(どうして……) お使いを頼まれただけなんだ。ほんの、数十分の間に、なんで……。 自宅に戻ったら、店の中が血まみれで、父さんも、母さんも、姉さんも動かない。 中の様子は、メチャクチャだ。 野次馬と、おまわりさんがなにか言ってるけど、なにもわからない。「だめですね、こりゃ。まあ、無理もないが」「この子は、孤児院行きかなあ」 わけがわからないよ。俺の家族がなにをした? 普通の雑貨屋で、いい商いをしていて、恨みを買うようなことなんてなかったのに!「店の金が手つかずです。物取りの犯行じゃないようですね」「すると、怨恨か……。おい、坊主。真っ青だぞ、大丈夫か?」 顎から、なにか垂れた。泣いていたらしい。 急に、これは現実なんだと理解できて、わあわあと泣いてしまう。「ロイくん。つらいでしょうけど、しっかり」 近所のおばさん。他人事だ。しっかりなんかできるわけないだろう。 差し出された手を、払いのける。 どのぐらいそうしていただろう。泣き止む頃には、おまわりさんも、野次馬もいなくなっていた。「坊、どうした」 声のした方を見ると、角縁メガネ……これは、かなり珍しい品だ。それと、黒の三角帽子に白いアラビアンパンツ――今よりも小さかった頃、頭を強打してからというもの、頭に異界の知識が流れてくる。それでわかる――の、いかにも魔女然としたお姉さんが、俺を見下ろしていた。 その目は、憐れむでもなく、蔑むでもなく……強いていえば、優しかった。「久々に街にでてみたら、気分の悪いものを見てしまったね。被害者の生き残りか? よかったら、あたしんちに来るかい?」 そっと手を差し伸べてくる。……今度はその手を、払わなかった。 ◆ ◆ ◆ 昨今流行りの、ガラス製の鏡で身だしなみを整える。 青い瞳に、金の短髪の若い男が、そこには映っていた。「では師匠。行ってまいります」 師匠に向かって、深々とお辞儀する。 今から五年前。家族を殺された俺を、救ってくれた人。今では、この世で最も尊敬する人に。「冒険者か。懐かしいねえ。危険な仕事には、就かせたくなかったけど」 師匠の美しさは、あのときとまったく変わらない。「俺ももう、十五です。いつまでも、ここで禄を食んでいるわけにもいきませんから。ないない尽くしが身を立てるには、冒険者しかありませんし」「そ
Last Updated : 2026-07-22 Read more