《心野さんのココロノさん 〜青春を取り戻したい少女が『世界』を創り出すまでのちょっと不思議なラブコメ〜》全部章節:第 31 章 - 第 33 章

33 章節

第31話 恋する乙女の最終決戦【2】

 パッツンさんから送られてきたであろうメッセージに記載されていた時刻は、日付がちょうど変わる午前0時だった。意味としては全く違うのに、何故だか『逢魔時』という単語が頭の中でチラついた。 指定された場所はこの前と同じ公園。 それにしても、こんな時刻に高校生である僕を呼び出すとは。人として大丈夫なのかと不安を感じざるを得ない。「全く。親にバレないように家を出てくるのだって大変なのに。パッツンさん、一体何を考えてるんだよ」 僕は歩を進めながら、愚痴を吐き出す。ハッキリ言って、このメッセージを無視することだってできた。だけれど、僕は行く。いや、行かなければならない。 確信しているからだ。 これは絶対に、心野さんと関係しているということ。そして、きっと彼女のためになるはずだということを。 それに、音有さんが言っていた。心野さんが『全てを元に戻したい』と話してくれたと。だったら僕も協力する。力になってやる。心野さんは何かしらの覚悟を決めたに違いないから。 そして、僕は到着した。この前とは違い、パッツンさんはすでにいて、ベンチに腰掛けて僕のことを待っていた。「あ! 良かったあ、ちゃんと来てくれた。待ってたよーん。私の大切な但木くふーん」 な、なんかこの前よりも馴れ馴れしさがパワーアップしている気が……。というか、リアルで『くふーん』とか使う人に会ったの初めてだよ。 それにしても、街灯に照らされてハッキリと見えるパッツンさん。本当に可愛いな。可愛すぎる。 でも、やっぱり不思議だ。 前回もそうだったけれど、ここまで可愛い女子を目の前にしたら、緊張して絶対に女性恐怖症が発動するはずなのに。それがないんだ。不思議を通り越して、もはや奇妙と言っていい。「すみません。時間通りには来たんですけど待たせちゃったみたいで」「いいのいいのー。私が勝手に早く来ただけだから。それにしても他人行儀だなあー但木くんは。もっとフレンドリーに接してくれていいのよん」「いえ、その……癖と言いますか。それにまだ、パッツンさんにお会いするのも二回目ですし。いきなりフレンドリーには……」「えー、なんでまだパッツンさんって呼ぶの? この前、帰り際に教えたじゃん。私の名前。心野雫だって。雫ちゃんって呼んでいいのよん」「……分かりました。じゃあ、『ココロノさん』って呼ばせてください」 
last update最後更新 : 2026-07-09
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最終話 恋する乙女の最終決戦【3】

「もういい加減にして!!!!」 まるで世界中に届くのではないかと、轟くのではないのかと。そう思える程に大きくて、彼女の全魂が込められた力強い声だった。 声の主は、僕が恋をした大好きで大切な人。 心野雫さんだ。「あらー。お久し振りー、ココちゃん」「やめてください。アナタにその名前を呼んでほしくはないです」 心野さんは歩み寄る。ココロノさんの所へ。 僕の勘は当たっていた。やはり心野さんはココロノさんのことを知っていた。事情も理由も分からないけど、それだけは確かだ。「どうして但木くんを狙ったんですか? 前みたいに手紙を書いて、直接私を呼びつければ良かったじゃないですか」「いやいやー。だってさあ。あの時ココちゃん、話してる途中なのに逃げちゃったじゃないの。だから今回も、呼んでも同じことになっちゃうんじゃないかなって思ってねー。でしょ? すぐに現実から逃げちゃう弱虫のココちゃーん?」「……私の呼び方を変えるつもりはないみたいですね」「いいじゃんいいじゃん、呼び方くらい。そういう細かいことばっかり気にしてるから成長しないんだって。少しは学ぼうねー」「成長していないことは認めます。だけど、呼び方くらいってなんですか? そのあだ名は私の大切な幼馴染が付けてくれた宝物のようものなんです」「へー、大切な人ねえ。でも、そんなに大切な幼馴染ちゃんのことを無視し続けてたのはどこの誰だったっけなー?」「……それも認めます。全部認めます。私の弱さも、情けなさも、弱虫なところも、全部。でも、私は変わります。絶対に変わってみせます。そう、決めましたから」 その言葉を聞いて、僕は口を挟みそうになったけど、やめた。『全部認める』とハッキリ言い切った心野さんは、何かしらの決意を持ってここに来て、そして言葉にしたんだ。邪魔はしたくない。 今の僕にできることは彼女を信じることくらいだ。「ふーん、そうなんだ。全部認める、ねえ。でも、こうして私がまた出てきてここにいるってことは、結局何も変わってないんじゃないのー?」「そ、それは……」「あ、一応言っておくけど、前だって最初にオトちゃんを呼んだんだよ? それを伝える前にココちゃん逃げちゃったから知らないと思うけどさー」「そ、そうだったんですか?」「うん、そう。でも、オトちゃんはただのイタズラメッセージだと思ったみたいで無
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エピローグ

 僕と心野さんは今、浴衣姿でお茶を飲んでくつろいでいる。畳の藺草の香りを心地よく感じながら。 一体どこにいるのかって? 今、僕達がいるのそこは熱海の旅館だ。 音有さんが僕に手渡してくれたチケットは、この旅館の宿泊チケットだったのだ。 高校生同士の場合、親の承諾書が必要なのでちょっと一悶着あったけれど、なんとか無事に許可をもらえて泊まることができた。「はあー。落ち着きますねえ」「そうだね。音有さんには、今度しっかりとお礼をしなきゃね」 あの夜の後、心野さんはバッサリと前髪を切ったことで髪型が不格好になってしまった。なので美容院に行ったそうだ。髪を切るのも美容院に行くのも数年振りだったらしく、えらく緊張したらしい。 だから今、僕の目の前に座る心野さんは前髪パッツンのボブカットになっている。うん、ほんとパッツンさんみたい。「あ、あのですね、但木くん。ここ、貸し切りの露天風呂があるみたいですよ?」「そうなんだ。まあ、僕達には関係ないけどね」「……そうですよね」 その間は何? しかも何故かシュンとしてるし。高校生同士で、しかもまだ付き合って数日しか経っていない僕達が一緒に入れるわけがないじゃないか。 でも、もしかして心野さん、貸し切りの露天風呂に僕と入りたいと思ってる? まあ、さすがにそれはないか。 という僕の考えは甘かった。 それからも心野さんは事あるごとに「貸し切り露天風呂があるいたいですよ?」と言ってきた。合計すると、十四回も。 そして豪華な夕食を堪能した後、まさにそれについての会話をすることに。「ね、ねえ但木くん。その……貸し切り露天風呂が」 はい、これで十五回目。「あの、心野さん? どうしてそこまでして僕に勧めてくるの?」「い、いえ、その……せっかくですし。それに、但木くんの裸……いいえ、なんでもありません……」 今、僕の『裸』って言わなかった? いや、あの夜を境に心野さんは積極的になったわけだけれど、なんというか……。「というわけで、貸し切り露天風呂があるみたいですよ?」 じゅ、十五回目ですか……。というわけでの意味もよく分からないし。 まあ、積極的になったのは良いことだ。でも、今回に限ってはベクトルが違う方向に向いてると思うんですけど。 そういえば、心野さんってムッツリスケベなんだった。うん、言い切ることができる
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