音有小雪さん。 クラス委員長であり、優等生であり、とても美しい人であり、周りに人が自然に集まりいつの間にか輪を作ってしまう。そして、いつもその中心にいる、そんな人柄の持ち主だ。 と、いうのが僕の知り得る情報。情報が少なすぎるって? それはそう。当たり前のことだ。だって、僕は今まで遠目でしか様子を見ることしかできなかったから。女性恐怖症の人間にはこれが限界。 そんな女性恐怖症の僕が今、音有さんの眼前に立っている。彼女が向けてくれた向日葵のような温かな笑顔のおかげで、少しだけ緊張が解けていくのを感じる。 とはいえ、なんだかんだ怖さを覚えている。それは変わらず。まあ、こればかりは仕方がないか。(うーん、やっぱり無理か……) 本音を言うと、心野さんとお喋りできるようになったから女性恐怖症も少しはマシになっているんじゃないかと思っていた。期待していた。でもやっぱりダメか。そんな簡単に治るはずがないよなあ。 しかし何故、どうして音有さんが僕なんかに声をかけてきたのだろうか。クラス内で存在感皆無と言っても過言じゃないのに。「どうしたの、但木くん? なんか固まっちゃってるよ?」「あ、ああ、あの……え、えーとでござるな……」 ほらね、やっぱり。 全く声が出てこないし、思い切りキョドってしまう。 それにしてもさ……どうして僕は緊張すると武士みたいな口調になっちゃうんだよ! もしこのまま社会に出たらどうなるか。どんな職種に就くことになるのか分からないけど、恐らく、同僚だったり顧客だったり取引先だったりが女性だったら、僕はまたこんな口調になってしまうんだろう。『サラリーマン武士』の誕生なり! ……自分で言っておいてなんだけど、サラリーマン武士って何さ。 あー、自分のことが嫌になってきた。冷や汗がだらだら流れてきちゃったよ。情けないやら恥ずかしいやら。 だけど、音有さんは与えてくれた。反応。表情。言の葉。 そして、女性恐怖症克服への一筋の光明を。「うふふ、本当に武士みたいになっちゃうんだ。友野くんの言ってた通りだね」「と、友野、でござるか?」 僕のこんな様子を見たにも関わらず、音有さんはちょっと上品に口に手を当てて、おかしそうに笑ってくれた。今までずっと、僕のこの反応を見た多くの女子達は、ただただ気持ち悪がるだけだったのに。 しかし、それにしても、
最後更新 : 2026-07-09 閱讀更多