All Chapters of 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!: Chapter 51 - Chapter 60

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第五十一話 魔導剣士ロイ、凶鳥王を売る

 いやはや、久しぶりだな、ルンドンべア! 街道が、雪に閉ざされる前に帰ってこれて良かった。「あっちの料理も美味かったけど、女将さんの料理が恋しいっすよ~」 さっそく、空腹を訴えるマイシスター。「悪いが、食事よりも先にやることがある。時間との勝負だ。行くぞ」 各人の同意も待たず、早歩きで目的地へ向かう。 ◆ ◆ ◆ たどり着いたのは、なんだか懐かしい気がする、ベイシック邸。「スティング・ホーネットのロイです。ベイシック卿はご在宅でしょうか?」「ご在宅であるが……。何用か」 門衛に問われる。この間も、もどかしい。「完全新種の魔物のご報告に参りました。時間との勝負です、とお伝え下さい」「待っていろ」 つくづくもどかしいが、ご在宅なだけでもラッキーだ。まんじりともせず、彼の招きを待つ。「許可が降りた。腰のものは、預からせてもらう」 害意なんてないよ、と言いたいけど、そんなことを言っている時間も惜しい。 執事さんの案内で、応接室に通される。「やあやあ、これは久しいですな! なんでも、新種の魔物を発見されたとか?」「はい。まずは、論より証拠ですね」 ベルトポーチから、あのバカでかいゴーグルを取り出す。ノンキしてた卿も、息を呑む。「パティ。急いでシャックスの姿絵を描いてくれ」 パティのことだから、やたら丸っこいシャックスが描かれることだろうが、彼女が一番絵が上手いので、そこは目を瞑ろう。「シャックス、ですか?」 卿が、突如飛び出した謎ワードに首を傾げる。「やつ自身が、そう名乗っていました。さて、ベイシック卿。ここからは商談です。シャックスの情報を、この値段で買っていただきたい。金貨で」 指で、ちょいとお高い値段を提示する。「や、それはなかなか……。もう少し、なんとかなりませんかな」「我々は、北から馬車を飛ばしてきました。少々無茶もしました。シャックスの情報は、間もなく南下し、こちらに届くでしょう。正式発表、一番乗りのチャンスですよ」「む、むむ……。せめて、この値段なら」 卿が、指で少しだけ額を下げる。よし、最初に考えていた、落とし所の値段だ。「では、それで。契約成立です。契約書を」 互いに、手早く交わす。「では、特徴を述べていきます」 翼長。金属でできた、その体。ボンベ。人語を解し、未曾有の魔
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第五十二話 魔導剣士ロイ、奇妙な依頼を受ける

 シャックスの情報が売れたおかげで、今回の北征の収支はプラスとなった。災い転じて福となるとは、このことだな。 しばし、依頼票にも美味い募集がなく、また、あんな大惨事の後だし、しばらくのんびりしたいということもあり、のんべんだらりと過ごしていると、珍しい客が、我々を訪れた。 メイドさん。 それも、際どい格好の。 こんな格好をメイドにさせる人物は、一人しかいない。そして、彼女に見覚えがある。「ええと、メイさんでしたか。モロオさんのお住まいでお勤めの」「はい。その節は、主人ともどもお世話になりました。主人より、『茶話でもひとつどうかな?』との言伝を預かり、こちらに参りました」 ふむ。暇っちゃあ暇だし。「俺は賛成だが、どうだろうか」と皆に問うと、皆も同意したので、ぞろぞろとおなじみモロオ邸にお邪魔することになった。 ◆ ◆ ◆「やあやあ。しばらくここを離れてたそうじゃない。で、最近はくつろぎモードだとか」 本日の茶菓子はチョコレートケーキ。チョコレートというのは、なんでこうも絶妙に甘旨いのか。脂肪分がとろけるのよなあ。「はい。これが、予想外に厳しい冒険行となりまして……」 茶話がしたいというのが彼の希望なので、波乱万丈の北征を劇的に伝える。卿は、大いに愉しんでくださった。「いやー、そりゃ大変だったねえ。シャックスのことは、直接ベイシック卿から伺ったよ」 かの凶鳥王の存在は、すでに学者や冒険者の口の端に上るようになり、ベイシック卿は発表者として、その名声を大いに高めている。「ベイシック卿と、お知り合いなのですか?」「まあね。商売、ネットワーク大事だから。でさ、君たち今、暇なわけだよね」 身を乗り出してくる卿。「はあ。幸いなことに余裕があり、こうして伺っている次第ですが」「うんうん。そこでさ、ちょーっと頼まれごとを、引き受けてくれないかな?」 やや。急に、茶話がしたいなどと仰るから伺ってみれば、そういうことですか。「お話次第になりますが」「そうだね。僕を贔屓にしてくださっている貴族に、ハイプライド卿という方がいらっしゃるんだけど、知ってるかな?」「知ってるも何も、騎士団長ですね。有名人ではないですか」 高潔にして勇ましい人物と、話に聞いている。「彼の一人娘さんがねー。騎士を目指しているんだけど、
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第五十三話 魔導剣士ロイ、石頭令嬢に手を焼く

 中庭を進んでいくと、「カーン! カーン!」という、木の打ち合う音が響いてくる。ただし、妙に不規則だ。 更に進むと、金髪ポニーテールの少女が、木に吊るした棒を木刀で打つという、ベタな基礎訓練をしていた。懐かしいな、俺もよくやったもんだ。「失礼します。冒険者チーム『スティング・ホーネット』のロイと申しますが、ハイプライド卿のご息女でございましょうか」「いかにも。クッコロ・ハイプライドだ」 打ち込みをやめ、こちらに向き直る。「お初にお目にかかります、クッコロ嬢」「そう固くならないでくれ。気軽にクッコロさんでいい」 首にかけた手ぬぐいで汗を拭きつつ、爽やかに言う。とりあえず、気難しい人物というわけではないようだ。「では、クッコロさん。結論からいきましょう。我々は、クッコロさんの騎士への道を、諦めさせるために遣わされました。差し支えなければ、どうしてそこまで騎士にこだわるのか、教えていただければと思います」「君らもか。今まで、いろんな騎士や冒険者が、諦めさせようと説得してきたが、私の意思は変わらないぞ」 台に置いてあった水差しからコップに水を注ぎ、ぐいっと呷る彼女。「そうでありましょうね。そこまで固い決意をなさった理由を、お聞かせ願えればと思いまして」「ほう。君は搦手から行くのが好きなタイプか。いいだろう。父上は、立派な騎士団長で、私はその一人娘だ。それ以上の理由が要るかい?」 お父上を、強く尊敬されているのだな。「なるほど。私の一家は……もうこの世にいませんが、商家で、育ての親は国一番の魔女、ローズマリー・ベラドンナです。そのような者が、私も家族や師匠を尊敬していますが、冒険者などしています。そういった、違う道を行くというのは、ご一考されませんか?」「君は、ローズマリー様の弟子なのか。興味深いな。だが、それでも先程の話に加え、騎士たらんとする理由がある。騎士は、強きに立ち向かい、弱きを守る者だ。私は、そうありたい」 ふむ。志は立派だが……。「失礼ながら、腕前のほうは、お父上様より伺っています。お疲れのところ恐縮ですが、打ち込みをもう一度、見せていただけますか?」「よかろう」 再び、打ち込みを始める彼女。 ……やはり、空振りが多い。不規則な音の理由は、これだ。「そこまでで結構です。空振りが多いですね。それは
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第五十四話 魔導剣士ロイ、晩餐に招かれる

 クッコロさんと舌戦その他諸々、あの手この手で諦めさせようとすること、数刻。「諦めが悪いな、君も」「いえいえ、クッコロさんには敵いませんよ」 互いに疲れ果てていた。気づけば、もう日が沈みかかっている。「ふう。埒が明かないな。今夜は、うちで食事していくといい」「いえいえ! そんな! 依頼未達成で、そのような厚かましい!」「その未達成の原因が、夕食を付き合ってくれと言っているのだ。何の問題もなかろう?」 え? いや、そうなのか? うーむ、丸め込まれているような。「懐柔しようとしても、無駄ですよ?」「あっはっは! 私がそんなに小賢しい人物に見えるか?」「あ、いえ! これは失礼を」 慌てて、頭を下げる。「それだ」「は?」「どうも君は、鯱張ってていかん。もっと、砕けてくれたまえよ」 背中を、ばしーんと叩かれる。「はあ……」「なんだろうな。君の諦めの悪さに、強い親近感を感じる。仲良くしてくれ」 いやはや、好漢というか、女性だから傑女か? 懐の深さは、確かに器を感じさせるものがある。惜しむらくは、つくづく戦いの才がないこと。「私は湯浴みをする。君たちは、茶でも愉しんでてくれたまえ。どうせ、父上の圧と奇妙な依頼のせいで、茶菓子が喉を通らなかったのだろう?」 参ったな、お見通しか。そしてこの流れは、断れるものではないな。「わかりました。ごちそうになります。しかし、テーブルマナーを嗜まぬ者もおりますが……」「構わん。私からその旨、言っておく。我が家のシェフは、大したものだぞ! 楽しみにしていてくれ! 茶も一級品だ!」 そう言い残し、からから笑いながら、向こうへ行ってしまった。「ご案内いたします」 うお! まだいたのか、アンタ!「では、お願いします」 こうして、俺らは客間に通されることになった。 ◆ ◆ ◆ ふう、暖かい。 暖炉の火の、なんと暖かなことか。 そして、茶が旨い。香ばしさ、コク、のどごし、どれをとっても一級品で、実にふくよかな香りが鼻腔をくすぐる。砂糖の甘味が、また上品だ。 冷え切った体に、これはありがたい。俺らもクッコロさんも、よくもあの寒空の下、堂々巡りの舌戦をしていたものだ。 しかし……。 壁に飾られている「萌え絵」、あれ、クッコロさんだよな? 間違いなく、モロオさんの画風だ。いやはや、彼が
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第五十五話 魔導剣士ロイ、大貴族の美食に舌鼓を打つ

「失礼な質問でしたら、申し訳ありません。奥方様の姿が、見えないようですが」「妻は、娘が幼いとき、身罷った。もう、十年以上になるのか」 遠い目をなさる卿。そして、クッコロさん。「デリケートな話題に踏み込んでしまったようで、大変申し訳ありません」「気にしないでくれ。私には、妻の遺してくれた、かけがえのない宝がある。それで、十分すぎる」 なるほど。本当に、ただ一人遺された忘れ形見なのだな。戦いの世界から強く遠ざけたい気持ちが、よく理解できた。「奥方様のご冥福を、主に祈らせてくださいませ」 フランが、祈りを捧げる。「ありがとう。さあ、これ以上、辛気臭いのはなしだ。前菜が冷める前に、いただこうではないか」 卿の仕切りで、食事が開始される。 まずは、葉物野菜に、ソースがかかったものだ。はて、キャベツはまだ時期ではないし……。何だろうか。 とりあえず、試してみよう。これは……どこかで? そうだ、バーブルに滞在していたとき食べた、白菜だ! これに、ラドネスブルグ風のソースがかかっている。意外なことに、相性が良い。「白菜ですね。これは、意外なものをいただきました」「ほう、さすが冒険者。白菜を知っているか。バーブルでは旬らしくてな。メインシェフが、面白い組み合わせを思いついたというので期待していたが、こう来たかと私も驚いている」 サンも、「うめーうめー」と大絶賛。卿らのお許しをいただいているので、マナーの悪さは、今は咎めないでおこう。だが、帰ったらお説教だ。 続いて、白ワインをいただく。甘め、ライトボディの発泡酒。美味いとしか言いようのない酒だ。 続いて運ばれてきたのは、パンとスープ。はて、何の変哲もないコンソメだが……? や! これは!?「この味、『青い三日月亭』のものですね」 それも、お忍びで重臣が来たとき、バーシがお出ししたものだ。「君らの拠点だったな。マルティアン様……兄上のほうだが、彼が、いたく感心したスープがあると仰っていてな。シェフに、食べに行かせたのだ。まったく、彼のお忍び癖は、愉快なものをもたらしてくださる」 愉快そうに、肩を揺らす卿。ラドネスブルグの重鎮中の重鎮、マルティアン兄弟。「グリーン・ラクーン」の異名を取る、兄である宰相テッツァーと、「レッド・フォックス」の異名を取
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第五十六話 魔導剣士ロイ、懊悩する

 クッコロさんに騎士を諦めさせる。それは依頼を受けた以上、一番優先しなければいけないことだ。 だが、ただそれだけでいいのかという思いも、心の奥に、魚の小骨のように引っかかっている。 昨日の舌戦で、彼女の騎士にかける想いをとっくりと聞かされた。それはまさに、夢見る乙女であった。 こと彼女に関しては、夢見る乙女は比喩でもなんでもなく、そのままだ。 騎士に対する、童女のような純真な憧れ。 だが、現状彼女の夢を叶えるのは、色んな意味で危うい。 ハイプライド卿の奥方様の、忘れ形見。かけがえのない、一人娘。 卿がご再婚なさらぬのは、どうしたことかと疑問ではあるが、やはり亡くなられた奥方様への想いが忘れられぬというのが、一番しっくり来る。 その忘れ形見、有事に戦場へ出すなどとんでもないというのが、卿の間違いない想いだ。 なろうことなら、婿を取って、孫を産み、静かに暮らしてほしいところだろう。 だが、クッコロさんの気持ちを無下にするのは、それはそれで正しいとは思えない。 このまま、頭ごなしに騎士を諦めさせるのは、あの深い愛情で結ばれている父娘に、良くないしこりを、絶対に残す。 彼女自ら、無才を認めてくれれば。 あるいは、なにか一つ、輝く才があれば。「兄貴!」「うお! なんだサン、急に」「どうしたも、ホットミルク、冷めちゃうよ。どしたんスか、ぼーっとして」 気づけば、朝食のサンドイッチとホットミルクが、まったく手つかずだった。「温め直しましょうか?」 女将さんが、気を利かせてくださるが、手間を掛けさせるのもな。「いえ、それには及びません」 ハムとチーズと玉ねぎのサンドイッチを食む。 生ハムも、チーズも、シャキシャキの玉ねぎも実に美味い。 昨晩の料理と比べるのは、さすがに酷だが、市井の大衆食堂の料理としては、この上もない一級品だ。 やはり女将さん、どこかいいところで、修行をなさっていたのではないかと思う。 サンドイッチを、ややぬるくなってしまったミルクで流し込む。 ふう、ぬるいものの、寒い朝に、若干温まる。これまた美味し。 ほかの五人に目をやれば、バーシに昨夜の完コピスープの話をしていた。「や。それは、してやられましたね。しかも、上をいかれましたか。まだまだ、精進が必要です」 ちょっと、悔しそうだが、コピーを怒っているというよ
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第五十七話 魔導剣士ロイ、試し、試される ―前編―

 ハイプライド邸の一角にある書斎に、俺ら、卿、副騎士団長、そしてクッコロさんが集まっていた。「卿、失礼ながら、これは……? 私の予想していた模擬戦と、ずいぶん異なるようですが」「これから始めるのは、戦略眼を見るためのものだよ。ロイ君、君らの中に、兵法を学んだ者は?」 一同を見回すが、皆、首を横に振る。「自分も含めて、心得はありません」「ならば結構、ちょうどいい。クッコロの戦略が、素人以下であるかどうか。それを測ろうと思う。君には、失礼な話になってしまうが」「いえ、実際素人でありますから」 まあ、事前に話を通しておいてくれと思わなくはないが、元はといえば、急に模擬戦とか言いだしたの、俺だしな。「では……」 おお。作戦会議に使う、赤と青の凸駒。実物は初めて見たぞ。それが、地図の上に置かれていく。「地図は、王都西の森林地帯。赤軍のロイ君が、地図のこちら側……王都側に到達したら、クッコロの負けとする。駒一つが、兵五百。両軍一万ずつとしてくれ。季節は九月。天候は、晴れ。条件は以上。始めてくれ」 いやはや、なんとも。「父上、ロイ軍はまだ動かぬ様子。サロス山に登り、陣を張ります。まず、高所を取るのが定石です」「ふむ」 王都への街道沿いにある山に陣取るクッコロさん。その表情からは、卿がそれをどう受け取ったのか、伺いしれない。「卿。我らの目的は、王都を奪うことでしょうか。破壊することでしょうか」「破壊、と考えてくれたまえ」「ならば、少数の斥候を走らせ、アロナの泉に毒を流します」 クッコロさんが陣を張った山の麓に、駒を一つ動かす。「なっ!? 毒だと! 汚いぞ、ロイ君!!」「そういう設定ですから。いかがでしょう、卿」「うむ。全く問題ない。クッコロ、これでお前の兵五百は倒れ、日干しになった。どうする?」 卿が、青い駒を一つ取り除く。唸るクッコロさん。「かような卑劣な行いをする相手に、待つ必要などなし! 全軍、突撃です!」 一気に、青駒が動く。「敵の動きは、わかるものでしょうか」「約一万の軍だからな。わかる」「ならば、左右の森の、こことここに、兵五百ずつを先行させ、伏兵として配置します。本隊はゆっくりと進軍を。さらに、足の速い者で編成した特殊部隊五百を、森に隠れさせつつ、回り込ませます」 赤駒を、動かす。「父上。それはわ
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第五十八話 魔導剣士ロイ、試し、試される ―後編―

「副団長殿。自分も、青軍に加わってもよろしいですか?」「……いいだろう。ただし、魔法はなしだ」「わかりました」 青軍の円陣に走り寄る。「助太刀に来ました」「や。これは意外だな」「まあ、気まぐれというやつです」 魔法を禁じられているので、軽装の必要はない。パティほどごつくないが、プレートメイメイルに身を包む。「ハイプライド卿、手強いでしょうね」「無論だ。私の尊敬する、最高の騎士だぞ」 兜で見えないが、きっと自慢げな表情だろう。「作戦は?」「臨機応変!」 やれやれ。ノープランか。 天を見上げる。もうすぐ、陽が頂上に登る。木刀を構え、試合開始を待つ。「はじめ!」 副団長殿の掛け声で、両軍が雄叫びとともに突撃する。 しかし、ハイプライド卿、ここで左右に軍を展開してきた! 包囲する気か!「包囲されます!」「わかっている! 中央突破! やられる前にやれだ!」 青軍は、そのまま中央突破を目指す。 しかし、中央が固い。パティのような、重装戦士で固めている! 騎士団長だものな。自軍兵の特徴は把握しているか! そして、まずいことに包囲されつつある。「うおおお!」 何を思ったか、単身突撃する総大将。 あっというまに、叩きのめされるが、それでも立ち上がる。副団長から試合終了の宣言はない。続行だ!「諸君! 愛するものはいるか! 守りたいものはあるか! 今、君らのそれが、危機にさらされている! 立ち向かえ! 敵は一点、ダディーノ・ハイプライド! 殺到せよ! 諦めるな! 大将首を取れば、すべてが終わる!」 混乱していた青軍が、立ち直った! ハイプライド卿めがけて、雲霞のように突撃する! あと少し! あと少しで壁に穴が開く!! しかし、赤軍は優秀であった。鬼気迫る青軍の復活に一度怯んだものの、ハイプライド卿の叱責で、包囲と殲滅を再開した。「そこまで! そこまでー!!」 副団長からの制止。 青軍の多くは地面に打ち倒され、明らかに赤軍有利であった。「赤軍の勝利!」 項垂れるクッコロさん。心中、察するまでもないだろう。彼女の挑戦は、終わった。「父上、完全敗北です」 兜を脱ぎ、父に頭を垂れる。「クッコロ」「はい」「たしかに、お前自身に、戦才も軍才もない」 悔しさを飲み込むように、
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第五十九話 魔導剣士ロイ、デエトする

 今日も、芳しい依頼なし。 そんなわけで、「青い三日月亭」でコーヒーなど飲んで茶話していると、からんからんとドアを開けて、珍客が訪れた。「やあやあ! やはり、この店にいたか、ロイ君!」 その人こそ、いつもの訓練着ではないが、お嬢様然とした衣装に身を包んだ、クッコロさんだ。「これはどうも、こんにちは。いかが致しました?」「うむ! デエトしよう!」 あまりに突飛な提案に、しばし固まる。「……はい?」 我ながら、きっと相当間抜けな表情をしていたに違いない。「デエトだよ、デエト! まさか、知らぬのか?」「いえ、デートぐらいは存じておりますが、そのまた、どうして急に」「君に惚れた! それ以上の理由がいるかい? ぜひ、婿に迎えたいと思っている!」 な、なんですとー!?「いえ、あの、その……。そうだ、ハイプライド卿のお許しが……」「父上なら、大変乗り気だ! 『彼は見込みがある。将来性に素晴らしいものを感じる』とのことだ!」 ひょええええ! 退路を塞がれた!「しかし、その、心の準備というものがですね……」「私では、不服か? 私は、そこまで魅力がないか?」 入店し、前かがみになり、視線を同じ高さにするクッコロさん。 吸い込まれそうな、美しい碧い瞳。化粧も施しており、近くで見ると、この上もない美人だ。その清楚なお嬢様スタイルと相まって、ドキッとしてしまう。「いえ、魅力がないということは、決して……」「ふふっ。顔が紅いぞ。どうやら、私の出で立ちは合格のようだな。入店して、何も頼まないのも失礼だな。ロイ君と、同じものを頼む」 「かしこまりました」と、厨房に消えていくバーシ。 クッコロさんは対面に腰掛け、にこやかにこちらを見ている。「で、返事はYESかな? NOかな?」 ……困った。断る理由がない。そもそも、彼女とのデートが嫌なわけではない。ただ、唐突すぎで焦っているだけで。「兄貴、オレ、ちょーっと一緒に、買い物してほしいんすよね」 唐突に、義妹が会話に割って入ってきた。「なんだ、サン。何を買うんだ?」「そ、それは……出かけてから決めるっす!」 何がしたいんだ、この子は。「ロイくん。私も、お洋服の買い物に付き合ってほしいかな」 ナンシアも、会話に乱入してくる。「その、見ての通り、取り込み中だ。明日で
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第六十話 魔導剣士ロイ、えらいことになる

 昨日は、なんだか安眠できなかったので、早く目が覚めてしまった。 なんとも、暇だ。暇なので、いつぞやの遺跡でアー&ウーン兄貴たちからもらった、巻物とにらめっこしている。 そして、魔が差した。読んでみようと。 とはいえ、爆発魔法なんか仕込まれてたら危ないし、動物に変化などしても困る。 というわけで、「これから巻物の実験をする。もしも動物などになっていたら、師匠に相談してくれ」と書き残し、巻物一枚を手に、開けた場所に出た。 とりあえず、この魔法文字自体は読めるんだ。ただ、そこから導き出されるものがわからない。ゆえのジャンクだ。 文字を、読み上げていく。すると、なにやら俺の体が、柔らかな光に包まれた。 ……これだけ? なんか、大仰な準備をした割に、しょっぱいな。 さすがジャンク。こんなものか。 ……と、これで終わればよかったのだが。 ◆ ◆ ◆「ないィィィィ!」 「蒼い三日月亭」の厠の中で、黄色い悲鳴をあげる俺がいた! どうしよう? どうしたらいいんだ!? いや、どうしようも何も、当初の用事を済ませるほかない。 要領は、大と同じなんだ、うん。 ◆ ◆ ◆「ええーっ!」 朝の食堂。皆が素っ頓狂な声を上げる。「やー、これはこれは。ロイちゃん爆誕ですか」 なぜか、ほくそ笑むクコ。こいつ、この状況を楽しんでやがる。「しかし、外見はあまり変わってませんね。女性体型になってますけど、身長なんかはそのままです」 パティが、顎に手を添え思案。兜のせいで、どんな表情をしてるのか、伺いしれないが。「ていうか……イケメンですよね。イケメンガール!」 大興奮のクコ。だから、なんでそんな嬉しそうなの?「ロイくんが女の子になっても、お姉ちゃんの気持ちは変わらないからね」 なんか、ナンシアに慰められた……というより、妙な宣言を受けた。気持ちは変わらないって、何が?「オレもっす! 姉貴になっても、お慕いするっす!」「お、おう……」 変わらず接してくれるのはありがたいが、なんかもにょるな。「解呪は試されましたの?」 ごく当たり前の提案をする、フラン。「やったやった。ダメだった」 腕組みして、ため息を吐く。「服もなあ。肩が余り気味だし、尻はきついしで……」 それを聞き、なんかいい笑顔で顔を見合わせる
last updateLast Updated : 2026-07-22
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