲しがる人間はモザイク剥がす技術持ってる」「なるほど」 機械面で何も分からない東条は、動画関連の全てをノエルに任せている。 彼女のやる事は間違いないと信じているし、正直ミスしても間違っていても別にいい。 自分は楽しく冒険できて金が稼げればいい。 彼女のやりたいことなのだ。彼女が楽し
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116話

  ――「あの、あなた方は人ですか?」 中年の男は東条達を見て狼狽える。 目の前に現れたのはモンスターではなく、顔が塗り潰された男と、どう見ても日本人ではない、というより人外の美しさを持つ少女。 でもなぜか丸眉。「人ですね」「愚問」 失礼なことを聞いた、と中年が頭を下げる。「申し訳ございません。何分外で人に会うのは久しぶりでして」「気にしないでいいっすよ。立ち話もなんですし、どっか入りません?」「え、えぇ。では」 東条に促されるまま、四人は慎重に辺りを警戒しながら進み始めた。 ――コンビニに向かうところだったと聞いた東条は、「だったらそこで話しましょう」、と彼等の先頭をズンズン進んで行く。 四人は焦るように彼の後に続いていた。 普通の徒歩とは言え、いつもの自分達の三倍は速いスピードで歩く二人に、我慢できなくなった中年が口を開く。「……あの、同行してもらえるのはとても有難いのですが、そんなに急いでもらわなくても。 モンスターが襲ってくるかもしれませんし、その、警戒しなくては」 周りを忙しなく見回し、過剰なほどに怯えた素振り。 しかしそれは東条から見た感想。彼等の警戒は至って普通であり、褒められるべきものである。「……皆さん属性魔法、は無理か?強化辺りかな、使えますよね?」 東条は彼等のことを、感じる気配からしてそれなりに戦える人達だろうと推測をつけていた。「え、えぇ。なぜそれを?」「勘です。質問なんすけど、ぼんやりと俺とか仲間から何か感じません?」 魔力の知覚は分からない人に説明をするのが難しい。適当に聞いてみるが、「……いえ、とくには何も」「私も」「俺も」 「僕も」 反応は無し。しかし、その答えに東条は納得する。「人は魔力に疎いのかと思ってたけど、単純にそこまで来てないのか」「ん。実力不足」「言い方きついぞ?」「ごめ」 考えていたのだが、もし自分達がモンスターも近寄りがたい程の圧を放っているのなら、人間も少なからずそれに気づくのではなかろうか。 初め四人に会った時、それで警戒されていると思ったのだが違ったらしい。 加藤さんや温泉ラッコが反応しなかった時点で大体の察しは付いていたが、どうやら、意識して魔力を振りまかない限り、一定の実力にない者は分からないようだ。「……あ、あの、ちょっ」 四人は
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117話

  ――彼の宣言通り、簡単に目的地についてしまったことに驚きを隠せない四人だが、すぐに気を取り直してバッグに食料を詰め込み始めた。 中年は思う。黒い顔の彼はああ言っているが、自分達に染みついた恐怖が簡単に薄れるわけではない。 嗅ぎつけたモンスターが、今にもこの場所に来るかもしれない。 その前に食料を取っておかなければ。 それに、ノルマを果たさないと……。「冬のアイスってうめぇよな」「分かる」 我が物顔で冷凍庫を漁る二人が、彼等には少し羨ましく見えた。 ――「皆さん何も食べないんですか?」 一旦仕事を終わらせた四人に、カウンターの上に座る東条が尋ねる。 まだまだ食い物はあるというのに、彼等は何故か手を付けようとしない。「……はい。その、勝手に食料に手を付けたことがリーダーにバレると……」「……」 リーダーという言葉を聞いた数人が、俯きながら顔を顰める。 東条はそれに気づかないふりをして、洗濯機を漆黒で手元に引き寄せた。 ミノタウロスとの戦闘で裸のまま振り回された可哀想な電化製品は、外装がべこべこになってる以外は問題なく動く。「でしたらこれどうぞ」 蓋を開けると、中には大量の保存食が詰め込まれていた。「い、いいのですか?」「これ人に配る用なんで」 一人一人に三つずつ渡していく。「こ、こんなに」「食わなきゃ元気は出ませんからね」 彼等からすると、一か月ぶりに見たまともな量の食事。今何よりも欲しいものであった。「……ありがとうございます」「有難うっ」「ありがとうございます」「感謝します」 降って湧いた天からの贈り物を、彼等は感謝と共に嚥下した。 ――撮影の許可を得たノエルだが、変化のない黙々とした食事風景に飽きていた。 そこで、彼女はさっきから聞きたくて仕方が無かった疑問を四人にぶつける。「リーダー。問題ある人?」「おいっ」「ん?」 東条は心の中で頭を抱えた。 彼等が何人規模の集団に属しているのかは不明だが、少なからず問題を抱えていることは察しが付く。 下手につついて関りを持たないよう気を付けていたのに……こいつは。 どうせネタになりそうだからとか下らない理由だろうに。「ネタになりそうだから」 ほれ見た事か。 ノエルの質問に全員が食事の手を止め、代表して中年が恐る恐る口を開く。「……実はで
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118話

 「……あのおっさん達無事かな」「……」 ネットカフェの外、バリケードの内側。 軽食を食み、休憩をする四人の若者達がいた。 彼等の表情は一様にして暗く、充満する空気もどことなく重い。「強く言い過ぎたかな」「そんなことねぇよ。あっちも俺らを売ろうとしたんだ。 ……どっちが間違ってたとかじゃねぇんだよ。俺もあっちの立場なら同じことをした」 あまり話す間柄ではないといえ、こき使われる者同士今まで生き残ってきた仲だ。 なんだかんだ互いに共感し、心配し合っているのも事実だった。 だからと言って何かできるという訳でもないのだが……。「……俺達なら、四人でも特区出れんじゃないかな?」 いつも話題に上がる脱出計画。しかし出る答えも、いつもと同じ。「常に張り詰めて、夜もぐっすり眠れない中、いつ来るかも分からない襲撃に怯えるんだ。お前耐えれんのか?」「……」 全員が黙り込んでしまう。その沈黙が彼等の意思を代弁している。「……それに見たろ。リーダーが戦ってたホブってやつ。あんなのに勝てると思う程、俺は自惚れてねぇよ」 一度だけ見た事のある、快人の戦闘。 その時に戦っていた相手は、自分達では到底届かないレベルの敵であった。 そして快人は、そんな敵を圧倒していた。 策も無く出たら確実に死ぬ。非情な現実を、彼等はあの場で実感したのだ。「たまに出てはレベル上げ、持ってきたもんは全部自分とあの女の物。 そもそも何だよあのクソギャルっ、体で媚び売りやがって、余裕あんならガリガリに痩せたあいつらに分けてやれよっ「おい、……落ち着け」 感情的になる一人を、もう一人が冷静に宥める。「聞かれたら即追放だぞ。聞かれなくても不味い。その状態であいつの前に出るなよ?」「……分かってるよ。わりぃ」 ――雑談も区切りがつき、鍛錬に戻ろうと立ち上がった。矢先、「――おいっ、何が来た!」「え?」 ドアを開け、快人とキララが飛び出してきた。 初めて見る快人の焦燥に、隣にいる彼女も焦っている。「チッ、速く外を確認しろっ。何かいる」 命令を受けた四人は、慌てて土で造られた高台に上り、恐る恐るバリケードの外を眺める。「……んだよ、おっさんじゃねぇか。と、誰だあれ?」 β隊の後ろには、見たことのない顔が二つ並んでいた。「もしもしリーダー、今帰ったので
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119話

 「君達、心優しい旅人が食事を恵んでくれるようだ。一度外に出てくれ。早く」 突然の指示に狼狽える避難民だが、抵抗する意思もない彼等は怯えながらも快人についていく。 外に出た総勢二十数人の集団は、自分達の先に四人の若者がいるのを見て安堵した。 普段から素っ気なくも、優しく接してくれるα、β隊の八人は、快人なんかよりもよっぽど信頼できる人達だ。 そんな四人の方に歩き出す集団を確認し、……快人は背を向けた。「キララ、もう少し下がってくれ」「わかった」「……あれ?快人さ「グランドウォール」 立ち去る快人に気付いた一人が名前を呼ぶも、声は届く前に堅牢な土壁に阻まれる。 一瞬にして拠点を囲む様に自分達とを分断した五mの壁に、誰もが唖然とする。 そして脳裏を過る。囮の文字。「嘘だろ⁉」「お願い助けて!」「子供だけでも!」 大騒ぎになる、寸前、「落ち着いて下さい!大丈夫ですから!」 快人が壁を張ると同時に開けた穴を通り、中年が声を張り上げた。「リーダーはこの方を信頼していないだけです!皆さん普通に戻れますので心配しなくて大丈夫です!」 前に出る東条に数人が怯えるが、お構いなしに洗濯機を地面に下ろす。「こん中に食べ物入ってるんで、好きなだけどうぞ」 そう言って再び下がる東条は、彼等を怖がらせないよう、なるべく距離を取って地べたに腰を下ろした。 大量の食料を配っていく中年と、その周りに広がる食事風景を遠目に見る。「ガリガリ」「あぁ。まともに食わせてもらってないんだろうな」 コンビニで聞いていたため、然程驚きはしない。「可哀想?」「別に」 東条は大して興味も無い、と空を見上げ、ふわふわと揺蕩う綿雲を眺める。「何もできないし、何もしないし、何もしようとしてないんだろ?じゃあ戦える人間優先に飯配んの当然だろ」 嘗て自分がいた場所では、皆が一人一人出来ることを探し、互いに尊重し合い助け合っていた。 全力で生きていたからこそ、誰も卑屈にならず、自暴自棄に陥らなかった。 自らの存在意義を確立するというのは、集団の中では必須のスキルだ。それで心持も変わるし、活力も湧いてくる。 ただそれも、上に立つ者によって大きく左右されるのは否めない。 もし自分が最初からあの場にいて、有り得ないがリーダーをしていたら、きっとここと似たような環境になっ
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120話

 「快人?そんなに警戒する必要あるの?」 壁に小さな穴を作り、外を覗く彼にキララが尋ねる。(見ていれば奴の能力のヒントが分かると思ったけど、皆目見当がつかない。 奴は僕の能力に気付いている節があった。僕と同じ部類と見るのが妥当か? じゃあ、あの黒いのは何だ?クソっ)「快人?」「あ、あぁ。ごめん」 心配気な彼女に、無理矢理笑顔を作る。「もし何かしてきたらぶっ飛ばしちゃえばいいじゃん!」 言い切るキララは、彼の強さを疑っていない。 そんな健気な姿に、快人の笑みが引き攣る。 快人は気付いているのだ。あの得体の知れない何かが、自分より格上だという事実に。 黒い男だけではない。魔力量で言ったら、女の方がずば抜けて高い。 肌を伝う冷や汗と鳥肌は、初めてモンスターに襲われたあの時を思い出させる。 大学の帰り、彼はいつも通りネカフェで漫画を読んでいると、突如叫び声が聞こえモンスターが雪崩れ込んできた。 店内を必死に逃げるが、追いつかれ、傷を負わされてしまう。 目前に迫る鋭い牙。目を見開く自分。逃げたくても動かない身体。 瞬間、恐怖に付随する、死にたくないという叫びにに呼応したのか、床が盛り上がりモンスターを天井に打ち上げた。 固まる彼だが、ふ、と気付く。 店内にいるモンスターの位置が分かるのだ。一匹一匹、鮮明に。 彼はそれから個室に隠れ、近づいてくるモンスターを察知して圧殺しまくった。 掃討する頃には、彼を慕う仲間もでき、外から避難民もやってきた。 皆が彼を頼り、彼に畏怖していた。 ……順調だったのだ。全てが順調だった。 友達もできず、毎日を一人で過ごし、気力もなく生きていた自分が、遂に主役になれる時がきたのだ。 それだというのに、いきなり来た奴らが自分の領域を犯そうとしている。 邪魔するものは敵、皆敵だ。 ……いざとなったら……、「……僕よりは弱い。うん。僕よりは弱い。……行こうキララ」「うんっ。次は何のゲームする?」「好きなので良いよ」 ただただ、彼は自分の城を取られたくないだけだったのだ。 人を見下し、顎で使うことに快感を覚え、異を唱える者は切り捨てる。 さながらそれは、自らを王と錯覚した、愚者の様であった。「まささん、有難うございました」「「「ごちそうさまでしたっ」」」大勢の者に頭を下げられる東条は
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121話

          §『お前ら、プレミアム入ったか?』                      『愚問』『愚問』                      『愚問』『金払ってないのが悪いくらいだったからな』                      『間違いない』『それじゃあ冒険に』              『レッツゴー‼』――『おい、まさかノエルちゃん、風呂にカメラ持ってく気か?』   『何も問題ない。日本はそういう文化だ』『そうだぞノエルちゃん。何も問題ない』                      『ガンガン持ってこう』『クズしかいねぇ……』『ん?おい待てカオナシさん。何でノエルちゃんと一緒にいる⁉』 『まさかこいつ、一緒に入る気じゃ⁉』『女⁉』 『な訳あるか‼あ、余計な事言うんじゃねぇ‼』『カメラが⁉』『許さねぇぞカオナシ‼テメェだけは絶対に許さねぇ‼』『ああああぁぁぁあああ』『……クズしかいねぇ』――『何だあの生物。尻尾振ってるぞ?』 『めっちゃ可愛い』『モンスターなのか?』 『凶暴なのばっかじゃないんだな』『奥が深い』『次は女子大?』 『なぜ?』 『……成程。この動画を金稼ぎに使うなら、生存者を助けた方が好感度が上がる』『あーなる』  『お前頭いいな』『そこで女子大を選ぶカオナシさんは分かってる』   『さあJDを救いに行こう!』『おー』――『……おー……』   『すげぇ緑だな』『まぁ人が集まる場所は、必然的にモンスターも集まりやすいからな』『かと言って人探しの為に歩くなんて二人はしないだろうし』『大きな避難場所にいる人以外は彼等の施し受けれそうにないな』  『なむ』『南無』                    『ん?スピーカー?』――『ノエルちゃん頭いい子』   『才色兼備』『将来有望』   『焼肉定食』『見た感じ人いなそうだが』    『スピーカーめっちゃ囲まれてるw』『見せてくれカオナシさん!』 『あんたの力を俺達に!』『いっけーーー!』    『はぇえええええ!』『体感速度やべぇ!』     『一撃で蜥蜴吹っ飛んだぞ!』『やっぱこの人バケモンだ』『次どこ行くと思う?』     『方向からして帝大かと』『あー。日本一の学生だ
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122話

  パタパタ――と耳心地の良い律動が、並んで歩く二つのレインコートを叩く。 雫の重さで木の葉が頷き、大地に落ちては飛沫を上げる。 気怠気な空模様は昨夜と変わらず、降り続ける地雨は未だ止む気配を見せない。「ピッチャピッチャ」「チャップチャップ」「ラン、ラン、ルー」「……何か違くね?」 水溜りにジャンプする少女は、本日もカメラ片手に上機嫌。 天からの恵みを、余すことなく楽しんでいた。「もうすぐ?」「あぁ。……あれじゃね?」 煩わしい人間関係から解放された二人は、予定変わらず帝国大学に向けて進んでいた。 人がいるかいないかは関係ない。一応行ったという事実があればそれでいいのだ。 目の前に鎮座するのは、あの有名な赤門……ではなく、苔生し蔦生え木々に取り込まれた、緑門。 どうすればこうなるのか、年数を感じさせる風格は、宛ら異界の門である。「希望薄」「さっさと抜けちまうか」 植林地帯と化した校内に足を踏み入れる彼等は、生存者に期待せず、その先の目的地へ胸を高鳴らせるのだった。 ――スピーカーを回収し、跳ねる様に包囲網を突破する。 結論、生存者ゼロ。 緑に溢れかえる広大な敷地内、三か所に分けて試したが何れも反応なし。 二人は一番高い校舎によじ登り、屋上で休んでいた怪鳥を蹴り飛ばした。「大分騒いじまったからな」「わんさかわんさか」 眼下では、自分達の縄張りを荒らされ、怒りに震える有象無象が殺し合っている。 種族が違えば味方ではないのだろう。 そこに標的を見失った苛立ちが加わり、大乱闘が起きていた。 空から突撃してくるモンスターの嘴を掴み、叩き折る。「ん」「何だ、欲しいのか?」 両手を突き出すノエルに残骸を差し出すが、叩き落とされる。「違う。おんぶ」「……ガキかよお前」 あの時は最初だったから大事を取っておんぶしたのだ。 やり方が確立された今、甘やかす必要などない。「全力で身体強化すりゃ俺より早く走れんだろ」「強化苦手。ん」「……ったく」 中腰になる東条の背中に、バッタも斯くやな勢いで飛びつく。「ゴ―」「はいはいっ」 足部分を武装し飛び降りる東条に合わせ、ノエルが右手を振り上げる。 瞬間、地面が両側に抉れ、モンスターを巻き込み滑り落としていく。 後には一本のまっさらな道が出来上がった。「こりゃ
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