All Chapters of 自称・漆黒の堕天使が異世界を改革するようです: Chapter 31 - Chapter 32

32 Chapters

第二十九話 エピローグ・前編

 あの気分が悪くなる天界の出入り口を抜け、一路ザイドハーマを目指す。ヴェイヴァルはエテメンアンキが見つかったあとでは維持する価値がないので、ベルたちもシェム将軍の部隊に合流する手はずになっている。 しばらく飛んでいると、すでに懐かしさすら覚えるあの朽ちた港街が見えてきた。潮風の匂いが鼻孔をくすぐる。 虚空に花火のようにラドネス語で巨大な「勝利」の文字を描く。これで望遠鏡を持った見張りが気づいてくれるだろう。 距離が少し縮まってくると、風に乗って三十万の歓声が聞こえてくる。 魔導師たちが諸手を挙げている姿が視認できるようになった。先頭付近で落ち着きなく飛び跳ねてるのは……マルコ以外考えられない。すでにベルたちが合流しているということは、思いの外時間が経過したらしい。抱き合って喜んでいるものまで居て、女所帯ならではの光景だなと益体もない事に思いを巡らせてしまった。 ◆ ◆ ◆「ルシフェル様、ご帰還お待ちしておりました!」 跪く群衆の前に舞い降りると、制服姿に戻っている先頭のベルが面伏せたまま言葉をかけてくる。彼女の後ろには久しぶりに会うシェム将軍が伏せている。そのやや後ろで数人がかりで頭を押さえつけられてるのは……まあ、確認するまでもないな。「堅苦しい挨拶はしなくていい。皆、面を上げ、楽な姿勢になるといい」 言葉に従い、皆が立ち上がる。「色々と話したいことがあるが、まずは、こう言っておこう。神はもう居ない! 我らの勝利だ!」 再び巻き起こる黄色い歓声。いやはや、三十万人もいると凄いボリュームだ。「ルシフェル様、我々は救われたのですね。どれほど感謝を述べたら良いのか分かりません。ラドネスの民を代表して、感謝いたします……!」 拭っても拭っても溢れてくる嬉し涙を止めることができないまま、ベルが述べる。彼女を見ていると、パダールでのあの夜を思い出す。人々の思いをその細い肩に背負った皇女。君は本当に優しくて責任感の強い女性だ。「勝利を信じておりました! 軍を預かる身でありながら、ルシフェル様のお力に頼り切る形になり、自らの非才を恥じる次第です……って出てきちゃダメぇ!」 シェム将軍が生真面目を絵に描いたような顔で頭を垂れると、どうやらテントからちゅーちゅんがほっつき歩いて来てしまったようで、慌てて隠している
last updateLast Updated : 2026-07-16
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最終話 エピローグ・後編

 馬車に乗り、進軍してきた道を辿ってラドネスに戻ってみれば、盛大なるファンファーレの嵐。途中のバルム砦での歓迎ぶりも相当だったが、やはり規模が違う。質素に生きていたであろう人々も、今日は大はしゃぎだ。ポテチをつまみに例の謎酒をかっ喰らっている人々の多さよ。今後必要だったはずの兵糧が浮いた分を、放出しているのだろう。「ベル。俺からこの国の人々に伝えなければならないことがある。場を設けてもらえないだろうか」「御意にございます。早速手配させましょう」 皇女が馬車から首を出し、傍らで馬に乗って歩いていた魔導師に要件を告げると、その魔導師はだく足で宮殿へと向かっていった。 さて、これからがきっと大変だな。 ◆ ◆ ◆ 宴の後、演説の場が用意できたと言うので宮殿のテラスから広場を見渡すと、一面人、また人という状態である。これは少し緊張するな。「皆に告げなければならないことがある。俺は今この時を以て隠棲する。今後、俺を崇め奉ることはまかりならん!」 激しいどよめきが沸き起こる。中には悲鳴を上げる者までいた。まあ、こうなるよな。群衆の動揺を鎮めるため、手をかざす。「この度の争いは、俺のような異世界から来た者たちが神を僭称し、世界を意のままに操ろうと己の考えを強制したことに起因する。俺がこの国、いや世界の営みに口出しをすることはその愚を繰り返すことに他ならないと考えた。皆は、自らの頭で考え、より良いと思う世界を築いてほしい。以上だ」 再度のどよめき。しかし、先程よりは落ち着いてる気がする。振り返ると、ベルがそのつぶらな瞳を更に丸くして絶句していた。更にその背後には、いつもの七人が神妙な顔で控えている。あのマルコまで大人しいとは、異世界人でも降ってくるかな。「という訳だ。まあ、たまには顔ぐらい出すよ」 肩をすくめると、ベルがぽろぽろと涙を流すではないか。「申し訳ありません。突然のお達し、どう受け止めたものか……」「すまないな。今後の身の振り方を熟慮したらこういう決断になった」 指で姫君の涙を拭う。我ながら気障だな。「ルシフェル様、もう我々を導いてくださらないのですか!?」 フォルの痛切な叫びが響く。「そうだ。必要以上のことはしない。皆は好きだが、ラドネスだけを贔屓すればきっと人類の新たな災いとなる」 後ろ髪引かれる思いで
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