【あの数年、私は実家からの仕送りを止められてた。彼は一日に3つもバイトを掛け持ちして、こっそり私の口座にお金を振り込んでくれてたんだ。私が寝ている間に、スマホの振込通知もメッセージも全部消して】心臓が大きく跳ねた。指先が冷えていく。震える手で画面をスクロールすると、投稿主が1枚の写真を添付していた。写っているのは、キッチンで料理をする男の後ろ姿。そのそばにあるガラステーブルには、婚姻届受理証明書の上に、小さな勾玉のお守りのついている、赤いミサンガが2本並べて置かれていた。それは私が17歳の頃、夜更かしをしながら少しずつ編んだものだった。作ったのは全部で3本。1本は私が、もう1本は祐一が身につけ、残る1本は、一番の親友だった鶴本美樹(つるもと みき)の手首に私が結んであげた。頭の中で、何かが弾ける音がした。これが現実だなんて信じたくない。ただの偶然だろうか。編み方なら、真似できる人もいる。けれど、写真に写るあの後ろ姿だけは、たとえ何年経っていても見間違えるはずがない。震える指で、そらんじられるほど記憶に刻み込まれた番号を打ち込んだ。「どちら様ですか」低く落ち着いた声。かつて誰よりも聞き慣れた、彼特有の素っ気なさが滲んでいた。口を開いたが、自分の声は掠れて別人のようだった。「私よ」数秒の沈黙。彼は私の声に気づかなかった。かつては「お気に入り」に登録していたこの番号さえ、とうの昔に忘れてしまったのだ。電話の奥から、軽い足音が近づいてくる。続いて、甘えるような女の声。「ねえ、誰から?」美樹だ。祐一の声が、途端に甘く和らぐ。「さあ。詐欺か何かだろ」躊躇いもなく、通話は切られた。私は一歩も動けなかった。力の抜けた手からスマホが滑り落ち、地面に落ちて乾いた音を立てた。どうして?一体、何があったの?私の恋人が、どうして私の親友と結婚しているの?私はふらふらと街を彷徨った。行き交う車の音さえ耳に届かない。記憶ばかりがとめどなく溢れ出す。昔の祐一は、手のつけられない不良だった。喧嘩に明け暮れ、テストの答案はいつも白紙。全身に棘をまとい、教師たちからも見放され、教室の一番後ろの席で半ば放置されていた。けれど私だけは見捨てなかった。学年トップだった私は、彼に一目惚れしていたのだ。周囲の目など
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