その頃、VIP病室。消毒液の匂いが静かに漂っていた。病室には、医療機器がかすかに作動する低い音だけが響いている。詩織は病床に横たわり、命をつなぐためのさまざまなチューブにつながれていた。痩せ細った体は骨ばっていて、顔色は、まるで長いあいだ陽の光を浴びていないかのように青白い。ただ、傍らのモニターに映る規則正しい波形だけが、彼女がまだ生きていることを物語っていた。明臣はベッド脇の椅子に腰掛け、点滴をしていないほうの、冷たく痩せた詩織の手を壊れ物でも扱うようにそっと包み込む。里奈は隣に立ち、医者の話を穏やかな口調で伝えた。「医者の話だと、詩織に『生きたい』って気持ちが戻ってきたらしい。こんなことは本当に珍しくて、何か外部からの刺激がきっかけになった可能性があるんだとか。意識を取り戻すまではまだ時間がかかるだろうけど、少なくとも希望は見えてきた」そう言いながら、里奈は明臣の表情をさりげなくうかがい、何気ない口調で続ける。「そういえば不思議なんだけど、容体がはっきり良くなり始めたのって今日の明け方以降なんだよね。明臣、昨夜あの涼真に会いに行っただろ?もしかして、本当に悪いことをした人には報いが返ってきて、それを詩織が感じ取った、とか……」その言葉に、明臣は詩織の手を思わず強く握りしめた。外部からの刺激……明け方以降……昨夜、刑務所で涼真を徹底的に辱め、跪かせた。その直後に、詩織の容体が好転したというのか。ただの偶然なのか。それとも、本当に目には見えない因果というものがあるのか。その考えが稲妻のように頭を貫き、胸が強く締めつけられた。言葉にできない複雑な感情が、胸の奥から込み上げてくる。明臣は乱れそうになる思考を無理やり押し込めた。理由が何であれ、詩織が良くなるのなら、自分は何だってする。「詩織、聞こえてるか?医者がもうすぐ良くなるって言ってたよ……全部、お兄ちゃんが悪かった。君を守ってやれなかった」明臣は低くつぶやいた。深い黒い瞳には思い出が次々とよみがえり、わずかに涙がにじむ。脳裏に浮かんだのは、幼い頃の詩織だった。小さな詩織はピンク色のプリンセスドレスを着て、まるで太陽のような笑顔で自分のもとへ駆け寄ってくる。幼い声で両手を広げ、「お兄ちゃん、だっこ!」と甘えてきた。やわらか
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