特務軍本部の重厚な扉を抜けると、帝都・白嶺は眩しいほどの一面の銀世界に包まれていた。 瓦屋根も、赤レンガの西洋建築も、ガス灯の笠も、すべてが真っ白な雪化粧を施されている。吐く息は真っ白に染まるが、緋依の心は弾んでいた。 二人は手を繋いだまま、雪を踏みしめるキュッ、キュッという心地よい音を響かせながら、近くの広々とした公園へと向かった。 公園にはすでに何人かの近所の子供たちが集まっており、元気な声を上げて雪合戦に興じていた。 緋依はわぁっと目を輝かせると、白玖の手を離して雪の中へしゃがみ込んだ。冷たい雪を両手で掬い上げ、きゅっと丸め始める。久しぶりに触れる雪の冷たい感触が、孤児院での温かい記憶を呼び起こし、緋依の顔に自然と笑みがこぼれた。「お姉ちゃん、雪だるま作ってるの?」 ふいに、横から可愛らしい声が聞こえた。 見上げると、茶色い柔らかな髪を持った小さな男の子が立っていた。年齢は六つか七つくらいだろうか。どんぐりのように丸い瞳で、緋依の素手を見つめている。「手袋がないと冷たいよ! はい! ぼくの貸してあげる!」 男の子はそう言うと、自分の手にはめていた小さな赤い手袋を外し、緋依に差し出してきた。 子供用のサイズだったが、毛糸で編まれていて伸縮性があるうえに、緋依自身の手も小さかったため、無理なくすっぽりと収まった。「わあ……ありがとう。でも、今度はあなたの手が冷たくはありませんか?」 緋依が心配そうに眉を下げると、男の子はえっへんと得意げに胸を張った。「ぼくは子供だから大丈夫!」 その背伸びをした可愛らしい優しさに感激し、緋依はふにゃりと愛おしそうに微笑んだ。 しかし、二人がすっかり打ち解けている様子を、後方から見ていた白玖は面白くなさそうに眉根を寄せていた。「……ちょいちょーい。君たち、僕のこと忘れてない?」 不満げな声とともに、長身の白玖が背後に影を落とす。見知らぬ青年の凄みに男の子が少しだけ肩をすくめたのを見て、緋依は慌てて間に入った。「ごめんなさい。私は緋依。こっちの機嫌が悪いお兄ちゃんは、白玖。あなたのお名前は?」「ぼく、弥太郎!」 白玖の白い軍服と、首に巻かれた青いマフラーを見上げながら、弥太郎は元気よく名乗った。そして、すぐに人懐っこい笑顔を浮かべる。「緋依お姉ちゃん、白玖お兄ちゃん! こっち
Last Updated : 2026-07-14 Read more