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Lahat ng Kabanata ng アンケート: Kabanata 71 - Kabanata 80

104 Kabanata

第71話  零域の残響

零域からの脱出は、まるで夢から覚めるように唐突だった。視界を覆っていた白い靄が裂け、気づけば美佳は藍都学園都市の一角、夜の校舎裏に立っていた。 だが胸の奥では、まだあの場所の冷たさが脈打っている。 「……彩音……」 彼女の名前を口にすると、零域で見た最後の光景が脳裏をよぎる。ホログラム越しに微笑んでいた七海彩音。その手から渡された、小さな金属製の“鍵”。掌の上でひやりと冷たいそれは、今もジャケットのポケットの中にあった。 背後で足音。反射的に振り返ると、そこには純の姿があった。LAPISの制服が街灯に照らされ、金色のラインが微かに光る。 「……無事だったか」 淡々とした声だが、わずかに安堵の色が混じっている。 「彩音が……私に鍵を渡したの」 言葉を選びながら、美佳はポケットから鍵を取り出した。純の視線がそれに注がれる。 「俺じゃなくて、お前に、か……」 そう呟く純の目は、驚きと何かの決意が交じっていた。 「この鍵、何なの?」 問いかけに純はすぐ答えず、少しだけ夜空を見上げた。 「説明はできる。でも……今じゃない」 その言い方はいつもの彼らしい慎重さだった。だが美佳は、零域で聞いたミオの声を思い出す。 ――“選べ、美佳。誰を信じるかで、未来は変わる” 耳の奥でその響きが甦り、胸が締め付けられる。 二人はそのまま旧校舎を離れ、LAPISの本部へ向かった。夜の学園都市は、どこか静かすぎる。街路樹の影が伸び、
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第72話  揺れる選択

夜の藍都学園都市は、不気味なほど静まり返っていた。 美佳と純は、零域からの帰還後、その足でLAPIS本部近くまで戻ってきていた。街灯が作る影が二人を細く切り裂くように伸びている。「……あの鍵、まだ持ってるか?」 純の低い声が、背後から追ってくる。 美佳は一瞬だけためらい、バッグの中に手を入れた。金属の冷たい感触が指先を走る。それは七海彩音から渡された、あの小さな鍵。 彼女の顔が頭に浮かぶ──あの日、わずかに笑ったあの表情と、なにかを決意していた瞳。「持ってる。でも、まだ何に使うのかはわからない」 そう答えながら、美佳は鍵を取り出す。街灯の光が反射し、夜の闇に小さな輝きが走った。 純はそれをじっと見つめ、わずかに眉をひそめる。「……これは、旧校舎のものじゃない」「え?」「似てるけど違う。たぶん、別の場所──もっと厄介な場所の扉を開ける鍵だ」 美佳の胸にざわりとした波紋が広がる。旧校舎の影を追ってきたはずが、その先にはさらに別の“何か”があるというのか。「彩音ちゃんは、純くんにじゃなく、私に鍵を渡した。理由は……」「お前にしか開けられないからだろ」 純の答えは即答だった。だが、その声には不安が混じっていた。 その時、街の向こうから突風が吹き抜けた。冷たい風が、二人の頬を刺す。ビルの谷間を通って響く低い唸り声のような風音に、美佳はぞくりとした。「……誰か、見てる」 背筋に冷たい感覚が走り、無意識に後ろを振り返る。しかし、そこには誰もいない。ただ、遠くの交差点に赤い信号が点滅しているだけだ。「行こう。ここは長居する場所じゃない」 純が美佳の肩を軽く押し、足を速める。 だがその瞬間、美佳のポケットの端末が震えた。画面を見
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第73話  赤い影

夜明け前の藍都学園都市は、濃い霧に包まれていた。 美佳は眠れぬままベッドを抜け出し、カーテンを少しだけ開ける。街灯が白い靄の中でぼんやりと滲み、ビルの輪郭すらかすんでいる。 ポケットに入れたままの鍵が、今も肌に冷たい。昨夜、あの“非通知”からの声を聞いて以来、その冷たさは妙に意識に引っかかっていた。「……鍵を手放すな、か」 小さく呟くと、背筋をなぞるような寒気が走った。 スマートデバイスの画面が突然点滅する。着信ではなく、通知もない。ただ、画面の中央に赤い点がぽつりと浮かび、ゆっくり脈打つように明滅していた。「……何これ?」 指で触れると、画面が切り替わり、知らない地図が表示される。地図の中心には赤い影のようなマーク──その下には、かすれた文字でこう表示されていた。『旧藍都病院 地下三階』 呼吸が浅くなる。旧藍都病院──今は廃墟になっているはずだ。数年前の火災で閉鎖され、立入禁止区域に指定されている。 あの場所に、何があるというのか。 不意に、背後から声がした。「……何を見てるんだ?」 驚いて振り返ると、純がドアの隙間から顔を覗かせていた。いつもより険しい目つきだ。 美佳はためらいながらも、画面を見せる。 純は数秒黙っていたが、やがて低い声で言った。「……やっぱり来たか」「やっぱり?」「この病院の座標は、LAPISでもマークされてた。だが、本部内じゃ誰も触れようとしない“封鎖案件”だ」 封鎖案件。つまり、公式には存在しないことになっている情報。 純の視線は、赤いマークから美佳の手の中の鍵へと移った。「……その鍵、多分そこに繋がってる」 美佳は息を呑む。昨夜の声も
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第74話  再会の予感

藍都学園都市の駅前ロータリーは、昼間でも薄い霧が漂っていた。美佳は純と並んで歩きながら、コートの襟を立てる。「……本当にここで待ち合わせで合ってるの?」「間違いない。あいつの言う“別ルート”ってやつだ」純が低く答えた直後、ロータリーの端に立つ男が片手を上げた。黒いジャケットに無精ひげ、以前より痩せたように見える。「東郷……翔?」「よぉ、美佳。それに純も。お前ら、相変わらず危ないところに首突っ込んでるな」彼は軽く笑いながら近づくと、美佳の肩越しに周囲を素早く確認した。「ここじゃ話せない。ついて来い」路地裏に入ると、冷たい風とともに、かすかにオゾンの匂いがした。翔は足を止め、懐から薄いデータカードを取り出す。「有栖川から預かった。お前らの“鍵”に関係する解析結果だ」美佳の手が無意識にポケットの中の銀色の鍵を握る。純も黙ってそれを見つめ、眉をひそめた。「玲が……?」「ああ。例の廃墟で拾った断片データ、彼女が解読した。だが半分以上、暗号化されたままだ。ユリって女なら、解けるかもしれん」宮下ユリ──同窓会で一度顔を合わせたきりだが、印象は鮮烈だった。美佳の脳裏に、あの時の視線と意味深な微笑みが蘇る。「ユリは今どこに?」「……旧藍都病院の地下だ」その一言に、空気が重くなった。旧藍都病院──LAPISの記録上は十年前に完全封鎖されたはずの場所。翔は続けた。「俺が案内できるのは入り口までだ。中は……お前ら自身で確かめろ」美佳は鍵を握る手に力を込めた。
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第75話  残された暗号

霧の中を歩くうちに、駅前の喧騒は遠ざかり、ビルの影が深くなる。翔に案内されたのは、裏通りにある小さなカフェだった。表の看板は消えていて、営業中には見えない。ドアを開けると、かすかなベルの音とともに、低いジャズが流れてきた。カウンター奥の席に、有栖川玲が座っていた。白いブラウスに黒のタイトスカート、髪を後ろでまとめ、鋭い視線をこちらに向ける。「来たわね、美佳。……そして純も」玲の声は、変わらず冷ややかで、それでいて妙な安心感を与える。美佳は席に着くなり、ポケットから銀色の鍵を取り出した。「これが彩音から託された“鍵”。あなたが解析してくれたというデータと、どう関係してるの?」玲は目を細め、翔からデータカードを受け取ると、携帯端末に差し込む。カフェの壁に備え付けられたスクリーンに、幾何学模様のような暗号データが映し出された。「この模様……」純が眉を寄せる。「知ってるのか?」美佳が問うと、純はゆっくり頷いた。「旧藍都病院の封鎖システムの一部だ。俺もLAPISで見たことがある」玲が説明を続ける。「半分までは解読したわ。残りは、この“鍵”を使わないと開けられない。つまり、美佳、あなたが持っているその鍵は……単なる物理的な鍵じゃないの」スクリーンに表示された模様の一部が光り、鍵の形とぴたりと重なる。「この鍵は、病院地下の制御装置と共鳴して暗号を解除する“媒体”なの。しかも、使用できるのは一度きり」美佳は息を呑んだ。一度きり──つまり、使えばその時点で何かが決定的に変わってしまう。「……そして、もう一人。宮下ユリがこの暗号のもう片方の“鍵”を持っているはずよ」玲は視
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第76話  もうひとつの鍵

藍都学園都市の外れ、旧市街地に残るアパート群。かつての華やかさを失った路地を抜けた先に、宮下ユリはいた。小さな喫茶店のテラス席で、ホットコーヒーを前に、何かを書き留めている。「ユリ……」美佳が声をかけると、ユリは顔を上げた。変わらぬ穏やかな笑み──だが、その瞳は以前よりも鋭く、何かを試すような光を宿していた。「久しぶり、美佳。それに純くんも」ユリは手帳を閉じ、二人に向かい合う席を指さした。翔と玲も少し離れた席に腰を下ろし、周囲の様子をさりげなく監視している。「彩音から、鍵を託されたのね?」ユリの口調は、まるで全てを知っているかのようだった。美佳は頷き、バッグの中の銀色の鍵をそっと触れる。「ユリ……あなたも、持ってるんですよね。もうひとつの鍵を」純が切り込むように言うと、ユリはゆっくりと微笑み、コートの内ポケットから小さなケースを取り出した。開くと、中には黒曜石のように黒く光る鍵──形は美佳のものとほぼ同じだが、刃先の模様が微妙に異なっている。「これが、もう一つの“解錠媒体”。二つ揃えなければ、旧藍都病院地下の封鎖は解けない」ユリは視線を真っ直ぐに美佳へ向けた。「でも──あなた、本当にそれを使う覚悟はある?」その問いに、美佳は言葉を失う。使えば何かが変わる。玲が言った通り、二度と元の自分には戻れない。「……どういう意味?」美佳が問うと、ユリは少し俯き、声を落とした。「地下に眠っているのは、ただのデータや装置じゃない。“記憶”なの」「記憶……?」「私たちが生きてきた時間の“裏側”に隠された、もう一つの藍都学園都市の歴史。そこには、この街で起きた本当の事件の
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第77話  潜入の夜

夜の藍都学園都市は、昼の喧騒が嘘のように静まり返っていた。 ネオンが輝く中心街から離れ、旧市街の奥へと向かうと、まるで時間が止まったような空気が漂っている。 その果てに、かつて廃院となった旧藍都病院が影を落としていた。 「ここが……」 美佳は言葉を飲み込む。 巨大な建物は長年の放置で外壁が黒ずみ、割れた窓から冷たい風が漏れていた。 廃墟というより、都市の“記憶”そのものが凝縮された墓標のように見えた。 「入口は正面じゃない。地下の非常口から入る」 純が低く告げる。 東郷翔が先行し、周囲を警戒しながら手信号を送った。 玲も無言で頷き、携帯端末を操作してセンサーを無効化していく。 「本当に……入るんだね」 ユリはバッグの中に黒い鍵をしまい、美佳の方を見た。 「二つの鍵を揃えた以上、もう後戻りはできない。ここで決めるの」 美佳は肩に力を入れ、銀色の鍵を取り出した。 手の中で光がわずかに震えた気がした。 「……わかってる。ここまで来て逃げたくない」 一行は非常口の前に立ち止まり、重たい扉を押し開けた。 錆びた蝶番が軋む音が闇に溶け、冷気が足元を這い上がってくる。 階段を降りるごとに、空気は湿り気を増し、耳鳴りのような低い音が響き始めた。 まるで建物そのものが呼吸をしているかのようだった。 「感じるか、美佳?」 純が囁く。 「……うん。誰かに呼ばれてるみた
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第78話  記憶の都市

藍都学園都市の片隅にある旧病院。廃墟の匂いは、湿った石と鉄錆の重たい気配を漂わせていた。 美佳は、胸ポケットに忍ばせた銀色の鍵をそっと握りしめた。七海彩音から託されたそれが、今ここで意味を持つ瞬間を待っている。 「こっちだ、階段が残ってる」 純が懐中電灯を掲げ、暗がりを切り裂くように進んでいく。玲と翔も後に続き、慎重に瓦礫を避けて歩いていた。 その時だった。 ──ブゥゥゥン……。 美佳のスマホが震えた。ディスプレイには「非通知」。背筋に冷たいものが走る。 「誰だ?」と純が振り向く。 美佳は小さく息を呑み、恐る恐る通話ボタンを押した。 『……やっとここまで来たのね、美佳さん』 若い女性の声。記憶の奥で弾かれたように、美佳は立ち止まる。 ──あの時だ。まだ何も知らなかった頃、突然かかってきた謎の電話。 「……あなたは……」 『忠告したのを覚えてる? “そのアンケートは選んではいけない”って』 冷たい声の奥に、切実な響きがあった。純や玲が怪訝そうに耳を傾ける。 『その“鍵”……大事にしてるわね。けれど、覚えておいて。あれは扉を開けるためだけのものじゃない。』 「扉……?」美佳は思わずつぶやく。 『もし使い方を間違えれば、藍都学園都市そのものが崩壊する。』 緊張が走る。玲の顔色がさっと変わり、翔が美佳に視線を送る。 「お前……誰なんだ」純が声を荒げた。 だが受話器の向こうの彼女は、静かに言葉を重ねた。 『橘誠二に気をつけて。彼は真実を隠すためなら、どんな手段でも使う。』
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第79話  橘誠二の影

静まり返った旧病院の廊下に、足音だけが反響する。 さっきの通話の余韻がまだ胸を締めつけ、美佳は深く息を吸った。 「橘誠二……聞いたことがあるのか?」玲が純に視線を向ける。 純は短く唸り、目を伏せた。 「名前は、知ってる。だが……ここで話すべきことじゃない」 その一言で、場の空気は一層張り詰める。玲は不満げに眉をひそめ、翔はただ無言で壁の落書きを見つめていた。 「純くん、知ってるなら教えてよ」美佳は堪えきれず問い詰める。 だが彼は首を横に振った。 「下手に口にすれば、俺たちの動きが読まれる。あいつは、そういう男だ」 「……やっぱり知ってるんだね」美佳の声はかすれた。 彩音の残した鍵を握る手に、汗がにじむ。 沈黙を破ったのは翔だった。 「“橘”って名は、藍都学園都市じゃ珍しくねぇ。だが、誠二……それは、都市設計局の中枢にいた技師の名前だ」 「都市設計局……?」美佳が繰り返す。 「この街を造った連中さ。藍都学苑も、LAPISの本部ビルも……全部、あの局が手掛けた。十数年前に事故で姿を消したって聞いてたが」 「消えた人間が、今さら何を?」玲の声には苛立ちが滲んでいた。 純はしばらく沈黙した後、低く告げた。 「……誠二は生きてる。俺は、直接会ったことがある」 全員の視線が純に集中する。 「いつ……どこで?」美佳が震える声で問う。 「三年前だ。LAPISの研修で。彼は“表の記録”では存在していないはずだった。けど──確かにそこにいた」 息を呑む音が重なった。
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第80話  蠢く都市の記憶

 「橘誠二……」 美佳は、その名前を頭の中で何度も繰り返していた。電話の“若い女性”が口にした、ただ一つの警告。その名前が、耳の奥にいつまでも残響のように響いて離れない。 純は不機嫌そうに眉をひそめ、声を低くした。 「……その名前、確かに記録で見たことがある。学園都市のインフラ設計に携わった技術者だ。だが、十年以上前に消息を絶ってるはずだ」 「消息を絶った?」玲が目を細める。「つまり、死んだことにされた……?」 翔が壁に背を預けながら、小さく笑った。 「死んだと“されている”。だが、本当にそうなのかはわからない。少なくとも、今このタイミングで名前が出てくる以上、奴は生きている可能性が高いだろうな」 美佳は胸の奥が冷たくなるのを感じた。橘誠二——それはただの人名ではなく、都市そのものに絡みついた“何か”を象徴している気がした。 「……でも、どうして“あの人”は私に警告を?」美佳は思わず声に出していた。 純が鋭い目で彼女を見やる。 「お前、前から何か隠してないか? 第3話で──いや、前に誰かから電話を受けたことがあるんだろ」 美佳は、胸が締めつけられるような感覚に襲われた。だが、もう隠すことはできなかった。 「……うん。実は……このアンケートを答えてすぐの頃、一度だけ電話があったの。その時も、若い女性の声だった。『絶対に最後まで答えないで』って。……でも、私は——」 声が震えた。彩音の死、鍵の受け渡し、そして自分が答えてしまった“アンケート”の重み。それらすべてが、一本の糸で繋がっている気がした。 沈黙を破ったのは玲だった。 「つまり、その女性は最初から美佳を見ていた。橘誠二に関わる何かを知っていて、あえて美佳に接触した。……これは偶然じゃない」 翔が唇を歪める。
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