夕食を終えたあと、怜司が珍しくノートパソコンを持ってリビングへやってきた。「紗英。少し仕事のことで相談したいんだけど、いいかな?」名前で呼ぶようになってから、怜司の接し方は少しくだけたものに変化していた。その距離感に紗英は、まだ少し照れがある。「はい。私でよければ」隣のソファに腰を下ろした怜司が、パソコンを開く。「澄香さんからの話は聞きました。黒瀬が接触してきたそうですね」「はい。澄香さんには、あまり無理をしないでほしいんですけど……」「そうですね。高槻に家にいると、彼女の周囲に味方は少ないでしょうから。せいぜい、黒瀬に話を合わせておく程度で、深入りしないように彼女に伝えてください」怜司はそう言って、画面を紗英の方へ向けた。「実は、過去の装花契約について調べているんですが、気になるものがあるんです」表示されていたのは、請求書をまとめた資料だった。「これは……ホテルの装花費用ですか?」「雅人が関わっていた件です。契約上、かなり高額な花材が納品されたことになっているんですが、実際の納品記録と一致しない」紗英は画面を覗き込んだ。ホテル名、施工時期、花材の種類、数量。馴染みのある項目が並んでいる。「少し見せていただいてもいいですか?」「もちろん」そう言うと、怜司は、身体を寄せて見えやすいようにPCを紗英の前に出した。紗英はパソコンを自分の方へ引き寄せ、請求明細を読み始めた。「……あれ?」最初に気になったのは、花材の数量だった。「このホテル、改装前のロビーですよね?」「そうです。今から二年ほど前の案件ですね」「私、ここに行ったことがあります。以前、装花の打ち合わせで伺ったんです」紗英は、記憶の中のロビーを思い浮かべた。広い吹き抜けが特徴的なホテルだったが、正面には
Last Updated : 2026-10-27 Read more