祐一は扉のすぐ外に立ち尽くしていた。全身がびくりと強張った。右足を振り上げ、全体重をかけて病室の扉を蹴り開けた。重い扉が壁に激突し、病室に大きな音が響いた。美樹はビクッと全身を跳ねさせ、その手からスマホが真っ白なシーツの上へ滑り落ちた。弾かれたように振り返ると、鬼のような形相で扉の外に立つ祐一の姿があった。彼女の顔から一瞬にして血の気が引く。「ゆ、祐一……いつからそこに?あっ、今のはただの冗談で、友達とふざけていただけなの!本気じゃ……!」咄嗟にいつものか弱い表情を作り、目元を赤く潤ませて祐一に縋ろうとした。だが、祐一は冷え切った声で問い詰めた。「あの夜の酒に薬を入れたのは、お前か」「違うわ!聞き間違いよ、私がそんな恐ろしいこと……」今回ばかりは、祐一は哀れっぽい弁解に一切耳を貸さなかった。その一言が与えた衝撃はあまりにも大きく、何年にもわたって霧子に抱き続けてきた憎悪の根幹を、完全に覆すものだった。もし美樹の言葉が真実なら、自分は最も愛した女を信じるどころか、自らの手で何度も傷つけ、地獄へ突き落としてきたことになる。祐一の頭の中が真っ白になった。スマホを取り出し、陸に電話をかける。「使える伝手を全部使え。今すぐ、美樹のことを徹底的に調べろ」陸が一瞬息を呑んで押し黙り、緊迫した声で答えた。「分かった。すぐに動く」祐一は乱暴に通話を切ると、腕に青筋を浮き上がらせながら、スマホを正面の壁に向かって力任せに叩きつけた。バンッ!という激しい破砕音とともに、端末は一瞬で無惨に砕け散った。彼は血走り、狂気を宿した目で、顔を引きつらせている美樹を睨み据えた。「調べた結果、お前が潔白だと証明されることを祈るんだな」祐一は歯を食いしばり、一言ずつ押し殺すように告げた。その声には、凄まじい怒りが滲んでいた。「もし黒だったら……自分が何をしたのか、徹底的に思い知らせてやる」祐一が踵を返すと、美樹は糸が切れたようにベッドへへたり込み、ガタガタと震えだした。「待って、聞いて!さっきのは本当に誤解なの。私、ただ適当なことを……」「黙れ」祐一の声には、何の感情の起伏もなかった。すべての感情が死に絶えたかのように、不気味なほど静かだった。数時間後、陸が調査書類の束を抱え、病室に入ってきた。
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