All Chapters of 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!: Chapter 11 - Chapter 20

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第十一話 魔導剣士ロイ、運命的な出会いをする? ―前編―

 前回の冒険で手に入れたお宝のうち、巻物十巻と結構な量の宝石を貰った。ただこの巻物、魔法文字で何か書かれているし、魔力も感じるのだが、どう鑑定しても効果がわからない代物であり、かといって歴史的な価値もないということで、半ばジャンク扱いである。 こんな得体の知れない物品を貰っても困るが、宝石の方は換金したら結構な額に化けた。やはり、遺跡は当たるとでかい。 冒険者が金を手に入れたらやることと言えば、なんと言っても「贅沢」。何ぶん明日をも知れぬ身なので、後生大事に蓄財するという考えが薄い。帰ってきたらおしゃれな装備を発注して、夜は酒場の客に酒を奢って、大宴会に興じた。 一週間ほどだらだら過ごしていたが、そろそろ仕事しないとまずいんじゃね? という自堕落かつ消極的な理由から、久しぶりに早朝の告知所にやって来た次第。 ちなみに、ついに全員分の徽章も出来上がり、俺もサブ武装として銀製のかっこいいショートソードを誂えた。他の皆も、ちょいと装備がレベルアップしている。「さて、今回の依頼は……と」 依頼票を眺めていくと、連続殺人の起きている村の事件を解決してほしい、という旨のものがあった。なんだかミステリーのかほりがするじゃあないか。 報酬が高いわけでもないが、なんとも気になる案件だ。他のもざっと見たところ、今日の案件は全体的に渋いようだし、これでどうだろうか? と言うと、わりとあっさり全員の承諾が得られた。 アンデッド討伐依頼があったら、もっとこじれたかもしれない。 旅支度を整えるため一旦宿に引き返したところ、「兄貴、ちょっと待ってほしいっス」と、義妹に呼び止められてしまった。「へへへ。実はオレ、最近占いにハマってるんス。今日の運勢を占ってみるっス」 あのサンが、なんとも乙女チックな趣味を身に着けたもんだ。様子を見守っていると、小袋からサイコロ五個を取り出してテーブルに勢いよくばら撒いた。「むむむ……見えたっス!」 彼女はしばらく、真剣な面持ちでサイコロを見つめていたが、面を上げる。「今日、オレらは運命的な出会いをするっス」 自信満々に、サムズアップするサン。何だかすごい自信だが、ホントかね? まあ当たるも八卦、当たらぬも八卦って、異界でいうそう
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第十二話 魔導剣士ロイ、運命的な出会いをする? ―中編―

「ようこそ、おいでくださいました」 依頼票片手に、他の民家よりもやや大きい村長宅に行くと、白髪交じりの初老の村長に、清涼な香りのする茶を出され歓待された。こいつはラベンダーというハーブの香りだ。遠出先で喉の潤いは実にありがたい。「ありがとうございます。早速ですが、詳しく話をお聞かせいただけますか?」 話を促すと、彼は暗い面持ちで語り始めた。「今から五日前のことです。ダンナーとツィマー夫妻の家が夜に襲われ、翌朝彼らは惨殺死体となって発見されました。その荒らされ方は凄惨なもので、体のあちこちが千切られていたのです」 震える手で、ティーカップを置く村長。話に聞くだけでもえげつない光景だ。しかし、それでも詳しく話を聞かなければならないのが、心の痛むところである。「二人は元冒険者で、引退したとはいえ、生半可な相手に遅れを取るようには思えません」「駐在の衛士は、これについてどのような見解を?」 気持ちを落ち着けるために、ラベンダーティーを一口飲む。鼻腔に良い香りが満ち、心が鎮まっていく。村長の心遣いが実に染み渡るな。「金品に手を付けていないので、物取りの犯行ではない、殺人狂の行いであろうと言っています。この村に、そのような恐ろしい者がいるとは思いたくないですが」 彼も茶を飲み、一息吐く。「三人目の被害者であるガイシャーも同様に、酷い殺され方をしておりました。二日前のことです。やはり夜に自宅で襲われ、無惨にも……」 目頭を押さえ、感情を堪える村長。村思いのいい人だな。これ以上被害を増やさないために、尽力したい。「最近何か変わったことはないですか?」「そうですね……」 しばし腕組みをして、仰ぎ考えを巡らせていたが、自信なさそうに答える。「最近でもないですが、去年疫病で多くの者が亡くなり、人手を補うために入植者を募りました。十人の入植者が集まりましたが、幸いにも皆いい人たちで、殺人を犯すようには見えません」 ふうむ。これは現場百回と言うやつで、現場を見てみないとなんともいえんなあ。「現場を見せていただいても?」「はい、自由にご覧ください。案内の者をつけましょう」 では、現場へGO! ◆ ◆ ◆ 村の案内役として、一人の若い村娘をつけてもらった。若いと言っても、俺たちより年上の十九歳だが。名をナンシアというそうな。 百八十センチ
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第十三話 魔導剣士ロイ、運命的な出会いをする? ―後編―

 視点は、ロイから移る。 夜の帳が下りる頃、民家の中で、二人の男女が口論をしていた。「兄さん! なぜ、父さんの遺志を無駄にするの!?」 若い娘が声を上げる。壁のランタンに照らされたその姿は、昼間ロイを案内したナンシアのものである。「そんなだから、親父もお前も一族の恥さらしと呼ばれるんだ。平和主義の親父のせいで、俺たちがどれだけ蔑まれたと思っている!」 兄と呼ばれた男は、妹に似て整った顔立ちをした、ナンシアよりひとつふたつ上と思われる年齢の風貌。「親父亡き今、俺を阻む者はいない。ずいぶん我慢を強いられてきたんだ、好きなようにやらせてもらう! 協力できないと言うなら、せめて黙って見ていろ」 美しい顔が凶相に歪む。その邪な相貌に、ナンシアは戦慄した。 ◆ ◆ ◆ 視点は、ロイに戻る。「それにしても、蒸しますね~」 カンテラ片手に夜警の最中、手でぱたぱたと顔を扇ぎながら、クコが零す。巡回は、俺とクコ、フランとパティ、あとは一人のほうが何かと小回りが利く、サンという編成で行っている。「そうだなあ。氷結魔法でも、一発ぶっ放したい気分だな」「あ、そうだ。兎は性欲で、常に頭がいっぱいらしいですよ、ロイさん!」 何なんだよ唐突に。知らんがな。などとどうにも弛緩した会話を繰り広げていると、突如三十メートルほど向こうにある民家の扉をぶち破って、二人の男女が飛び出してきたではないか! すわ何の騒ぎかと慌てて駆け寄ってみれば、片方の人物は昼間のナンシアさんときた。これは一体どうしたことか。村人同士の喧嘩にしては、扉があまりにも見事な吹っ飛び方をしている。「兄を捕まえてください! 兄が連続殺人犯です!」 衝撃の告白。それと同時にナンシアさんの鋭い蹴りが男を襲うが、彼はこれを前腕で受け切る。 長いスカートのせいでわかりにくいが、この蹴り、ちゃんと力の流れが乗った玄人の蹴りだ! 彼女もどうやら只者ではない模様。ミステリーな話かと思っていたら、実に急転直下な展開だ。 カンテラを地面に置いて抜剣し、彼女に加勢する。純治癒術師のクコは、後方支援だ。 ナンシア兄の拳が、こちらに襲いかかってくる! 腕を交差させて受けるが、重すぎてガードが弾き上げられてし
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第十四話 魔導剣士ロイ、運命的な出会いをする!

 村人総出で夜中の広場に集まり、人狼兄の処遇についての話し合いとなった。 篝火の光に、厳しい表情の人々が映る。人狼兄の名はタクラム・ルガールというらしい。てことは、妹さんのフルネームはナンシア・ルガールか。 当のタクラムはといえば、俺たちの手で厳重に束縛されても半獣化を解かず、不敵な表情を浮かべながら地べたに転がされている。 ナンシアさんはタクラムの肉親ではあるが、今しがた闘ったこともあり、発言力はないが連座は免れているといったところ。彼女の方は半獣化を解き、村娘モードに戻っている。 村人とナンシアさんの話、そして当のタクラム本人の自白を総合すると、タクラムとナンシアさん、そして彼らの父は去年村にやってきた入植者らしい。 兄の内面はこのように粗暴であったが、対外的には善人を演じていたようだ。そんな彼を、父娘はよく抑えていたそうな。 そんな折り、一週間前に父が他界した。ストッパーが外れたタクラムは人狼としての本性を顕にし、人食いに及んだとのことだ。 一回目の凶行は、ナンシアさんが不審に思いつつも、証拠がなかったので発覚せず、二回目の犯行の前には、ナンシアさんは行方不明になっていたという。戻ったのはなんと今日だとか。 そんな彼女を、共に人食いの道へ誘ったことから、連続殺人事件の真相が露見し、先ほどの壮絶な殴り合いに至った次第。間抜けといえば間抜けな話ではあるが、笑い話にはとてもできない。「お前らだって、豚や牛を食うだろう! 俺が人を食って、何が悪い!」 とはタクラムの弁だが、哲学的な話はさておき、人のコミュニティで人食いに及んだら、それは罰されるというもの。 村民の一部から、死刑を求めるコールが沸き起こる。その声を聞き、ナンシアさんは顔を背けた。両者の心中を思わざるを得ない。「みんな落ち着いてほしい。タクラムは官憲に引き渡す。我々は暴徒であってはならない」 村長が凛とした声で皆を抑え、私刑を阻止する。ナンシアさんの表情は顔を背けたままなので伺えないが、苦渋の表情であることは明白で、わざわざ覗き込んで確認する悪趣味もない。 しばらく村長と過激派の問答が続いたが、なんとか引き渡しの方向で話がまとまったようだ。 タクラムの処遇の話が終わると、今度はナンシアさんの扱いについて議題は移った。|侃々諤々
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第十五話 魔導剣士ロイ、菜食に舌鼓を打つ

 昼下がりに、大過なく王都へと帰り着いた。さて、新たな仲間を加えてやることといえば、徽章の発注と、歓迎会である。徽章発注の方は手早く済ませ、お馴染み『青い三日月亭』で、宿を取り食事会と洒落込むことに。 何ぶんナンシアの兄のこともあり、どんちゃん騒ぎをする気はないが、同じ釜の飯を食うのは団結力のアップに役立つというのが、持論のひとつ。なるべく早く、ナンシアにはパーティーに馴染んでほしいところだ。実際、ここにくるまで、どうにも会話が弾まなかった有様である。 寝室の手配が終わると、早速食卓に着く。思えば、最初俺とサン二人だったパーティーも、短期間でずいぶん大所帯になったものだ。「ナンシア、君が今日の主役だ。何か食べたいものがあったら、遠慮なく言ってくれ。ここの料理は、どれも絶品だ。味は保証する」「そうですね……。菜食を食べられれば、と思います」「ひょっとして、ベジタリアン?」「そういうわけでもないんですけど、今日はお野菜気分、ぐらいの感覚なんです」 なるほど。とりあえず女将さんに相談してみよう。手を上げて女将さんを呼び、今日のオーダーを伝えると、では菜食づくしにしましょうと快諾してくれた。「あ、俺にも彼女と同じものを出してください」 食にまつわるマイ金言のひとつに、「相手と仲良くなりたければ相手と同じものを食え」というのがある。実際、これはなかなか効果てきめんな方法だ。「じゃあ、オレもそれで!」「私もお願いしますわ」 と仲間も続き、昼食は菜食づくしと相成った次第である。 ◆ ◆ ◆ まず運ばれてきたのは、ポロネギをシンプルに串に刺して、塩焼きにしたもの。女将さんが、こういうシンプルな料理を出すときというのは、素材に自信があるときだ。これは楽しみ……。 まずはひとつ口に咥え串を引き、噛みしめる。おほっ、口の中にじゅわっと甘みが広がるじゃあないか! 塩加減、焼き加減も完璧で、まさに三位一体とはこのこと! 食前酒のエールに、これがまた実に合う。シンプルにして、究極の食べ方と言えよう。 皆が食べ終わる頃、続いて運ばれてきたのは揚げ物。極太アスパラガスのフライ。これに岩塩をつけて頂く、という趣向のようだ。岩塩はルンドンベアを擁する国家、ラドネスブルグ名産品のひとつで、外
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第十六話 魔導剣士ロイ、買い物に付き合う

「ロイさん、買い物に付き合っていただけませんか?」 寝るには時間が余っている食後、時刻で言えば三時の鐘が鳴って少し過ぎた頃、ナンシアからひょんな申し出を受けた。「女の買い物は、女同士の方が捗るのではないか?」 と答えたら、彼女は「ロイさんにお願いしたいんです」と食い下がってきた。まあ、特にやることがあるでもなし、親交を深めるのはやぶさかではないので、付き合うことに。 かくしてやってきたのは、服飾店。ううむ、男が退屈するスポット第一位ではないか。まあいい、付き合うと決めたからには、ぼやいてもしょうがない。「ロイさん、これおかしくないでしょうか?」 意外と早く試着室から出てきた彼女は、地味な村娘スタイルとは打って変わって、アイボリーのチューブトップに、ライトブルーのローライズ・ショートパンツという、ずいぶんと刺激的な格好。スレンダーな引き締まった肢体を前に、思わず視線のやり場に困ってしまう。「お、おう。とても似合ってると思うぞ」 うーむ。我ながら、もっと気の利いた返しはできないものか。「ありがとうございます!」 しかし、こんなパッとしない褒め言葉でも、眩しい笑顔を返してくれるのだ。何だか恐縮するやら、照れるやら。「まだ他に、買い物はあるのか?」 急かすわけではないが、目安を知りたい気持ちもあり、ちょっと尋ねてみた。「いえ、あとは似たような服を、着替えとして買うだけですから……」「そうか」 どうにも照れくさい。何だろうか、この感情は。この後は、ついでだからと、ちょっとした冒険用の品々を買い込み、宿へと戻った次第である。 ◆ ◆ ◆ 宿に戻ると、テーブルの前で、残りのメンツがなにやら難しい顔をしているではないか (訂正。パティは兜のせいでよくわからない)。卓上には、六つのサイコロが転がっていた。「どうした、みんな。そんな険しい顔をして」「兄貴……。実は、これからのことを占ってみたんス。そしたら、何かろくでもない展開が起こると、お告げが出たっス」「ほう? 本当に当たるのかそれ?」 義妹の対面に腰掛けながら、ちょっとからかう。「当たるっスよ! 現に、ナンシア姉との出会いがあったじゃないっスか!」 ムキになってむくれる彼女。おいおい、そんなに怒ることないじゃないか。「わかったわかった。疑って悪かったよ。まあ
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第十七話 魔導剣士ロイ、異世界転移者に会いに行く

 占いに反して何もなかったので、サンは不満げだったが、大過ないのはいいことだ。今日も元気だ、空気が美味いということで、雀の声も爽やかな早朝、例によって告知所の前にやってきた。 お馴染み、ゴブリン退治。手間の割に、旨味がないんだよなあ……とりあえず保留。 ドラゴン退治。まだ残ってたのか、これ。パス。 バンパイア退治。無理。神官サマが見たら、また暴れだしそうだから、体で彼女から見えないようにガード。 隊商護衛。むむ、依頼人は異界からの転移者と、こないだ宿の食堂で噂話を耳にした人物ではないか。報酬も悪くない。想定される敵も、山賊風情だろう。これ、いいんじゃないか? 何より、依頼者が異界人というのが、異界脳の持ち主としては、何だか心惹かれるものがある。「これ、どうだろうか?」 なんとか後ろを覗き込もうとするフランから、バンパイア退治の依頼票をさり気なく隠しつつ、皆に問う。「兄貴が選んだものなら不服はねえっス」「ボクもそれでいいと思います」 他のメンバーもそれじゃあと承諾してくれた。しかし義妹よ、お前はもうちょっと自分で考えたほうがいいな。お義兄ちゃん、少し心配だぞ。「それじゃあ、早速依頼人に会いに行くとしようか」 フランを回れ右させて、この場からさっさと引き離す。やれやれだな。 ◆ ◆ ◆ そんな訳で、またもややって来ました、高級住宅街。どうにも、仄かなアウェー感を覚えるな。 地図を頼りに、いつぞやのベイシック卿の住まいとは逆方向にずんずん進んで行くと、程なくして立派な構えの邸宅に辿り着いた。おお、これは金払いが良さそうじゃないの。「何者だ」 例によって、槍を持った門衛二人組に問われる。ほんと、個性の欠片もない連中だなあ。「依頼を受けに来た、冒険者です」 依頼票を見せると得心がいった様子で、得物を預け邸内に通された。入り口でドアノッカーを鳴らすと、程なくして、若くて無闇にスカート丈の短い、胸元を強調した格好のメイドが顔を出したので、用件を伝える。「畏まりました。主人は程なく商用から戻る予定です。応接室にお通ししますので、そこでお待ち下さい」 館内に通されると、他にも胸元を強調した、スカートがやたら短い美少女メイドが働いており、すれ違いざまに深々と頭を下げられる。なんか、
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第十八話 魔導剣士ロイ、異世界転移者と邂逅する

 仲間と、今後のことなどについて話していると、ドアがノックされ、メイドが入ってきた。「お待たせいたしました。ただ今、主人が戻りました」 彼女の後に続いて、身なりの良い、眼鏡をかけた肥満体の男性が入ってきたので、起立して礼をする。「お初にお目にかかります。冒険者チーム『スティング・ホーネット』のロイ・ホーネットです」 他のメンバーも、続いて自己紹介する。「どーもどーも。まま、席に着いて着いて。僕はタク・モロオ。絵師と、あとついでに交易商もやってるんだ。ところで、メイドって萌えると思わない?」「はあ。何ぶんメイドとは、縁の薄い生活をしておりますもので……」「やっぱさ、ご主人様 (ハート)って呼んでくれるのがいいよね! あと、従順なところ? それと……」 以後、体感三十分ほど、彼のメイド愛について聞かされる羽目になってしまった。 ついでに、自慢話も聞かされた。要約すると、この世界に飛ばされて「萌え絵」を描いたところ、斬新さがパトロンの心をつかみ、一気に売れっ子画家になったそうな。そして、今はその資金を元手に交易も始め、そちらも至極順調とのこと。「ええと、よくわかりました。ところで、ご依頼について、詳しく伺いたいのですが」 放っておくと、いつまでも自分語りを続けそうなので、無理やり軌道修正をする。「おお、失敬失敬。ええとね、ここから、馬車で片道一週間のところにあるバーブル王国に、絵とかヤマトウキビとか、あとは宝石とか工芸品なんかを売りにいきたいんだ。今、あそこ、すごく景気いいからね。現地の滞在期間は売れ行き次第だけど、まあ三日ってところかな」 そう言って彼は地図を取り出し、ルンドンベアから伸びる街道を東に行った、バーブルと書かれた地点を指差す。「山賊あたりの襲撃を予想しますが、どうでしょう?」「そうだね。ちょうど中間地点に出没するらしいね。あと、ゴブリンの巣も近くにあって、獲物の奪い合いをしているとかも聞くねー」 盗賊、あとゴブリンか。ゴブリンはちょっと予想外だったが、言い換えると、山賊の規模はゴブリンと拮抗する程度ということだ。あまり難敵ではないだろう。「報酬は依頼票通り。あと、この隊商は規模が大きめだから、君たち以外にも冒険者を雇うからね」 そういや、依頼票が複数貼られてた気もするな。遠回しに、無茶
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第十九話 魔導剣士ロイ、ニンジャと戦う ―前編―

 六時の鐘を受けて、待ち合わせ場所に向かうと、朝霧の中に馬車十数台からなる、大規模な隊商が待ち受けていた。俺たちのような、いかにも「冒険者です」という出で立ちの連中もたむろしており、なかなか壮観。「おはようございます」 まずは、皆で依頼人に挨拶。彼が挨拶を返そうとしたとき、横からドサドサドサと、何かが落ちる音が。 そちらを見れば、深くお辞儀したナンシアの背嚢の蓋がベロンとめくれ、冒険用具が大量に地面に落ちている。「はうぁ! すみません! すみません! 今しまいます!」 慌てて道具を拾い集める彼女。俺たちも回収を手伝う。モロオさんも手伝ってくださった。すると、いきなり横っ腹にナンシアの頭突きを食らってしまう。「おぐぅ!?」「あああ! すいませんロイさん、大丈夫ですか!?」「うぅ……いや、大丈夫だ。でも、気を付けてくれ」 腹部をさすりつつ、ペコペコとお辞儀しながら荷物を集める彼女に、荷物を渡す。やれやれだな。「これで全部かな? 改めておはよう。じゃあ、みんなはあの馬車に乗ってもらえる?」 モロオさんの指差す先には、大きな幌馬車が一台。ただこの馬車、幌の部分にメイドの萌え絵が描かれた、「痛馬車」であった。 ええ……まじっすか? あれに乗らなきゃダメっすか!? ちらりと依頼人を見ると、それはもう上機嫌。とても嫌ですとか、幌を張り替えてくださいとか言い出せない空気。(まあ、中はきっと普通の馬車と同じだし……) と自分に言い聞かせ馬車に乗り込むと、荷台の床に描かれたメイドさんとご対面。マジ勘弁してください。 ため息を吐きながら馬車に乗り込もうとすると、「これをどうぞ」と、例の際どい格好のメイドさんからバスケットを渡された。 蓋を開けてみると、中にはトマトとレタス、きゅうりにチーズが挟まったサンドイッチが詰まっている。おお、こりゃありがたい。朝食というわけか。 みんなが乗り込んだので、バスケットを回していく。サンドイッチを食みながら会話をしていると、「出発」と声が上がり、馬車が動き出す。 さあ、旅の始まりだ。 ◆ ◆ ◆ 馬車は街道を行き、宿場町での滞在を挟みつつ進む。初日の昼以降は保存性が重視され、堅いパンと燻製肉が食料となった。取り立てて美味いものではないが、致し方ない。 二日目の夕刻
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第二十話 魔導剣士ロイ、ニンジャと戦う ―後編―

 しかし、フーマは平気な顔 (?)をして、再び斬りかかってくる。「拙者は死霊ではないわァッ!! 誇り高き幽魔族のニンジャよ!!」 相手の二撃目を躱すが、袖をパックリと斬られてしまった。こいつの攻撃は威力がないのではない、重さはまるでないが、切れ味が異様に鋭いのだ。それはそうと、ニンジャという呼称で合ってたんだな。「くきーっ! 何でアンデッドじゃないんですの!? 許せませんわ! オラオラオラオラァッ!!」 逆切れフランが金切り声を上げつつ、鎚鉾から買い替えた鎖付き棘鉄球でフーマを殴打しようとするが、これがいずれも軽く躱されてしまう。彼女の大雑把な攻撃と、モーニングスターの扱いづらさ、そして何より、やつの身の軽さの悪条件が、三つ重なってしまっている。 そこにナンシア、パティ、サンが攻撃を重ねていくが、それもすべて綺麗に躱されてしまう。こいつどんだけ素早いんだよ。こういう相手は魔法で焼けと、タクラム戦で学習した。さっそく、学習成果を試させてもらおう。「雷衝撃滅波!」 腰のバインダーから取り出した魔導書がばらばらとめくれ、電撃が迸り、フーマに一撃食らわせる!「おのれ小癪な真似を! ならばこれを喰らえ! 忍!」 やつは懐から巻物を取り出すと、投げつけてきた。そいつが解けて電撃が迸り、我々に命中する! 痛ってえ! ビリッときたぁ! いやはや、電撃返しをされるとは思わなんだ。自分で食らうと、こんなに痛いんだな。「命活癒術草!」 前衛に、治癒魔法がかけられる。シャキッと回復! そういえば、こいつで一つ気になったことがある。ひょっとして、目が閉じられないんじゃないか? 一つ試してみよう。「みんな目を閉じろ! 瞬閃輝眩光!!」 魔法名を叫ぶと、眩い光が、一瞬場を激しく照らす。瞼の上からでも、かなり強いと感じる光だ。「目が! 目があああああ!!」 瞼を上げると、目を押さえて悶絶しているフーマの姿が目に入る。「貰った!」 もんどり打つやつを、長剣でぶった
last updateLast Updated : 2026-07-22
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