キキィィィィィッ! 豪快なブレーキ音と共に、黒塗りの自動車が盛大な砂埃を上げて急停止した。 帝都の中心部から遠く離れた、自然豊かな郊外の街・花ノ瀬。豊かな緑に囲まれた小高い丘の上に建つ、古いけれどどこか温かみのある大きな木造建築。そこが、緋依が育った孤児院だった。「とうちゃーく! 緋依、大丈夫?」 運転席から軽やかに降り立った白玖が、助手席のドアを開けて覗き込んでくる。 一方の緋依はといえば、座席に深く沈み込み、文字通り目を回していた。ジェットコースターのような暴走ドライブのせいで、足元はおぼつかなく、三半規管は完全に悲鳴を上げている。「……ただでさえ短い寿命が……あと半分くらいに縮んでしまうかと思いました……」 ふらふらと車から這い出た緋依を、白玖は悪びれる様子もなく笑って受け止めた。「あはは、無事に生きていてくれて良かった!」「わ、私が死んだら一番困るのは白玖様なんですから……も、もう少し大切に扱ってください……」「大切にしてるでしょ。我儘を聞いて、ここまで連れてきてあげたんだから」 白玖はそう言うと、ぐったりしている緋依の額に、チュッ、とごく自然にキスを落とした。 甘い感触に、緋依は一瞬で車酔いも吹き飛ぶほど顔を真っ赤にした。「っ! ちょ、ちょっと白玖様! こんな外で、誰かに見られたら……」「緋依!?」 緋依の慌てた声を遮るように、建物の入り口から甲高い声が響いた。 見れば、橙色の髪を可愛らしいおさげに結んだ少女が、目を丸くしてこちらを見つめている。緋依の二歳年下の親友、白梅小夜だった。 小夜はパタパタと駆け寄ってくると、緋依の身体を思いっきり抱きしめた。「緋依、緋依、緋依ーっ!」「小夜! 久しぶり、元気だった?」 緋依が生贄に選ばれて特務軍へ引き取られた時、彼女は一週間も泣き続けていたほど緋依のことを慕っていた。 小夜は嬉しそうに顔を上げたが、すぐにそばかすのある顔を曇らせた。「元気よ! ……って、緋依、顔色最悪よ!? 大丈夫!?」「えへへ……ちょっと、車酔いしちゃって……」 苦笑する緋依の後ろから、白玖がひょっこりと顔を出した。 色素の薄い美貌と、雪のように白い軍服。小夜はハッとして目を見開いた。「あ……も、もしかして、こちらの方が……?」「どーも。神様です」 白玖がニコッ
Last Updated : 2026-07-24 Read more