Lahat ng Kabanata ng ホームレスJCの大江戸繁盛記~現代知識を駆使して一攫千金を目指します!~: Kabanata 21 - Kabanata 30

33 Kabanata

第21話 木戸番ホットフード

「腹が……減った……」 冬である。せんべい布団の隙間から冷たい空気が入ってくる。横ではコガネちゃんが自前のふさふさ尻尾を抱きながらすやすやと寝息を立てていた。セルフ暖房付きとはケモミミ巫女とは完成度の高い生命体だ。 寒い上に空きっ腹となるとおちおち眠ってもいられない。行灯から油を取って鍋に塗りつける。小麦粉を取り出して適当に水で伸ばす。そして醤油を垂らして適当に味をつける。開国のおかげで小麦はすっかり安くなった。最近では蕎麦だけでなく、うどんの屋台も出るほどだ。 熱した鍋に水溶き小麦粉を垂らすと、じゅうじゅうぶくぶくと香ばしい匂いを発する。それを菜箸でこそぎ取りながら食べる。超簡単もんじゃ焼きである。しかしこれは――「まずい」 出汁も何も入っていない代物だ。小麦粉と醤油の味しかしない。そして魚油の香りが生臭い。おまけに具材もないものだから腹にもたまらない。余計に腹が空いてきてしまった。 遠くでコーンと拍子木の音がする。誰かが木戸を通ったのだろう。江戸の町は案外夜が早く、夜四つ(午後10時頃)になると町ごとに区切られた木戸が閉じられてしまう。別に通行不能になるわけでなく、木戸番という住み込みの係員に許可を得れば通れるのだが、江戸時代の人というのは随分と面倒くさい仕組みを作り出したものだ。「ちょっと行ってくるか……」 しかし、木戸番があるのも悪いことばかりではない。長屋の引き戸をすっと開けて、夜の町に出る。吹き付ける風が冷たい。首をすくめて小走りで駆け出す。乾いた風が身にしみる。通りの先に、木戸に掲げられた赤提灯が見えてきた。「こーんばーんわー」「おう、人足長屋の嬢ちゃんか。今日は何の用事でい?」「焼き芋、ふたつ頂戴」「あいよ。ふたつで八文だ」 木戸番のおっちゃんから蒸したサツマイモをふたつ受け取る。夜四つを過ぎると飲食店で火を使うことは禁止されているが、木戸番だけは例外である。江戸の夜は冷え込むから、火を使わずに毎晩見張りをしろというのも酷な話だと思われたのだろう。江戸時代の労務環境は思ったよりもホワイトである。 そして、深夜でも火を使えるという特権を活かし、こういう温かい食べ物を売っているというわけだ。令和日本で言うならばコンビニのホットスナックと言うところだろう。肉まん、あんまん、おでんに唐揚げ。それらはもはや日本人のソウルフードと化
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第22話 お肉を作りましょう

 深夜。一人の若い男が通りを歩いている。懐手に白い息を吐きながらの千鳥足。しこたま酒を飲んできた帰りなのだろう。「うーい、木戸番さん。通しておくんな」「あいよー」 木戸番小屋から笑顔もまばゆい美少女が姿を表す。私だ。「ついでに焼き芋でも買ってくかなあ」「それならお兄さん、とっておきの新製品がありやすぜ」 蒸篭を開けると、湯気がむわっと立ち上る。サツマイモの隣に並んでいるのは白いまんじゅうだ。「塩まんじゅうか何かかい?」「いえいえ、もっと面白いもんですよ。名付けてトリまんじゅう。お肉たっぷりで身体が温まりやすぜ」「じゃあそいつをひとつくんな」「へい、十六文で」「げっ、いい値段しやがるな」 寿司が一貫四文から、蕎麦が一杯十六文で食べられるのがこの江戸の町だ。肉まんひとつで十六文は令和日本の感覚ではかなり攻めた価格設定だ。「何しろお肉をたっぷり使ってるんでねえ。この値段でもかなりがんばってるんですぜ」「まあ、薬食いなら小鍋でも五十文からだしな。それと比べりゃ安いもんか」「そうそう、そういうこってすよ」 が、そもそも肉が高いのだ。肉料理の中で考えれば破格と言える。そして深夜に木戸を通るものは酔っ払った男が多い。金銭感覚はバグっているし、焼き芋よりも食いでのある肉の方が好まれるだろう。「あつつっ、こりゃ熱々だねえ」「ふたつに割って冷ましながら召し上がってくだせえ」「おお! すげえ、本当に肉がぎっちりじゃねえか!」 ふたつに割られたまんじゅうの中から、茶色の具材が姿を表す。醤油、味噌、肉、にんにくなどの香辛料がまざった香りがあたりに漂う。「はふっはふっ、こりゃあうめえ! おい、お嬢ちゃん。もうひとつくんな!」「へい! 毎度ありっ!」「しかし、こんなにどっさり肉を使ったんじゃ儲けなんて出ねえんじゃねえか?」「ご心配ありがとうございやす。なんとかかんとか、工夫をしながらやらせていただいておりやして」「若けぇのに大したもんだねえ」 男はトリまんを片手に、上機嫌で木戸を通り抜けていく。 くくく、これならもう少し踏み込んで、二十四文……いや、三十二文くらいで売ってもいいかもしれない。工夫のおかげで原価は抑えられているし、これはビッグビジネスの予感がするぜ……! * * *「カナさん、何してるんですか?」 
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第23話 トリまんじゅうの罠

 満を持しての新商品、トリまんじゅうは江戸を席巻した。 あらゆる木戸番小屋で取り扱われるようになり、一日の出荷数は万に迫る勢いである。製造が間に合わず、泣く泣く新規受注を断ることもある有様だ。とあるボトルネックが存在するため、増産ペースが思うように伸ばせていないのだ。「カナコ様、また偽物が販売されておりました」「ちっ、またか。寄越してみろ」 秘書の黒服が持ってきたトリまんもどきをふたつに割って中身を見る。本家トリまんと比べると半分以下とさびしい量だ。肉をつまんで味見してみる。うむ、これは本物の鶏肉を使っているな。くくく、こちらが仕掛けた罠に見事に引っかかってくれたようだ。 罠とは、『トリまんじゅう』という名称そのものだ。食感が鶏肉に似ていることを一言で示すプロモーションの意味合いもあるが、それ以上に重要なのがコピー商品の防止である。現代においても料理のレシピには著作権が存在せず、特許の取得も難しかったが、いわんや江戸時代である。売れそうなものはガンガンパクられるし、勝手に元祖を名乗りだすやつまでいる。大江戸経済はまさしく生き馬の目を抜く厳しい社会なのだ。 というわけで、トリまんじゅうと命名することにより、具材には鶏肉を使っているはずだとミスリードを誘ったわけだ。事実、いまのところコピー商品のすべては鶏やうずらの肉を使っている。それらはマグロの何倍もする高級食材だ。こちらと同等のボリュームを実現しようとすれば、ひとつ五十文で売っても赤字になるだろう。 この圧倒的コスト優位こそが、トリまんビジネスのコアコンピタンスなのである。「それからカナコ様、餡がまた不足しそうだと工場から連絡が」「くっ、作っても作っても足りやしねえ……。いまから作業に入る。調理小屋には誰も近づけるなよ!」「はっ、かしこまりました!」 そして、その優位性は肉餡の製法がバレた途端に灰燼と帰す。徹底的な機密保持を図らなければならない。情報漏洩とはいつの世だって人間から発生するものだ。従業員が個人情報や技術情報を持ち出したニュースなど、耳にタコができるほど聞いている。 では、それをどうやって防ぐのか? 答えは簡単である。 餡専用の調理小屋に入った私は、ひとりで竈門に火を付け、ひとりでマグロをさばき、油のたぎった大釜にそれを入れ、それからひとりで大豆を
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第24話 山田浅右衛門菖久

 今日も今日とてマシラオニ退治の帰りである。コガネちゃんと一緒に街道筋を歩いていると、行く手に何やら人混みを見つけた。なんだろう、見世物かお祭りでもやってるんだろうか。人の集まるところに商機あり。とりあえず覗いてみよう。「あ、カナさん。あまり趣味の良いものじゃないですよ……」 コガネちゃんは眉をひそめて動かない。一体何があるんだろう。私ひとりになってしまったが、「ちょいとごめんよ」と人混みをかき分ける。なんとか先頭までたどり着くと竹垣があった。その向こうには後ろ手に縛られ、目隠しをされた罪人が首をうなだれている。「あー、なるほど。公開処刑ってわけか」 首切り役の侍が腰の刀を抜き、刀身に柄杓の水を受ける。刀を振って水を切り、頭上に構えた。大勢集まった見物人の喉から、ごくりとつばを飲む音がする。「確かにこりゃあ趣味のいいもんじゃないね」 首切り役人は刀を構えたまま動かない。息を整えているのか。見れば、ずいぶんと若い。私よりも少し年上かな。令和日本なら高校生くらいだろうか。そんな若いうちから他人様の首を落とさなきゃならんなんて、因果な商売だなあ。 そのまま、時間が過ぎていく。介錯人の顔色が青くなり、細い顎先から脂汗が滴り落ちる。そして見物人がざわつき始めた。「おいおい、いつまで待たせんだ」「おーい、こっちは仕事を抜けて見に来てんだよ!」「そうだそうだ! さっさとしやがれー!」 ざわめきは野次へと変わり、竹垣を掴んで揺さぶる者までいる。騒ぎはどんどん大きくなり、ついに役人たちが縦書きの前までやってきた。「ええい! 静まれ、静まれ! 本日の刑は延期とする!」「なんだと! とっとと首切りゃいいだけじゃねえか!」「斬首とは左様に簡単なものではない! 貴様らが騒いだから延期になるのだ!」「なんでえ! おいらたちのせいだって言うのかよ!」「あたい、最初から見てたけどさあ。あのお侍さん、首を斬る度胸がないんじゃないかねえ」「馬鹿を申すな、彼の者は山田浅右衛門の高弟、菖久殿だ! 貴様らが気息を乱さねば見事お役目を果たしていたに違いない!」「けっ、腰抜け侍が! 何ならおいらが代わりに斬ってやろうか?」「貴様ッ! 武士を愚弄するか!」 見物人と役人たちが揉め出してしまった。うーん、なんだか雲行きが怪しいな。別にスプラッタ趣味はないし、ト
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第25話 人斬りレッスン

 準備を整えた私は、菖久とかいう侍を世境橋の下に連れてきた。そしてなぜかコガネちゃんもいる。「カナさん一人だと心配で……」とか言っていたのだが、一体何を心配しているのだろう。「というわけで、特訓開始だ! まずはこれを斬ってみたまえ」「これを斬るのか?」 私が取り出したのは、試斬用の巻藁を人型に組んだものだ。青竹に使い古した俵などを巻いたもので、なんでも人間を斬るのと近い手応えになるらしい。「うむ、名付けてマッキー君1号だ。ひと思いにやってくれたまえ」「巻藁ならば慣れているが……」 チンと甲高い鍔鳴り音。次の瞬間には、マッキー君1号は肩から腰にかけて両断され、どすりと重い音を立てて川原に上半身が転がった。抜く手も見せず……とはまさにこのことか。切り口を確認すれば刺し身の切っつけのようになめらかだ。山田浅右衛門の高弟という触れ込みは伊達ではないらしい。「それでは、マッキー君2号。頼んだよ」「先ほどと変わらぬではないか。顔に誰ぞの浮世絵が貼られているが……」「いいからいいから。斬っちゃて斬っちゃって」「う、うむ」 マッキー君2号も無惨に両断される。迷いはないな。次のマッキー君3号は、顔を浮世絵ではなく写実的な絵に変えたものだ。これもあっさり両断。4号は着物を着せ、5号は肌に蝋を塗り込んで人肌っぽくしている。これらもあえなく両断。これでだいぶ抵抗がなくなってきたかな?「これはなぜやっているのだ?」「うーん、未来じゃわりと普通の方法っていうか」「未来?」「あー、こっちの話。まあ、たぶん効果的なんじゃないかなって」 現代の軍隊や警察であっても、人間を殺傷するのに抵抗を覚える人間は多い。そのため、普段の訓練から人型の物体を破壊させることで慣れさせるのである。「そんじゃ、そろそろこれもいってみようか。マッキー君6号、君に決めた!」「ゲギャギャギャギャ!!」「な、なんだこれは!?」「マシラオニだよ。お侍さんだと見たことないのかなあ」 生きたまま捕まえてくるのにはかなり苦労した。麻酔銃でもあれば楽だったのだが、そんな便利なものはない。トラバサミを仕掛け、首を絞めて落とし、縄で縛り付けてやっと連れてきた苦労の結晶なのだ。「まあまあ、とりあえず斬ってみてよ」「う、うむ……わかった」 菖久が刀を抜き、上段に構える。
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第26話 ケモミミ巫女式カウンセリング

 マシラオニの巣穴からごうごうと真っ赤な炎が吹き出している。ひひひひ……いいぞ……燃えろ……もっと燃えろ……。「あの、カナさん。そろそろ消火してもいいですか?」「おっと、また夢中になっちゃった。消火よろしく!」 コガネちゃんが法術で手のひらからびゅーっと水を出し、燃え盛る炎を鎮火する。なんど見ても不思議である。私もおぼえたいが、技術だけでなんとかなるものではないらしいので諦めた。「こ、ここまで徹底的にやるものなのか……」 青い顔で口元を抑えながら、黒焦げになった巣穴を見ているのは菖久だ。これで火まで怖くなっちゃったらどうしよう。まあ、新たなトラウマを植え付けてしまったとしてもそれは自己責任ということにする。「それで、退治した証明に角を切り取っていくんです。やってみます?」「う、うぷ……」「無理はしなくて大丈夫ですよ」 今回の収穫は8匹だ。なかなかの稼ぎだな。私はコガネちゃんと手分けして角を切り取っていく。「それじゃ、寄せ場に戻ろうか」「今日はちょっと寄り道していいですか」「かまわないけど、何かあるの?」 コガネちゃんは吐きそうになっている菖久に目配せをする。彼のトラウマ解決の手段が何か思いついたのかな? ひとまずコガネちゃんの策に乗ってみようか。 * * *「いやあ、ありがてえ。8匹もおったんか」 長年の野良仕事ですっかり日焼けしたおじいさんが、コガネちゃんの手を取ってニコニコと微笑んでいる。山を降りてコガネちゃんが向かったのは、マシラオニ退治の依頼を出した農家だった。ちょうど昼時だったようで、囲炉裏にかかった鍋から湯気が上がっている。「そうだ、あんたらメシ食ってくか。大したもんは出せねえが」「いいんですか? やったあ、ご馳走になります!」「ラッキー! ごちになります!」 おじいさんが椀に鍋の中身をよそって配ってくれる。「かたじけない……しかし、これはなんという料理でござるか?」 菖久は目を丸くして椀を見つめている。全体的に茶色がかっていて、黒っぽいつぶつぶや細かく刻んだ葉っぱなどが交ざっていた。「料理っていうほどのもんではねえですなあ。大根の葉っぱを刻んだのと、粟や稗を混ぜた雑炊ですだ。よかったら漬物も食ってくんなせ」 スライスしたたくわんと、細かく刻んだ茄子の漬物が出てくる。たく
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第27話 負債総額74兆3,031億円

 時代と世界は変わって令和日本。 世境橋の袂に、ひとりの女が立っていた。すらりと背が高く、ショートヘアをヘアピンで止めている。体にぴったりとフィットしたパンツスーツを身にまとった姿は、いかにもデキる女という風情であった。「大場カナコのヤサ……ようやく突き止めたぞ……」 高級ブランドの眼鏡をくいっと持ち上げるその視線の先にあるのは、ダンボール製の家である。だが、ダンボールハウスなどという生易しい代物ではない。どこから拾い集めてきたのか、材木や鉄筋などで補強され、もはや一軒家と呼んでよい建築物がそこにはあった。「大場カナコ、出てこい! この皇國金融債権回収部隊長、鳥立流与からは絶対に逃れられんとしれ!」 流与が黒いスーツに身を固めた男たちを引き連れ、ダンボールハウスに突入する。「うぎゃあっ!?」 しかし、ドアを蹴破った途端、ぼかーんと大きな爆発。辺り一帯に白い煙がもうもうと立ち込め、視界が奪われる。「くそっ、ブービートラップか!? 追えっ! 散れっ! 探せっ! やつは煙幕に紛れて逃げるつもりだ!!」「はっ!」 白煙の中を黒服たちが走る。流与はその場に留まり、眼鏡を拭きながら思考を巡らす。「やつが逃げるならばどのルートだ……。いくらすばしっこいとはいっても、所詮は女子中学生。男たちに追われれば逃げ切れまい。単純に川原や土手を走って逃げるとは考えづらい。いや、そもそもなぜやつは橋の下にヤサを構えた? 逃走ルートは常に確保しているはず」 白煙が薄れ、視界が徐々に回復する。かけ直した眼鏡の先に映るのは、陽光を返しきらめく川面。「そうか、川か!」 流与は躊躇なく川に踏み込む。冬の冷たい水がパンプスに染み込むが、その程度のことで怯む女ではなかった。「やつのことだ。川底を掘ってシェルターを作っていたとしてもおかしくはない。おい、黒服ども! 川だ! 川を徹底的に洗え!」「えっ、この真冬にですか!?」「何か文句があるのか?」「いっ、いえ!」 散っていた黒服たちが、青ざめながら真冬の川に入っていく。がちがちと震えながら、川底の石をひっくり返したり、下流に向かってのろのろと歩いていったりする。「ちっ、軟弱者どもめ。皇國金融の人材の質も落ちたものだ」 流与は思わず舌打ちをす
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第28話 時を駆ける借金取り

「見つけたぞ! 大場カナコぉぉぉおおお!! げほっ、ごほっごほっ」 今日も今日とて寄せ場で仕事を探していると、ずぶ濡れの女が現れた。黒縁の眼鏡に黒いパンツスーツ。生まれたての子鹿のように全身をぶるぶる震わせている。あっ、唇が紫色だ。真冬だというのに御苦労なことだ。「毎度毎度マシラオニ退治ばっかりじゃ飽きちゃうよねえ。何か変わった依頼はないもんかねえ」「あのう、カナさん? 何か呼ばれてるみたいですけど……」「しっ! 目を合わせちゃいけません! きっとアブナイ人だよ」「大場カナコぉぉぉおおお!!」 無視しようと思ったら、目を血走らせながら走り寄ってきた。まったくもうめんどくさいなあ。取立屋の中でもこいつが一番しつこかったんだよな。「ふふふ、上手く逃げおおせたと思ったら思い違いもいいところだ。皇國金融債権回収部隊長、鳥立流与様からは決して逃れられん! げほっ、ごほっ」「オウ? ユーは誰デスカー? 私はビッグプレイス・カナと申しマース。ルヨさん、ハジメましてデースネー」「えっ、あれ? いやお前大場カナコだよな?」「カナコ? ノー、ミーはカナですネー。ナイストゥミーチュー」「な、ナイストゥミーチュー……?」 私は外人のふりをし、ルヨの手をがっちり握ってシェイクハンドした。こちとら仕事探しの真っ最中なんだ。こんなやつに関わっている暇などない。「って、そんなので誤魔化されるかボケぇぇぇえええ!」「あ、バレたか」「バレるに決まってんだろ! 皇國金融を舐めるなッッ! 貴様の債権74兆3,031億円! 耳を揃えてきっちり支払ってもらうぞ!! げほっ、ごほっ」「ほーん」 まさか時空を超えて取り立てに来るとは、まったく仕事熱心なことである。まあ、意外と言えば意外ではあるのだが、こういう事態が生じることは想定の範囲内だ。何しろ私がこの世界に流されて来たのだから、他の誰かがやってきてもおかしくはない。「あの……どこのどなたか存じ上げませんが、まずは体を拭いた方が……」 ぶるぶる震えるルヨを見かねたのか、コガネちゃんが手ぬぐいを差し出した。「むっ、これはすまん。見知らぬコスプレイヤーの人」「こす……?」 ルヨは手ぬぐいを受け取ると、髪をがしがしと拭き始めた。ふふふ、この反応から察するに、案の定こいつもまだ異世界に来たことを認識してないな。
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第29話 吾輩は次代を照らす偉大なる思想家、佐久間象山!

「おのれ大場カナコぉぉぉおおお゛! ぶち殺すっ!」「うわー、怖い。狂犬病の犬みたいですね。お奉行様、怖いので帰っていいですか?」「待て、まだ何も話しておらぬではないか。鳥立、お主も静かにいたせ」 今日も今日とて元気にマシラオニ退治……と思っていたら、町奉行所から呼び出しを食らってしまった。なんでも流与の件で聞きたいことがあるそうなのだ。断るわけにもいかずやってきたら、お白洲で荒縄に縛られた流与とご対面している訳だった。 お白洲は白い砂利が敷き詰められていて、座布団代わりに薄い茣蓙が敷かれているだけだ。ここに正座をしていると結構痛いし冷たい。もう少し人権に配慮して欲しいものだ。まあ、ここには何度も来てるから、もはや慣れつつあるわけだが。「この贋金……いや、贋札と呼ぶべきか? どうやって作ったものかわかるか?」「わかんないっすねー」 座敷に座ってこちらを見下ろしているのは町奉行だ。1万円札をこちらに見せてくるが、作り方なんて私も知らない。というか、国家のトップシークレットなのだから知るわけがないのだ。「版画職人に見せたところ、これはとてつもない技術で作られているそうだ。複数を比べても寸分たわず瓜二つ。ただ南蛮文字だけが少しだけ違う。十年かかりきりになっても作れないと申しておる」「それは大したものですねえ」 南蛮文字というのはお札の通し番号のことを言っているのだろう。お札なんて普段まじまじと観察する機会はないが、めちゃめちゃ細かい意匠が正確に刷られていることぐらいは当然知っている。極めて稀にエラー印刷されたものが流通し、そういうものはプレミアが付いて高額で取引されているほどだ。「そこまでの技術があるなら、すでにある藩札を真似ることも容易だったはず。なぜ、わざわざ存在しない贋札を作ったのだと思う?」「わかんないっすねー」 そもそも、流与は贋札など作っていない。令和日本ならばきちんと通じる真正の一万円札である。いくら悪名高い皇國金融とはいえ、贋札作りにまでは手を出してないだろう。贋札は通貨の信用を毀損し、経済を破壊する爆弾だ。それは現代でも江戸時代でも変わらず重罪なのである。「そこで、そこな女を詮議したところ。奇妙な話を聞いた」「私たちは二百年先の未来から来たのよ! 大場カナコ、貴様もそうだ! どうせ未来
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第30話 ウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショーグン

「時は西暦20XX年! 二百年後の日ノ本の国、ネオ江戸シティは恐怖のどん底に叩き落されていた……!」 ベンベンっと扇子で机を叩くと、庭先までびっしりとすし詰めになった聴衆がごくりと息を呑む。「江戸湾から現れ出たのは頭の高さは五百尺を超える大怪獣! ぎょろりと真っ赤に燃える目に岩山の如き荒々しい肌。どしんどしんと歩くたび、家屋が潰され大地が揺れる! その全貌はさながら直立する巨大な鰐! 火を吹きながら歩く様子は浅間山が生命を得て動いたが如くっ! その名も大怪獣<ゴメラ>! 未曾有の危機に、ネオ江戸っ子たちはなすすべもなく逃げ惑う!!」 ベンベンっ。「地球防衛火消し『バイオロジーサイバネティックめ組』は秘密兵器を駆使してこの大怪獣に立ち向かうっ! まず出動したるは超電磁エレキテル重戦車っ! にゅっと突き出た砲口からまばゆい雷光が発せられ天をも焦がすっ! さしものゴメラもこれには……しかしっ! 白い雷光の向こうからぬうっと垣間見えるは不敵なる魔獣の凶相! 人類の脆弱さを嘲笑うが如く乱杭歯がびっしり生えた凶悪な口を開けると、紅蓮の炎が吹き出し超電磁エレキテル戦車を吹き飛ばすっ! 名状しがたい熱波が広がり、エターナル永代橋からジャパナイズ日本橋まで、ネオ江戸シティが一瞬で灰燼と化すっ!」 ベベンベンベベンっ。「もはやネオ江戸シティの……否、人類の命運もこれまでか……ネオ江戸っ子たちが絶望のどん底に落とされたそのときだった……。アイツが、そう、アイツが来てくれたのだ。さあ、皆様もご一緒に!」「「「「ウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショウグーン!!!!」」」」 よしっ、聴衆の声が見事に揃った。みんな呼吸がわかってきたな。「そう! やってきたのは我らがウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショーグン! 鮮やかなる金糸のマントを閃かせ! 真っ白な天馬にまたがって! 大空を駆けてやってきた! ゴメラの目の前にシュタッと着地すると、即座に巨大化! 五百尺まで膨れ上がり、憎っくきゴメラの顔面に右拳、左拳、右拳、左拳、右拳、左拳……拳の嵐を叩き込む!! ウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショーグンの七十七の必殺技のひとつ、<ウルトラスーパーミラクル暴れん坊フィストストーム>が炸裂したあっ!!」 聴衆が「わあっ」と盛り上がる。やっぱりヒーローの登場シーンはど派手に
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