Lahat ng Kabanata ng ホームレスJCの大江戸繁盛記~現代知識を駆使して一攫千金を目指します!~: Kabanata 11 - Kabanata 20

33 Kabanata

第11話 博徒は踊るよどこまでも

「おお、坊や。よくがんばったねえ。ほら、初段の免状だ。持っていきなさい」「わぁい! ありがとう!」 私は白黒将棋の道場で生徒たちに免状を発行していた。広い板間のあちこちで老若男女が白黒将棋に興じている。道場は私が経営するもの以外でも何軒も現れた。いまや大江戸八百八町は白黒将棋ブームに沸いている。「す、すごい大流行ですね……」「色々と工夫をしたからねえ」 道場の盛況ぶりに目を丸くするコガネちゃんの言葉に、これまでの苦労の数々が蘇ってきた。最初は湯屋という湯屋に無料で駒とルールブックを配った。大した材料は使わないし、ルールブックも半紙一枚だ。支出自体は大したものではない。だが、それらを何日も何日も徹夜で作る生活はかなりきつかった。 ある程度普及したところで、今度は段位を制定し、道場を借りて指導を行う。十歳未満は無料。それ以上は指導料や免状の発行料を取る。初めは無料で通える子供ばかりだったが、そのうち子供有段者に負けた大人が通い始める。なにしろ負けん気の強い江戸っ子だ。子供に負けたままではいられないとムキになったのだ。「大場先生、大場先生、ちょっとよろしいでしょうか」「急用かね? それじゃコガネちゃん、ちょっと失礼するよ」 アシスタントとして雇った黒い着物の男を連れて別室へ移動する。この男には色々と生臭い仕事を任せているのだ。生徒やコガネちゃんのいる場所でうかつに話などできない。「大場先生、公式駒の在庫がなくなりそうです」「おおっと、そんなに売れ行き好調とは笑いが止まらないねえ。工場に増産指示を出しておきな」「材料の仕入れが間に合わないとかで……」「馬鹿だねえ。ちったぁ頭を使いな。質屋や蚤の市で、箪笥でも戸棚でも買い叩いてくるんだよ。そいつを叩っ壊して材料にしちまえばいい」「し、しかし公式駒は桧作りが売りだったのでは?」「どうせ白黒に塗っちまうんだ。誰にもわかりゃしないよぉ」 こんな具合で毎日が大忙しだ。まったく充実している。額に汗して労働に勤しむのは素晴らしいことだ。「ところで、裏大会の件は順調に進んでるかい?」「はい、ちょどいい廃寺が見つかりましたので、そこを押さえています」「博徒どもは?」「清水の次郎長、国定忠治、黒駒の勝蔵。名の売れた親分さん方には片っ端から案内を済ませました」(※)「でかした! こいつぁ一晩
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第12話 橋の下にてカッパを拾う

 ばっちゃばっちゃと水をかく。潜水で川底を這ってみる。背泳ぎをしてみる。クロールをしてみる。バタフライなども試してみる。「カナさーん、何してるんですかー?」「あー、ちょっと色々と実験をね」 世境橋の下で何往復も泳いでいると、川岸からコガネちゃんの声がした。まあ、何も知らなければ奇行にしか見えないだろう。季節はまだセミも鳴かない初夏。川遊びにはまだまだ早すぎる。 じゃあ何をしていたのかと言えば、川を遡ることで令和日本に戻れないのか試していたのだ。もちろん、帰りたくなったわけではない。もしも自由に往復ができるのなら、現代製品と江戸製品の往復取引でがっぽり儲けられると考えたのだ。 しかし、そんな簡単にはいかないらしい。川の水位が下がってたからやってみたのだが、身体も冷えてきたし、そろそろやめにしよう。「って、何か変なのが浮いてる?」 白い餅みたいなものがぷかぷかと流れてきた。金目のものかもしれないので、とりあえず拾ってから川岸に上がる。「何を拾ったんですか?」「何だろうね? 高く売れるといいんだけど」「わからずに拾ってたんですか……」 一切の躊躇なく正体不明の物体を拾った私に、コガネちゃんが引いている。仕方がないじゃないか、拾い物とは一期一会なのだ。拾わずにスルーした物がもしもお宝だったと想像したら、後悔で夜も眠れなくなってしまう。 物体の大きさは一抱えくらいで、鏡餅のような形をしている。ふよふよと柔らかく、小さな黒い点がふたつ。その下には横線が一本。短い手足が生えており……って、これ生き物か?「ケロッ……ケロッ……」 あ、鳴いた。生き物だ。「よく見たら頭にちっちゃいお皿もありますね。カッパの一種でしょうか?」 ほう、コガネちゃんでも知らない生き物……いや、あやかしなのか。ゆるキャラ的なかわいらしさもあり、コガネちゃんが撫でている。ということは――「高く売れるかな?」「ケロッ!?」「かわいそうですよ!? 元いた場所に帰してあげましょうよ」 コガネちゃんに説得され、とりあえず寄せ場の姐御のところに行くことにした。 * * *「あら、これは珍しいねえ。アメフクラカッパだよ、これは」「高く売れるかな?」「カッパの売買は御定法で禁じられてるねえ。売れないよ」「ええー、残念」「まだ売るつもりだった
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第13話 カナコの水泳教室

「――というわけじゃ。わ、わかったら後ろの女子を止めてくれんか?」「えっ、カナさん、何してるんですか!?」 流木フレイルをカンフーアクションスターばりに振り回していたら、コガネちゃんが振り返って目を丸くした。ずっとコガネちゃんの背後を取りながらブンブンやっていたので気が付かなかったらしい。一応、話はついたみたいなので素直にやめる。「で、結局なんでこんなダムを作ったんだって?」「それが、ここで泳ぎの練習をしているんだそうです」「なんでまたそんなことを――」「ガッハッハ! アメタロウ、まだそんな無駄なことをしちょったんか」「けろっ! その声はヒョウベエ!」 コガネちゃんから話を聞こうとしたら、また別の声がした。声の方を見てみると、緑色の人間が立っている。頭には大きなお皿、口はくちばしになっていて、ザ・カッパという姿の怪人である。「こんなところで泳いじょっても、貴様らの短足ではどうにもならんちゃよ」「ぐぬぬぬ……勝負はやってみるまでわからんじゃろ!」「おーい、まだ話がわからないんだけど、置いてけぼりで話進めないでくれるかな? こっちも仕事で来てるんで」 大白餅とザ・カッパが言い合いを始めたので割って入る。こちとら忙しい身なのだ。他人……それもあやかしの口喧嘩に付き合っている暇などない。「なんじゃい、この人間は。ハハァン、アメタロウ、お前勝負に勝てんちゅう思って、いよいよ人間にまで頼りよっちゃか。やはり河童族の風上にも置けんやっちゃのう」「違うわいっ! こいつらは勝手に来ただけじゃ!」「へいへい、だからさあ、こっちを放って話を進めないでくれる?」「「ひいっ!?」」 二匹の足元に石を投げつけると、揃って短い悲鳴を上げた。うむ、会話が成立しない相手にはやはり武力行使に限るな。「ええっと、カナさん。なんでもこのアメタロウさんと、ヒョウベエさんとで泳ぎ比べをするそうなんです」「ああ、それで練習用にこんなダムを作ったと。迷惑だなあ」「なぁにが迷惑じゃ! 川はもともとおらたち河童の領分じゃ。人間にどうこう指図される謂れはないわい」「ほーん。それなら別にいまは見逃してやってもいいけど。河童退治もセットになれば報酬も上がるだろうし」「げろっ!? 退治って何の話じゃ!?」「まままま待て!? わしは関係ないからの!」「関係ないで済ん
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第14話 カッパレース

「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 世にも珍しいカッパの競争だい! なぁに、見料はいただかねえ。しかし、あんたらも江戸っ子だ。ただただタダ見じゃつまらねえ。さぁさこいつを買っとくれ! キュウリかモチか。キュウリかモチか、さあ買った買ったぁ!」 見事な日本晴れである。青空にぽんぽんと花火の煙が上がり、その下には無数の屋台が立ち並び、騒ぎを聞きつけた物見高い見物人が集まってくる。世境橋のたもとは火除け地(※)になっており、もともと屋台や出店が多いのだ。人が増えれば屋台も増える。屋台が増えれば見物人もまた増える。そして私は見物人に賭け札を売る。「おう、嬢ちゃん。そのキュウリだのモチだのってのは何なんだい?」「みなまで言わさないでくださいよ。あそこに並ぶ緑の河童と白の河童。それが今から競争をするってんだ。緑はキュウリみてえだなあ。白はモチみてえだなあ。ってんで、こんな絵札を作ってみたってわけよ。きっと勝負のあとは、勝った方の絵札は縁起物だぁなんつって、倍ぐらいで売れるんじゃないかい? ほら、あそこにさっそく……いやあ、目ざといことだねえ」 指差す先には、『勝ち札買います』という幟を掲げた屋台がある。もちろん、私の仕込みだ。店主役は寄せ場で雇った冒険人足である。「なるほど上手いことを考えやがる。じゃあキュウリの方を1枚頼むぜ」「へい、毎度ありっ! ちょうど百文になりやす」 要するに、パチンコ屋の三店方式である。 江戸時代でもギャンブルは違法行為だ。個人間のちょっとした賭け事なんかは見逃されているが、大っぴらに賭場を開けば即お縄である。私はそれを身をもって学んだ。そこで、『勝者の絵札は縁起物になる』という名目で、勝負後に2倍の価格で買い取る業者が他にいるという体裁を整えたのだ。 私は絵札を売っただけ、屋台は絵札を買っただけ。これならば何の罪にも問いようがあるまい。くどくど説明すれば危ないかもしれないが、そのあたりはお上の数々の規制の目をかいくぐっては新しい娯楽を楽しんできた江戸っ子だ。先ほどの説明でじゅうぶんに察してくれる。「ぎひっ、ぎひっ、ぎひっ、やっぱりギャンブルはシンプルなのが盛り上がるねえ」  しかし、いまのところ売上はそこそこといったところである。記念程度に1枚だけ買うものばかりで、大きく張るものはいない。まあ河童の水泳
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第15話 亀の恩返し

 風に混じるわずかな潮の香り。青空にはぴーひょろろとトンビが円を描いている。広い通りを着飾った女や洒落た服装の町人が所狭しと行き来していた。派手な着物で肩で風を切って歩く侍は旗本奴というやつだろうか。「あ、カナさん、あっちに見世物小屋があるそうですよ」「へえ、ちょっと覗いてみようか」 品川宿である。カッパレースで小銭を稼いだはいいが、世境の辺りにいると、「金返せ!」と迫ってくる者がたびたび現れる。なので、ほとぼりが冷めるまで雲隠れすることにしたのだ。といっても、せいぜい一週間くらいの予定である。宵越しの金を持たない江戸っ子は、記憶力の方もおぼつかない。身を持ち崩すほどの大負けをした者もいないし、それで頭も冷えるだろう。 品川宿は、江戸一帯でも有数の歓楽街なんだそうだ。ぶつからずに歩くのが難しいほどに人通りがある。人混みをかき分けて進むコガネちゃんのふさふさした尻尾を追いかけていると、板塀で囲まれた場所についた。木戸銭を支払って中に入ると、むわっとした獣臭さに襲われる。「へー、江戸時代に動物園なんてあったんだ。あっ、孔雀だ」「わあ、七色で綺麗ですね!」 まず出迎えてくれたのは極彩色の尾羽根が美しい孔雀だ。竹でできた檻に入れられており、その周りでは縁台に座った若い男女が酒を片手に雑談に花を咲かせている。「わっ、ラクダもいるよ」「背中にコブがあるなんて、不思議な生き物ですねえ」 ボリボリと大根を食むヒトコブラクダを、コガネちゃんが物珍しそうに見ている。私的にはケモ耳にしっぽ付きのコガネちゃんもじゅうぶん不思議生物なのだが、それは今更言いっこなしだろう。私に至っては二百年後の未来からやってきた異世界人だ。珍獣具合ではある意味群を抜いているかもしれない。 他にも「ラッシャイ! ラッシャイ!」と鳴くカラフルなインコやら、小銭を放ると拍手をするオットセイ、お次は虎……という看板は出ているが、あの斑模様はどう考えてもヒョウだよなあ。まあ、見物人は本物の虎なんて見たことないだろうし、そのへんは客受け優先で適当なのだろう。これが江戸っ子精神である。今後も見習っていこう。 そんな感じで眺めていたら、ひとつの立て札が目に入った。「ほう、『珍しい生き物、買います』か。カッパは売れるかなあ?」「ダメですよ!?」
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第16話 乙姫に新規事業のプレゼンをするタイプのJC

 大ウミガメに乗り込んだ私たちは、海中を進んでいた。半球の内部は広く、一度に百人が乗り込んでも余裕だろう。壁も天井も透けており、海中の様子がよく見える。海面から降り注ぐ陽光を反射して、イワシの群れが鱗を輝かせている。それを追いかけているのはマグロかな? おいしそうだなあと思わずよだれが垂れてしまう。「ほら、絶景でしょ! こんなのは人間には見られないですよね!?」「そうだねえ。見世物小屋より満足感はあるよ。あれが三十二文だったから、これなら六十四文くらいの価値はあるかな」「た、助かった……」「でもなあ、しゃべるウミガメを売れば一両や二両にはなったかもなあ」「助かってなかった!?」 ウミガメ(小)が何やらアピールしてくるが、この程度で借りを返したと思われちゃあたまらない。こちとら命の恩人なのだ。それに見合ったお礼をもらわなければ嘘ってもんだ。「カナさん、見てください! 海底にあんな立派なお城がありますよ!」「おおー、高そうなお城だねえ」 高そう、といったのは物理的な高さの話ではない。いや、それも実際高いのだが、それ以上にお値段が高そうだ。宝石珊瑚を削り出したような真っ赤な瓦。この時代では珍しい透き通ったガラス窓に、あちらこちらで瞬くネオンサインと電光掲示板……え、何アレ? オーパーツ的な何か? 私達を乗せた巨亀がずもももも……と着底する。海底がごごごごご……と左右に割れ、巨亀がそれに飲み込まれる。天井が閉まり、排水。巨亀から降りた私たちは、動く歩道に乗って城の中を進み――って、いきなりSFかよ!「わあ、廊下が動いてますね。一体どうなってるんですかね?」「それは下を見てもらえればわかりますよ」 ウミガメの言うことに従って下を見てみる。可動部以外は半透明になっていて、床の下が透けて見えていた。そこには、無数の魚が群れをなして泳いでいる様子が見えた。「ああやって魚たちが生み出す流れの力を使って、動かしているわけです」「なんだよ、SFかと思ったらアナログじゃん。んじゃ、外のネオンサイン……ぴかぴかはどうしてたの?」「あれは夜光虫とホタルイカが交代でやってますね」 どこまでもアナログだった。まあ、ここに来て超科学海中文明とか持ち出されても対応に困るから安心したと言えば安心したと言える。「しかし、よくそんなことできるね。なんか習性とか利用してん
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第17話 黒船来航

「ぎひーぎひぎひぎひ! これは笑いが止まらないねえ!」 乙姫との提携によって実現した海中遊覧船『ビッグタートル号』は、就航以来、順調に収益を積み上げている。江戸っ子はもともと舟遊びが好きだ。屋形船に乗って花火やお酒を楽しむのが粋として定着している。それの海中版なのだから、流行らないわけがないのである。「えー、左手に見えますのがイルカの群れですね。超音波? を発して小魚や海老などを獲っているそうです」「いやー、狐の巫女さんは詳しいねえ」「ちょーおんぱって何だ?」「私には聞こえるんですけど、普通の方には聞こえないすっごく高い音ですね」「ほうほう、お狐様は耳もいいんだなあ」 添乗員にはコガネちゃんを任命した。台本はこちらで用意したが、最近はアドリブもきかせられるようになっている。海中とは誰からしても物珍しいものだが、ただすごい、ただきれいというだけでは今ひとつ感動が伝わりきらないものだ。しっかり解説役をつけてあげることで、ぼんやりとした感動をやっと言語化できるものなのである。 そんなこんなで忙しい毎日を過ごしているときのことだった……。 ――どぉぉぉおおおん! どぉぉぉおおおん! 沖合から爆音が轟いてきた。一体何があったというのか。私は小型潜水ウミガメに乗り込み、海上に上がる。そこにあったのは、クジラよりも真っ黒で、クジラよりも巨大な、ぽっぽっと白い煙を吐く漆黒の戦艦だった。「オーホホホホホ! 合衆国から参りました! 太平洋開拓艦隊提督、ペルリでございますわ! さあ、未開の蛮国よ! 開国するのデース!!」 無数の大砲が白煙を上げるその艦上で、金髪縦ロールの女の子が何やら騒いでいる。困るなあ……こちらがクルーズ営業中だと言うのに大砲をぶち込まれてはたまらない。とりあえず、石を投げつけておく。投げた小石は見事な放物線を描き、金髪縦ロールの額に命中した。「アイッター!? なんデスの!?」「なんですのってこっちのセリフなんだよねえ。ちょっと、他人様の縄張りにずかずか上がり込んで大砲ぶっ放すとか、何考えてんの?」 デイバックから取り出した鉤縄で甲板に登った私は、金髪縦ロールに詰め寄る。こちとら営業妨害されているんだ。開国するのデースじゃないんだよこのバカチンが。「きぃぃぃい! 太平洋はわたくしたちのテリトリーなのデース! あなたこそ突
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第18話 破廉恥はいけませんデスの!

「オー! ジャパンの蛮族は生魚に黒い紙を食べるのデスか!?」「いいから黙って食え」 ペルリの口にねぎとろの巻物を突っ込んでおく。ちなみにねぎとろとは「ネギとトロ」を混ぜた食べ物ではない。マグロの肋骨から身をねぎ取ったものだからねぎとろなのだ。トロなんて臭くて食えないというのが江戸っ子の常識であったが、一文寿司の流行でトロもすっかり寿司ネタとして定着している。 お上の方針でシモフリウサギの飼育はご禁制となったが、「たまたま懐かれてしまった」という名目でシモフリウサギを飼う寿司屋や漁師は増えているらしい。くそっ、特許法さえ整備されていればいまごろは左うちわだったのに!「むぐむぐ……ワオ! これはデリーシャスですの!」 黒船のジャックに成功し陸に戻ってきた私は、ペルリを連れて世境の町を歩いていた。艦内ではひたすら硬いパンばかり食べていたのでとりあえず米が食いたいと寿司の屋台にやってきたのだが、さっそくこの反応である。まったく、一昔前の外国人タレントか貴様は……と思ったが、考えてみたら一昔どころじゃなく200年前の外国人だったな、こいつは。「ペルリさん、このお稲荷さんも美味しいですよ」「オウ! 布袋ごとライスを食べるのデスか!? さすがは極東の蛮族デスね!」 コガネちゃんが勧める稲荷寿司にペルリが眉にしわを寄せる。それは布ではなく油揚げだ。あまり食いもんをバカにすると日本人はキレるから気をつけろよ。「いいから黙って食え」「むぐむぐ……ワオ! 甘じょっぱくてデリーシャスですの!」 鎖国政策を敷くこの日本に黒船を普通に停泊させることなどできない。とりあえずウミガメ号で密入国させたわけだが、こんな調子じゃ目立って仕方がない――と心配したのだが、予想以上に溶け込んでいた。服は着物に着替えさせたし、金髪が目立つかと思えばコガネちゃんも金髪だった。縦ロールが多少目を引くぐらいである。 江戸は元々日本全国からの出稼ぎに来た者や、参勤交代の武士、他にも旅芸人やら山伏やら渡世人やらそういう胡乱な人間でごった煮になっているのだ。いまさら髪型が変わっている程度のことを気にする人間など存在しない。「それで、アメリカさんは何がしたいんだっけ?」「ステイツは綿花や綿布、農産物の輸出を望んでマスの。そしてチャイナや東南
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第19話 江戸幕府は開国しました

 結論から言おう。開国は成った。 日本からは大量の春画が輸出され、アメリカからは綿布、小麦などが輸入されている。幕府はそれらに多額の関税をかけ、国内産業が壊滅することを防いだようだ。傾きかけていた幕府財政の再建にも役立っているらしい。 アメリカ向けに開港されたのは浦賀と長崎の2港のみ。江戸からはちぃと遠いので、個人的にはもっと近場で開港して欲しかったのだがまあ高望みをしても仕方があるまい。「なんだか不思議な絵柄のものが多いですね」「未来ではこういうのが流行るからね。ひとまずはテストマーケティングってところよ」「はあ、未来ですか……」 コガネちゃんが不思議そうに見ているのは、令和日本で人気だったアニメキャラクターたちの絵だ。サムライ、ニンジャ、尻尾の生えた戦闘民族、麦わら帽子を被った海賊に、胸にSマークをつけたアメコミ風のマッチョなどもいる。「カナさんって絵も描けたんですね」「ほとんどトレースだけどね。こういうのを石に描くと高く売れることもあったからさ」 原画担当は私だ。キャラクターとストーリーの素案を蔦屋に渡し、それを職人や戯作者たちに仕上げてもらっている。元ネタは無数にあるから簡単なものだ。すべて世界的な大ヒット漫画だから、どれかは人気になることだろう。職人たちも新しいモチーフが提供されたことに喜んでいるそうだ。「というわけで、水兵の諸君にはどのキャラクターが好きなのかを教えてほしい」「ワウ! 楽しみにしてたYO!」「サムライ、ニンジャ、ゲイシャ!」 試し刷りした大量の浮世絵を黒船に持ち込み、水兵どもに見せる。カラーコピーなど存在もしない時代だ。多色刷りの浮世絵は彼らにとって珍しいらしく、新作を見せるとみんな大喜びする。「俺はこのニンジャガールが好きだYO!」「俺はこっちのサムライガールを推すゼ!」「なんで女の子がセーラー服を着てるんだ? だが……それがイイ!」 水兵どもの好みは単純で、肌色成分の高い美女・美少女のイラストが人気だ。ストーリーに関しては添え物程度だが、英訳したものよりも日本語そのままの方が人気だ。どうも漢字のデザインが刺さっているようなので、ついでにロゴ入りTシャツも販売している。アメリカ産の綿布は真っ白で何も柄がついていないから、これに染色して販売できるなら加工貿易も成り立つだろう。「イエース! ジャパニーズ漢字、
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第20話 ポケニンは資本主義のゲームである

「ミーの手番! <第六天魔王・織田信長>を攻撃表示で召喚! 特殊能力<三段撃ち>を発動! 相手盤面の騎馬武者を一掃すル!」「ぐああああ!? おいらの武田騎馬軍団が……」「粉砕! 玉砕! 大☆喝☆采! フハハハハ! 強いゾー! かっこいいゾー!」 湯屋の二階。開国によって外国人も闊歩するようになった江戸では、こんな光景がそこかしこで繰り広げられようになった。私が開発した『ポケットニンジャマスターズ(略称:ポケニン)』は江戸でもアメリカでも大流行中だ。日本とアメリカ、交わることのなかった2つの国の人々が、ポケニンを通じて友情を深め合っているのである。仲良きことは美しきかな。「くそう、おいらだって金札があれば……。てめえ、どんだけ買い込みやがったんだ?」「くくく……パック買いなど貧乏人のやることデース。必要なレアカードは単品で買うものなんだYO! ちなみにこの<第六天魔王織田信長>は二百両もしましタ」「にっ、二百両!?」 そして思惑通りレアカードの価値は高騰を続けている。レアリティに応じて金箔押しなどで装飾を強め、ひと目でレアだとわかるよう工夫をしたことも効果的だったのだろう。それらは金札、銀札と呼ばれ、これを持っていないものはポケニン界隈では最下層の底辺である。 だが、それは通常の手段ではなかなか手に入らない。たとえば先ほどの<第六天魔王織田信長>の公式排出率は0.02%。通常パックでは5千枚購入して1枚入っているかどうか……という絶望的な数字である。「あらあら、お兄さん、あんた金札も銀札も持っていないのかい?」「なんでえ、何が悪りぃんだ! 普通の絵札だけでも勝負には勝てらい!」「ぎひーぎひぎひぎひ! 強がりもそこまでいくと滑稽だねえ。あんた、さっき負けたばかりじゃないか」「ぐ、ぐうう……」 ポケニンは資本主義のゲームである。一定のレベルに達するためには一定の投資が必須なのだ。そのルールのわからない貧乏人どもがコモンカードだけで勝てるなどという幻想にしがみついているのだから救いようがない。「それであんた、勝ちたいんだろう?」「そ、そりゃ勝ちてえよう……」 私は満面の笑みを浮かべ、男に告げる。 ――力が欲しいか?「ひぃっ!? あ、悪魔!?」 男は尻餅をついて後退りする。私の天使の微笑みを悪魔などと……無礼なやつだ。まあ、ひとまずそれ
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