All Chapters of 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!: Chapter 21 - Chapter 30

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第二十一話 魔導剣士ロイ、温泉を楽しむ

 バーブル王国は、東に海を持つ沿岸都市で、街中に潮の香りが漂っていた。話に聞いた通り大変活気に溢れており、ルンドンベアをさらに上回る盛況ぶりだ。何の祝いか、祭も開かれている模様。 街並みは、異界知識でいうところの、和洋折衷という言葉がよく似合う。 我々冒険者は適度な宿を取り、三日ほど逗留する予定となっている。予想外の襲撃があった結果、臨時に危険手当が支給されており、懐も温かい。「兄貴、あれ旨そう!」「おいおい、さっき別の串焼きを食べたばかりだろう?」「だって、せっかくの異国じゃないっスか! 食い尽くさなきゃソンっスよ!」 サンは、自由行動になってからというもの、食べ歩きに余念がない。まあ、一週間ぶりの羽のばしだしな。沿岸都市だけあって、大通りには、ルンドンベアではお目にかかれない海の幸が溢れており、かくいう俺たちも、ホタテと烏賊の串焼きを手に歩いている。もっとも、先程述べたように、義妹はすでに両方平らげてしまっているが。「宿はどこにします?」 烏賊を食みながら、クコが尋ねてくる。そうだなあ。「俺のカンでいいか?」「おー! 兄貴のカンは確かだからな! あの宿屋選んだのも、兄貴なんだぜ」 はっはっはっ、褒めても何も出ないぞマイシスター。とはいうものの、期待にはきちんと応えねばな。 鼻と目を利かせ、次なる宿を吟味する。すると、一軒の宿屋に、ビビビとセンサーが反応した。 木彫りのカジキマグロの看板を下げた店で、『輝く鱗亭』と屋号が書かれている。「ここ、どうかな?」 皆を見回すが、特に不服はないようだ。ではここにしよう。「ところでロイさん、烏賊の匂いって精」「黙れ」 宿に入り際、烏賊を食べ終わったクコの下ネタを、笑顔で阻止する。異国まで来て、やめなさい。ほんとに。「らっしゃぁい!!」 店内に入ると、えらく威勢のいい大声が響く。声の主は、角刈りにハチマキ姿がよく似合う、ガタイのいいおっちゃん。「宿を六人分。空いてますかね? 俺と、あと一人はシングルで」「はい、大丈夫でさァ」 とりあえず、空き部屋は問題ないようだ。やっとゆっくりできるな。夜まで、旅の疲れを癒そう。「うちには温泉がありやすんで、ぜひ入ってみてくだせえ!」 ほほう、温泉とな? 
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第二十二話 魔導剣士ロイ、海の幸に舌鼓を打つ

 視点は、ロイに戻る。「みんな遅かったな」 女性陣が食堂にやって来たので、声を掛ける。皆の会話は、パティの指摘通り丸聞こえだったが、そこは言ってやらないのが、優しさというものだろう。パティといえば、湯上がりにも拘らず、すでにいつもの鎧姿だが、蒸れないのだろうか。外はすっかり日が落ちている。「お待たせしました。お食事をいただきましょう」 すました顔で、着席するフラン。他のメンバーもそれに続き、ハチマキ姿の若い男性従業員が注文取りに来る。いつもの宿屋の女将さんも、従業員雇えばいいのになあ。一人で切り盛りするの、大変だろうに。「ここは、何がおすすめかな?」「そりゃあ、何と言っても魚介類ですね! この時期だと、アジ、ハモなんかが旬ですよ」 アジは内陸育ちの俺でも名前ぐらいは耳にしたことがあるが、ハモというのは耳慣れぬ魚だ。皆も興味深げな様子。「じゃあ、それと酒を」「畏まりました」 店員は笑顔でオーダーを記し、厨房に引っ込んでいく。皆で旅の思い出など話していると、体感十数分ほどして、先程の彼が料理を手に戻ってきた。「お待ちどう様です。アジの刺身です」 刺身とな? 皿の上を見てみれば、謎の白い糸のような細切りの上に、生魚の切り身が、そのまま乗せられているではないか。しかも、付け合せに謎の黄色いペーストに、黒い汁。それとは別に、口の狭まった壺のような陶器と、同じ土から作ったであろう、小さな陶器の器のおまけつき。とどめに、フォークの他に、先の細まった謎の黒い木の棒が二本。何なのだ、これは! どうすればいいのだ!?「召し上がり方は、ご存じですか?」「いや、バーブル料理は初めてなもので」「本来はこちらの箸で召し上がるのがおすすめなんですが、無理せずこちらのフォークをお使いください。アジの刺身には生姜を載せて、醤油をつけて召し上がってください。こちらの白いのはツマといって、大根の細切りです。米酒がとても合いますよ!」 彼が順に、棒、フォーク、切り身、黄色いペースト、黒い汁、白い糸、陶器を指して説明してくれる。困惑は消えないが、まあ何とかなるだろう。 さっそく言われた通りに切り身に生姜と醤油をつけ、口元に運ぶが……ううむ、夏場に魚の生食というのは勇気が要るな。ええい、ままよ!  思い切って咀嚼する
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第二十三話 魔導剣士ロイ、祭を楽しむ ―前編―

「兄貴ー、一緒に祭を見に行こうぜー」「すまんな、ちょっと図書館で調べ物がしたい。誰か、他の者と行ってくれ」 朝、皆でアジの干物に加え、味噌汁なる謎の液体と米の飯を食んでいると、義妹《いもうと》が祭見物に誘ってきたが、申し訳ないけど断らせてもらった。 というのも、いつぞやの幽魔族なる謎種族の男と、ついでに「黒魔の宝玉」のことが気になったからだ。「えぇ~……兄貴が行かないなら、オレも行かないっス。一緒に図書館行くっスよ」 ううむ、仔犬のようなやつだな。まあ、余暇をどう過ごそうと、俺が口出しすることではないが。「そうか、じゃあ一緒に行こう。他の皆はどうする?」「何について、調べるんですか?」「幽魔族と、『黒魔の宝玉』についてだな」「確かに、ちょっと気になりますわね。私も一緒に調べますわ」 パティが質問して、フランが同行の意を示す。結局、皆それに付和雷同して、全員で図書館へ行くことになった。  ◆ ◆ ◆ というわけで、バーブルの図書館にやって来た。外側は石造りで、内部の書架には種々様々な巻物や本が置かれている。 調べものの描写などしても退屈なだけなので、結果だけ述べると、以下のようなことがわかった。 まず、幽魔族はバーブルのさらに東、海を超えた地域「オウカ」に住むレアな種族で、半霊体とでもいうのか、体重がないという大変変わった存在らしい。 魔力を"視る"ことができるそうで、俺らの車両の近くにあった「黒魔の宝玉」を収納した車両を、一直線に目指してきたことに得心がいった。 ただ、なぜあの隊商が、目当ての物を輸送していると把握できたのか、それはわからない。 次に「黒魔の宝玉」だが、やはり魔王の魂を封印したものらしい。どこでこんなもん手に入れたんだ、モロオさんは……。 魔王の名は、「ザファー」。補助的な宝具、「天魔の杖」と「降魔の書」が揃えば、儀式によって魔王が復活するらしい。縁起でもない。 ついでに、いつぞやの遺跡で入手した巻物の情報でもないかと調べてみたが、これに関しては芳しい結果は得られなかった。 調べ終わっ
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第二十四話 魔導剣士ロイ、祭を楽しむ ―後編―

 大通りに出ると、紙製のランタンを多数並べて吊るし、灯りをとりながら、祭に興じる人々がまだたくさんいた。 腹が減ったし、とりあえず何か口にしたいところだな。「なんだか、面白い焼き物の屋台がありますよ」 ナンシアが袖を引っ張る。 屋台を見ると、鉄板の上でドロリとした液体に千切りキャベツや、肉を乗せて焼いていた。片面が焼けると、コテを二つ使って器用にひっくり返すのが面白い。見事見事。 店の看板を見ると、「お好み焼き」と書いてある。また、奇妙な料理と遭遇したようだ。横にはイートインスペースがあり、老若男女がこの料理とエールを楽しんでいる。「ご主人。これはどういう料理かな?」「へい、お好み焼きっていいまして、小麦粉をといたものにキャベツや豚肉、イカなんかを乗せて食べる料理で」「具は選べるんですかね?」「へい、そりゃもう! お好み焼きってぐらいですから!」「だそうだ。みんなは何を入れてもらう?」 オーダーをまとめると、烏賊が六、豚が一。義妹は、豚と烏賊両方食うつもりらしい。呆れた食欲だな。 というわけで注文を伝えると、店主が威勢の良い返事とともに溶いた小麦粉を流し込み、具を載せて焼き始めた。やや経つと、香ばしい匂いが立ち込めてくる。これは食欲を唆るな。そして、華麗なコテ返し。サンが拍手を送る。 ややあって、ソースを塗ったお好み焼きが、皿に乗せられて出てきた。お好み焼きの上では、謎の茶色い物体が、ゆらゆらと踊っている。緑色のパウダー状のものと、細切りにされた紅色の物体も不思議だ。「何だかファンタスティックな料理ですねえ~」 踊る物体に、興味津々のクコ。「早速食べてみようじゃないか。みんな美味しそうに食べてるし、きっと旨いぞ」 地元民のように箸が使えないので、フォークで切り取って、口に運ぶ。 ほう、これは濃厚なソースの旨味がまず口を満たし、続いて小麦粉ベースの土台がそれを受け止め、咀嚼すると烏賊とキャベツの旨味が溢れる! ううむ、このふわっとした土台の感触、実に不思議。 何か、隠し味が仕込まれていると思うのだが、これが見破れない。悔しいな。ちょっとだけ「やあ」と主張する、酸っぱ辛さもいいアクセントだ。どれがその正体だろうと注意深く食べてみたら、紅色の物体が仕掛けのようだ。「店主、このふわっとした感じはなにか隠し味が
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第二十五話 魔導剣士ロイ、激闘する ―前編―

 苦しいことも楽しいこともあった、バーブルの旅からルンドンベアに帰還した翌日。いつもの青い三日月亭で、皆と朝食を食んでいると、不意にガタガタという音が響く。すわ地震かと思いきや、震源は対面に座している、フランの貧乏ゆすりであった。「どうした? 珍しいな、そんな行儀悪」「いえ……何でもありませんわ」 注意されて一旦は止めたが、少し経つとまた貧乏ゆすりを再開する。ううむ、落ち着いて飯が食えないではないか。「ほら、最近アンデッド倒してないじゃないですか」 右横に座っているパティから耳打ちされる。ああ、なるほどね。ストレス溜まってんのか。意図的に遠ざけてたからなあ。「よし、フラン! 今日は一発アンデッド退治と行こうじゃないか!」「行きましょう、行きましょう!」 身を乗り出して、物凄い食いつきぶりだ。こっちまで鼻息が届きそうだよ。また狂態を見せられるのかと思うとアレだが、メンバーのストレス発散も、リーダーの努めだからな。 ◆ ◆ ◆ そのようなわけで、依頼人のいるルンドンベアから二日ほど歩いた村を経由して、依頼票に書かれた古城にやって来た。 蔦が這い、ところどころ崩れており、実に不気味。この城に、動き回る白骨死体が湧いたのだという。廃城であり一文の価値もない物件だが、近隣住民が怯えてしまって仕事にならないとのこと。「さあ! ぶちのめしましょう、そうしましょう!」 王都から、こんな調子のフラン。「どう、どう! 隊列を組むぞ。フラン、パティ、サンが先行して、中衛がクコ、殿は俺とナンシアが持つ。これでいいな?」 荒馬をなだめるように神官サマを抑えながら、隊列の提案をする。本当は、彼女は後衛に回してナンシアと入れ替えたいのだが、どうせ突撃するしなあ、このヒト。まあ、もともと彼女のストレス発散のために受けた依頼だし、好きなだけ暴れさせてあげようじゃないの。 全員で扉を押すと、軋みながら重々しく開く。松明で照らしつつ侵入すると、中は埃臭く、蜘蛛の巣があちこちに張られていた。注意すべき点は、ところどころ蜘蛛の巣が壊されているということ。やはり、ここで屍体が動き回っているというのは本当のようだ。 虱潰しに城内を探索し、クリアしていく。ううむ、緊張感を覚えた割に、一向に死霊と出くわさないではないか。などと拍子抜けし
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第二十六話 魔導剣士ロイ、激闘する ―後編―

「散開!」 全員の武器に賦術火炎刃をかけ、四方に散った。 分散したのは、魔法でまとめて攻撃されるのを警戒したからだ。杖を持っているというのが、非常に怪しい。あとは、多方面から攻撃を加えることで、防御を難しくするという狙いもある。「厄禍呪言殺……!」 仮称・ワイト王が重々しく暗黒魔法を唱える。禍々しい字面の魔法文字を避けられず、命中すると、左手先がただれ、腕も焼けるように痛む!「ぐぁッ!!」「命活癒術草!」 クコの魔法によって痛みが一気に引き、ただれも癒える。我々も燃える矢弾で攻撃を加えるが、どうにもこいつは耐久力が高過ぎる。「痛撃裂殺痕《ペイン・アート》……!」 今度はクコに、不気味に鈍く紫色に光る、奇妙な模様が襲いかかる! 命中した左半身の皮膚が裂け、悲鳴とともに激しい血しぶきが上がる!「クコ!!」「命活癒術草!」 自らの傷を魔法で癒やすクコ。彼女の触媒と体力も無限ではない。早期決着が必要だ。 魔法と同時攻撃を行ってくる王の左手を躱しつつ、矢を叩き込む。 王も消耗しているはずだが、何ぶん骸骨なので疲労の度合いがわからない。ただ、矢弾が命中した白骨が徐々にひび割れており、ダメージが確実に蓄積されていることは伺える。 いっそ撤退も選択肢のひとつかも知れない。皆の命を守るのがリーダーの役目だ。逃げることは恥ではない。 いや、弱気でどうする! 勇気を振り絞れ!! 険しきを冒す者、それが冒険者ではないか!「うおおおおおッ! 雷衝撃滅波!!」 クコの消耗を考え、意を決して短期決戦を挑む。腰のバインダーから魔導書を手に取り、必殺の思いを込めて十八番の魔法を叩き込んでやる。 眩い雷光が王を焼く! すると、ついにやつの左手が爆ぜ、砕け散った!! いける、いけるぞ!!「小癪な……!  兇貪暴黒牙……!!」 王の呪言が、鋭い牙を持つ漆黒の巨大な顎を生み出す! そいつが、パティの鎧を噛み裂いた! 魔法に対しては、基本鎧というのは役に立たない。彼女のような重戦士にとって、最も厳しい攻撃になる。 悲鳴を上げるパティに、ク
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第二十七話 魔導剣士ロイ、師匠を訪ねる ―前編―

 あの魔城から帰還した日の夜、俺達は例の宿で、夕食を食んでいた。帰路は、疲労困憊した体に鞭打って村経由で戻り、やっと人心地つけた次第である。とにかく肉! 肉を食って力をつけたい! 今日ばかりは、腹ペコ・サンの同類だ!「ロイさん、あの杖どうするんですか?」 同じく、胃袋に必死に肉を詰め込んでいるフランから、疑問が挙がる。件の杖は、放置しておくのもあれなので、回収して手元に置いてある。「それについて、丁度いい相談相手を考えてある」 ジューシィなチキンの塊を、ごくんと飲み込む。「今回、俺たちの力不足を実感した。よって、修行をして鍛え直したいと思う!」「修行っスか?」 義妹が、眉をひそめる。お前、そういうの嫌いっぽいもんな。「そう、嫌そうな顔をするな。このへんで。地力を底上げしたいんだ。俺の師匠に、みんなを会わせたい」「兄貴のお師匠さんっスか?」 マイシスターも少し興味が出たようで、顔を覗き込んでくる。「ボク、ちょっと修行楽しみです」 修行が楽しみとは、マジメちゃんだな。君のそういうところ、好きだぜ。「うむ。明日、向かうとしよう」 チキンのおかわりを女将さんに頼みながら、皆に告げる。 明日も早い。食事が終わったら、今日はゆっくり休もう。 ◆ ◆ ◆ 翌朝、俺達はルンドンベア近郊の森を進んで行く。この先に、師匠のお住まいがあるのだ。「この森、鳥の鳴き声とか蝉の声が、全然しませんね」 隣を歩いていたクコが、耳を澄まし音を拾おうとする。「通称を『静かの森』と言ってな。ここの生き物たちは、不思議なぐらい静かなんだ」「変わった所ですね……」 さすがのエルフでも、こんな森は珍しいのだろうか、キョロキョロとあたりを見渡している。「危険な生物も特にいないから、安心してくれ」 さらに森を進んで行くと、ログハウスが一軒建っている、開けた場所に出た。「着いたぞ。ここが師匠のお住まいだ。はて、『兄貴』はいないのかな……?」 『兄貴』は、どこかほっつき歩いているのだろうか。ともかくも、ドアをノック。「師匠、ロイです! お話があり、戻りました!」 すると、一拍空いて、ドアが誰に操作されたわけでもなく、スッと開いた。一同が、驚きの声を上げる。 中に入ると、薬品の臭いが立ち込める中
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第二十八話 魔導剣士ロイ、師匠を訪ねる ―後編―

「よっこいせ。待たせたね。彼の師である、ローズマリー・ベラドンナだ」 皆が挨拶を交わす。どうでもいいけど、よっこいせは年寄り臭いです、師匠。いやまあ、実際百近いんだけど。「しかし、ロイ。お前ここを出る時、漢臭いパーティーを作るのだ! とか、息巻いておらなんだか?」「いえその、まあ色々と、紆余曲折ありまして」 思わず目が泳ぐ。ううむ、どうにも師匠には敵わない。ヤカンから湯気が吹き出したので、皆のために茶葉の入ったティーポットに湯を注ぐ。「で、どの娘さんを嫁に娶るんだい?」「あっづ!!」 師匠の唐突な一言に、思わずヤカンを落としそうになり、既のところでキャッチした……はいいが、左手を火傷してしまった。「師匠! 茶を淹れてるときに、変な冗談言わないでください!」 クコの治癒魔法を受けながら、師匠に苦情を入れる。「すまん。そこまで動揺するとは、思わなんだ」 彼女が、申し訳無さそうに詫びた。本当に、この人には敵わないな。 治療も終わったので、改めて茶を注ぐと、ハーブティーの芳しい香りが食卓に漂う。「お前のことだから、ただ顔見せに帰って来たわけではなかろう?」 全員に茶を注ぎ終わり着席したのを見計らい、師匠が問うてくる。「はい。ひとつは魔物相手に大苦戦をしてしまい、力不足を痛感したため、改めて修行をしに戻りました。もうひとつは、これです」 荷物から例の杖を手渡すと、師匠はそれをまじまじと観察する。「これは、天魔の杖ではないか。どこで、こんな代物を手に入れた?」 やはり、ご存知でいらっしゃった。彼女の問いに、古城での経緯を説明する。「ふむ。そんなことがなあ。よし、しばしお前たちの面倒を見てやろう。杖についても、任せておけ」「ありがとうございます。ところで、『兄貴』の姿が見えないようですが?」「食料を採りに行ってるよ。噂をすれば、ほら」 屋外から、地響きが聞こえてくる。俺と師匠を除いた皆が、地震かと顔を見合わせていると、小屋の入り口が開かれ、向こうから巨大なハムスターがこちらを覗く。一同、これにはびっくり。「ロマちゃん、ただいまなのーだ。ごはんがいっぱい採れたのーだ!」「おかえり。紹介するよ、彼はハムロータ。私の使い魔さ」「お客さんなのーだ! よろしくなのーだ! けへっ!」 彼は、
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第二十九話 魔導剣士ロイ、カレーを振る舞う

「おお、久しぶりだねえ、この匂い!」 師匠が、嬉々として着席される。皆もそれに続いた。「ロイさん、いい加減種明かししてくださいよ。これなんていう料理なんです?」「ああ、勿体つけたつもりはないのだけどね。カレーというスープ料理だよ。俺の異界知識にあった料理なんだ」 クコの問いに答えながら、皆のボウルにスープをよそう。「では、頂くとしようか」 俺が着席したのを見て、師匠が音頭を取る。「カラーイ! ウマーイ!」 新たな味覚に、義妹は大騒ぎである。「これは面白いですねえ。新しい調合に使えるかも知れません」 クコも、感心することしきり。「しかし、夏場にこれは汗が止まりませんね」 手で、ぱたぱたと自分を扇ぐパティ。鎧の上から、効果があるのだろうか。「それがいいんだよ。夏場には、辛いものがいいんだ」 我ながら上出来だ。ほっこりしたじゃがいも、とろけるたまねぎと人参の甘み。それに辛味が一体となって口腔を刺激する。 ナンシアの焼いてくれたパンが、またふかふかで芳しく、柔らかな触感。ほのかな甘味がカレーの辛さにマッチする。パティじゃないけど汗だくだ。美味い! 辛い! 美味い! 辛い! それがいい、そこがいい。「相変わらず、いい腕前だね。いや、腕を上げたんじゃないか?」「師匠にそう仰っていただけますと、頑張って皆と作った甲斐があります」 太鼓判も頂けて、満悦至極。 カレーとパンはすっかり皆の腹に収まり、本当は残りを一日寝かせたかったのに、鍋が空になってしまった。「さあ、明日からビシバシ鍛えるからね。今のロイたちなら、あたしの上級特訓に耐えられるだろうさ。今日はゆっくり休みな」 皆が別室で湯浴みしている間、調理器具と食器を洗う。俺は最後に湯をいただこう。 明日から大変だな。みんな音を上げなきゃいいが。 ◆ ◆ ◆「みんな、よく一ヶ月頑張ったね。あたしが教えられることは、もうないよ。この先は、自力で切り開きな」 修行の方はつつがなく終わり、皆で、師匠と兄貴の前に整列する。修行の光景など語っても、別に面白くないからな。それにしても全員、心なしか精悍な顔つきになった気がする。「じゃあ、最後に修行の成果を見させておくれ」「「はい!」」 師匠の言葉に、皆、勢いよく応える。「では、一番槍ロイ行きます! 
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第三十話 魔導剣士ロイ、国王に謁見する

 昼下がりにルンドンベアへ戻って来ると、相変わらずの活気に懐かしさを覚える。早速王城へと足を運ぶ。「これが王様の城かー。でけー」 サンが巨城を見上げながら感心する。ここへは初めて来るが、確かにでかくて立派な城だ。深い堀に跳ね橋を降ろし、八基の物見塔を角に持つ、石造りの堅牢な城壁。城壁から覗く宮殿には、豪奢なステンドグラスが使われているのが見える。 門に近づくと例によって門衛たちに足止めされるが、書状を見せるとあっさり謁見を許可してくれた。凄えな師匠。 天魔の杖と腰の物を預け、兵士の案内で城内の廊下を進む。「しばし待て」 大扉の前で、兵士に待機を命ぜられる。まあ、すぐに会えるとは思ってなかったけどね。待たされること、体感三十分。大扉がやっと開くと、身なりのいい、すだれ頭の男が中から出ていき、会釈もなく目の前を通り過ぎていった。この国の重臣か何かだろうか。感じ悪いなあ。「入れ」 少し間があって、開かれた扉の中から衛兵に声をかけられた。 縦列を組み赤い絨毯の上を、粛々と歩き、今度は横に並んで、皆で跪く。「ラドネスブルグ王、イーゲン様であらせられる」 近衛兵が王の名を告げる。「ロイ・ホーネットと申します。陛下に置かれましては、大変ご機嫌麗しゅう……」「そういった口上はよい。余は気にしない質だ。面を上げい」 命に従い、王に顔を向ける。玉座には、遠目でも仕立ての良さが分かる赤マントを纏い、王冠を被り立派なヒゲを蓄えた、絵に描いたような老王が鎮座している。王というだけあり、見ているだけでプレッシャーで汗が滲んでくる威厳だ。 脇には、重臣と思しき五十代ぐらいの男が、二人立っている。かたや精悍なオールバック、かたや小太りでシェブロン髭のスキンヘッド。「書状を」 王の命で、家臣が俺から預かった書状を兵に手渡すと、彼はそれを王の許に運ぶ。「ほう、ベラドンナ殿が……。ふむ、相わかった。天魔の杖は、我が国で責任を持って保管しよう。功績を上げた者を、手ぶらで帰らせるわけにも行かぬ。褒美を授けよう」 王が兵を呼び寄せると、耳打ちする。その兵は一礼して退出していく。「大儀であった、下がるが良い」 再び王に一礼して、謁見の間を退出する。いやはや、緊張したあ~。「こちらが報酬だ。受け取れ」 廊下に出ると、兵士
last updateLast Updated : 2026-07-22
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