All Chapters of 女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!: Chapter 41 - Chapter 50

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第四十一話 魔導剣士ロイ、北へ行く ―後編―

 視点はロイに戻る。 はー、興味深い体験だったな、クールウンも終わり、食堂で一人水を飲んでいると、女性陣が戻ってきた。店主から、エールは後回しにして、まず水を飲むことを勧められたので、そのようにしている次第だ。「よお、どんな感じだった?」 水差しとコップを渡しながら、例によって、すでに鎧姿のパティに尋ねる。ほんと、蒸れないのそれ?「面白い体験でしたー。もう、喉がカラカラですよ~」 皆、一斉に水を呷る。「じゃあ、食事を頼むとするか」 先ほどアニタと呼ばれた女性が傍を通りかかったので、シェフのおすすめとエールを注文する。 さて、どんな物が出てくるか。 ◆ ◆ ◆「お待ちどうさまですー。ロールキャベツですー。うちの自慢なんですよー」 ややあって、店主が料理を手にこちらへやってきた。 料理は、湯気立つコンソメスープに浸かったロールキャベツ四巻きと、黒パンにチーズ、そしてお待ちかねのエール! さあ、まずはエールだ! 乾杯し、一気に呷る!  爽やかなのどごし、豊かなコク。ああ、染み渡る。砂漠に水が注がれ、そこから緑が広がっていくような感覚だ。 続いて、ロールキャベツをいただくとしよう。 ぎゅっとキャベツを噛みしめると、ほどよく柔らかい歯ごたえに続く、キャベツのほどよい甘味。さらに、ひき肉のほろほろした感触とともに、豊かな肉汁がじゅわりと広がる。ああ、実にほっとする味。暖炉のぬくもりを体現したような温かさだ。 そして、ここでパンと洒落込もうじゃないか。ふかっとしたほどよい食感に、ライ麦の素朴な味わいがマッチしている。北の大地ここにあり。 トドメにチーズ。何しろあれだけ旨い牛乳から作られるチーズなのだから、当然こいつも抜群に美味い。牛乳のときからさらに進化したコクとクリーミィさが、実に豊かだ。 いやあ、堪能した。これで明日もまた頑張れそうだ。 ◆ ◆ ◆ 翌朝、依頼者である市の庁舎に赴いた。受付で依頼票を見せると、市長室へと通される。市長のお出ましとは、結構でかい話のようだな。 ノックして、依頼を受けに来た冒険者であることを告げると、入室許可が降りた。 中に入ると、シックで品のいい調度で飾られた室内の向かいで、眼鏡で中肉中背の中年男性が、書類にサインをしているところだった。彼が市長だろう。「かけてくれたまえ」 
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第四十二話 魔導剣士ロイ、作戦を立案する ―前編―

 雪山の登山ということもあり、まずは本格的な装備を整えることになった。話を聞くぶんには、それほど険しい山ではないようだが、雪山をなめるのはよくないことだ。これで、いささか時間を食ってしまい、アタックは翌日に回すことに。 昨日の店でさらに一晩明かし、早朝からアジト目指して登山である。 山は雪が積もっており、一面の銀世界と化していた。アジトと目されるでかいロッジを発見したが、見張りと思しき、黒尽くめのフードを被ったローブ姿のやつが、四人ほど確認できる。岩陰に隠れて様子を見ているものの、どうしたもんかな。「構成員すべてがあそこに集結しているとも思えないが、百人とかいたら厄介だな。強行突破は避けたいところだが、何かアイデアはないだろうか?」 皮手袋を外し、温かい吐息をかけて、再度はめながら皆に問う。「オレがいっちょ行って、火ィ点けてこよっスか?」 物騒な発想だな、マイシスター。「いや、それは誘拐された者がいた場合、問題がある。仮に点け火をするにしても、生存している被害者の有無を確認してからだな。だが、ひとまずスニーキングによる偵察には賛成だ。もっとも、この見開きのいい場所で、どう忍び寄るかという問題はあるが」「あの格好に変装……とかどうでしょう?」「服を、どうやって調達するんですの?」 クコの提案に、フランがダメ出しする。変装か……変装なあ。「ひとつ、方法がないでもない。俺が幻覚魔法で、信者の姿をみんなに被せるというものだが」 腹案を述べると、一同注視してくる。「声でバレません?」「どうだろうな。百五十人いる構成員の声の違いに、気づくとも思えないが。まあ、これが幹部会とかだったらまずいが。そのためにも、まずは偵察だな」 不安視するパティに、安心材料と懸念、そして、さしあたっての方針を告げる。「あの……偵察なんですけど、私が狼になって、見てきましょうか?」 声を上げたのはナンシア。一同、彼女を見る。「私が狼になって見に行った方が、サンちゃんより目立たないと思うんです」 なるほど、その手があったか。便利だな、人狼。 そのようなわけで、まずはナンシアの偵察報告を待つ運びとなった。 ◆ ◆ ◆ 視点は、ロイからナンシアへ移る。「皆さん、行ってきますね」 狼に姿を変え、やや遠回り気味にロッジに近づいてみる。見張りがこっち
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第四十三話 魔導剣士ロイ、作戦を立案する ―後編―

 獣人形態になって、はしごを昇っていく。人形態じゃないから、恥ずかしくないもん! ちなみに、変身するときの咆哮は、かっこいいからやってるだけで、不要だったりする。 昇りきると、頭上がふさがっている。でも、ちょっと押してみると、光がうっすら差し込んでくるので、蓋のようなものなのかもしれない。蓋を開けた瞬間、人の匂いと詠唱が流れ込んでくる。これは、ひょっとするとひょっとして! 隙間から視線が通る程度に蓋を持ち上げて様子を見てみると、木造の部屋の中みたい。明かり取りの窓から光が差し込んでいて、久しぶりの太陽の光がちょっと眩しい。 人の気配はないようなので、完全に昇りきって室内に入る。八個の大きめのかごが収められた棚と、扉があるだけの簡素な部屋。 そっとかごの中を見てみると、何やら黒い布が。取り出して広げてみると、それはあの、悪魔教徒が着ていたフード付きローブじゃあないですか! これ、すごく使えるんじゃない!? とりあえず六着入手したものの、さらにこの先に進むべきか悩む。聞き耳を立ててみると、特に足音とかは聞こえないけど……。これで見つかったら元も子もないよね。 よし、変装用アイテムをゲットしたことで、よしとしよう! これがあれば事態が進展するはず。 見つからないように、来たとき以上に遠回りして帰らないと。 ◆ ◆ ◆ 視点は、ロイに戻る。「遅いな、ナンシア……」 偵察に出てから、小一時間ほど経った気がする。しかし、焦って突入するなどという愚は犯せない。彼女を信じて待とう。 焦燥を抑えつつ、岩陰からロッジを注視していると、ぎゅっと雪を踏みしめる何かの音が、背後から聞こえた。 振り返ると、そこには黒い布を口に咥えている、一匹の狼。ナンシア、無事だったか!「ありましたよ、黒いローブが!」「でかした!」 口から離された黒い布を広げてみると、確かに連中の着ているアレだ。「で、あのロイさん。後ろを向いてもらえると……」「ああ、着替えるんだな。終わったら声をかけてくれ」 彼女は着替え終わると、ロッジに通じる隠し通路の情報を我々に告げる。「ふむ、値千金とはこのことだな。素晴らしいよ、ナンシア!」 ローブと隠し通路、この追加要素で、新たな策が立ち上がってくるじゃないか。「みんな、こういう作戦はどうだろうか」 皆と顔を寄せ合
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第四十四話 魔導剣士ロイ、かつてない危機感を覚える

 大きく迂回して、隠し通路の蓋から内部を覗く。人の気配はないので、小声で「OKだ」と告げる。 一同、内部への潜入に成功するが、ここからが正念場だ。自分たちの脱出口になる可能性があるので、隠し通路はまだ閉鎖しないでおく。ナンシアの言っていた、不気味な詠唱が聞こえてくる。 まずは、サンに扉の向こうへ聞き耳を立ててもらう。OKサインが出たのでそっと開けると、通路が伸びており、右側に曲がっている。 ちなみに、パティの重装備は非常に目立つうえに、ガチャガチャうるさいので俺の無限収納ポーチに入れさせてもらっている。肝心の防御力がまったく期待できないが、致し方ない。不幸中の幸いと考えるべきか、フード付きローブのおかげで彼女の羞恥心は抑えられているのが救いか。フランの聖印盾も、同様に収納中。 サンを先頭に、忍び足で前進していき、曲り角に差し掛かると、義妹が小さな手鏡で、角の先の様子をうかがう。しばししてGOサイン。あっけなく、大部屋と思われる場所の扉の前にたどり着けてしまった。 ううむ、なんだか用心した割には、拍子抜けだな。いや、用心したからこそ、拍子抜けできる結果になったのだろう。この商売、何ごとも用心しすぎて悪いことはない。ともかくも、ここからが正念場だ。 鍵穴からサンが中を覗き込み、ハンドサインを送ってくる。誘拐被害者が生存。人数一人。教団メンバー三十人。被害者は無事なのはいいが、三十人というのは、なんとも厳しい人数だな。戦力差が五倍。これは点け火して、どさくさに紛れて救出するパターンだな。ハンドサインでその旨を伝えると、火打ち石とおがくずで先ほどの隠し通路に続く部屋に火を放つ。 火勢が十分になると、ロッジ裏口の見張りを背後から奇襲し瞬殺! 裏口にも、さっきのように火を放つ。続いて表口の見張りも、同様の手段で仕留める。こちらは侵入者ありと告げられてしまったが、もうすでに時遅し。準備は既に、終わっている。 表口から出て、「火事だー!!」と大声で叫ぶ。すでに黒煙がもうもうと立ち込めている。表口から飛び出してくる教団メンバーを、一人、また一人と確実に仕留めていく。いやはや、我ながら手堅い仕事だと感心するが、それにしても、ちょっと簡単すぎないか? 作戦が見事だったとうぬぼれたいが、どうも引っかかるな。考えすぎだといいが。 敵を
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第四十五話 魔導剣士ロイ、凶鳥王と相対する ―前編―

「呼ばれて、飛び出て、ジャンジャカジャーン! おれ、シャックスってんだ。ヨロシクなァ~!」 怪鳥が、その見た目にふさわしい大きな、そして逆にふさわしくない、陽気な声でシャウトする。「なんだよ、契約者のやつ、おっ死んじまったのか。まァいいや。なァ~お前ら、最高のグルメってなんだと思う?」「……知るか」 好き勝手なことを言っているシャックスに、言葉を返す。何がしたいんだ、こいつは。「ハラワタだよ、ハラワタ! 人間のハラワタほど、ジューシィでソソるもんはないんだぜェ?」 疑う余地がないな。誘拐殺人事件の教唆犯にして、悪魔教団の守護者はこいつだ。そして、これから俺たちを喰らうという宣告に他ならない!「あんたは早く逃げろ! 賦術火炎刃! フラン、聖王曙光輪を!!」 拘束から解放された被害者に退避を促し、速攻で全員の飛び道具に、いつものやつをかける。「聖王曙光輪!!」 聖光の輪がシャックスをすり潰す! しかし、効いていないわけではないようだが、ワイト王のときほどのクリティカルさは感じられない。 ……あれで、悪魔の類ではないのか? ダイアーは、暗黒魔法を使っていた。 ああいうので呼び出せるとしたら、悪魔のはずだが……。「あはァ! 悪くねェなァ! こいつァ楽しめそうだ!! 氷獄滅殺刃ァァァッ!!」 グォォンと重苦しく響き渡る、聞いたこともないような音とともに、シャックスの頭上に、不気味な赤黒い光を放つ、漆黒の不均等な形状の多面結晶体が現れ回転し、虚空に鋭利な氷の刃が無数に出現して、一斉に襲いかかってくる! 氷刃に切り刻まれ、ダメージで膝をつきそうになるが、なんとか持ちこたえる。冷たすぎるゆえか、逆に傷口が灼ける感触に襲われた。 サンやナンシアが、ひどい怪我を負いつつ飛び道具で応戦する中、命活癒術草が飛んでくる。助かる!「雷王撃砕嘯ァァッ!!」 せっかく賦術火炎刃をかけたところだが、チマチマやってもしょうがない相手と判断し、速攻で必殺魔法を叩き込む。激しい雷光がシャックスを灼く! お前も灼けつくって感覚を体験しやがれ!!「熱いぜェ! 
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第四十六話 魔導剣士ロイ、凶鳥王と相対する ―後編―

「グ……グムッ!?」 シャックスが、背中のボンベから炎を吹き出し推力を得ようとするが、こちらも負けじと、やつを引きずり下ろしていく。そこに二発目の聖王曙光輪の押し潰す力が加わり、ついに巨鳥は文字通り地に堕ちた!! 賭けに勝ったぞッ!「うおおおおッ! 接近戦に持ち込めッ!!」 号令を下し、皆の得意武器に再び賦術火炎刃をかけ、突撃する。やつも氷刃を飛ばし応戦するが、俺たちの歩みは止まらない。クコから超力賦活草もかかり、力がみなぎる!!「やっと、至近距離でこんにちはだな! お前にはロングソードッ!!」 力の限りを込めた斬撃を叩き込むと、やつの土手っ腹から、謎の黒い液体が飛沫のように上がる。これがこいつの血か? こんなやつにも血が通っているのだな。いや、そんなどうでもいい感心をしている場合ではない。「やぁっ!」 パティが長槍でやつの目を突き刺し、ゴーグルをぶち抜く。激しい悲鳴! 先ほどまでの陽気さは、もうないようだな!「やるねぇ……やりやがるねェ……ッ! 氷獄殲滅嵐!!」 やつが自爆覚悟で範囲魔法をぶちかましてくる。細かい氷の刃が吹き荒れ、全身を引き裂かれるが、回復はとにかくクコに任せて、シャックスをひたすらに切り刻む。防戦に回ったら負ける! 互いに防御などかなぐり捨てた、全てを攻撃につぎ込んだ総力戦だ!「うおおおおおおおっ! 墜ちろよおおおおおッ!!」 この地上よりも、さらに奈落に叩き落としてやる! 全力で燃え盛る剣を振り抜くと、シャックスが黒い血飛沫を吹く。 サンも死角から、ダガーでダメージを与えていく。チリも積もればなんとやらだ! そしてフラン。不器用な彼女でも、この巨体相手にはモーニングスターをぶちかまし放題だ! シャックスのガワが、ベコベコに変形していく。 ナンシアも拳を乱打し、シャックスを文字通りボコボコにする。「やられっぱなしじゃよォ! いらんねえよなァーッ!! 結晶氷乱舞ィィッ!!」 巨大な雪結晶が、再び出現!「致命傷だけは避けろ! クコを信じて、攻勢に出ろ!」 結晶に体を切り刻まれるが、クコの回復が、ガンガン追いつく。「ええぃ!」 今回、魔法相手で盾役になれないパティは、俺たち
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第四十七話 魔導剣士ロイ、一夜を共にする?

 ……はっ! あたり一面の、雪景色。雪に埋もれて、意識を失っていたようだ。寒い。何より力が出ない。ベルトポーチに砂糖水があったはずだ。まずはそれを飲んで、少しでも体力を回復させねば。 水袋があった。横になったまま一気に飲み干し、人心地つく。 体を起こし、状況を確認する。あたりは夕焼けに染まり、ロッジは埋もれたのか、見当たらない。 仲間は無事だろうか。「おーい!」と呼びかけてみるが、返事はない。 不安に押しつぶされそうになるが、少し周囲を探してみよう。 防寒具を再度身にまとい、目印に長剣を突き立てる。この剣も、ぼろぼろになってしまったな。パティの槍があれば目立ってよかったのだが、彼女もろとも、どこへ行ったのやら。 ざくざくと周囲を探していると、雪に埋もれている毛むくじゃらの何かを見つけた。近寄ってみると、犬の鼻と口だ。いや、これはひょっとすると……! 急いで掘り起こすと、埋もれていたナンシアを発見した!「ナンシア! 起きろ! 起きてくれ!」 体を必死に揺すると、彼女がうっすら目を開けた。「ロイさん……?」「そうだ、俺だ! とりあえず起きよう。こんなところに、埋もれたままでいるものではない」 力を合わせて助け起こすと、ぶるぶると犬のように体を震わせて、体毛の雪を払う。「助かったんですね。ほかの皆さんは?」「わからん。あそこに目印の剣を刺した。あれを見失わない範囲で捜索しよう。今、君の分の防寒具を出す」 防寒具を手渡し、山頂に向かって左へ歩いて行く。「俺はこっちをぐるっと探す。君は、反対側を頼む」「はい!」 着替え中の彼女を残し、再度雪面を眺め回して歩く。 ……芳しくないな。我々が随分下の方に流されたのか、あるいはその逆か。 そのまま、目印の剣から離れないように、右回りにぐるりと周回してみるが、やはり手がかりはない。 そして何よりまずいのが、もう陽が沈みかかろうとしている。「ナンシア!! 剣のところに戻ってくれ!!」 剣の下に戻りながら、近くを捜索しているはずの彼女に呼びかける。「呼びましたか、ロイさん? あら、それは……」 雪のブロックを作っているところに、彼女が戻ってきた。「今日はここで。イグルーを作ってビバークする。手伝ってくれ」「でも! まだみんなが……」「俺だって、断腸の思いだ。
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第四十八話 魔導剣士ロイ、一夜を共にする!

「いえ、あの、そうした方が、暖かいと思うんです」 むう……。低体温の回避には有効な手段だが。ううむ。だが、体力の回復に努めようと言い出したのは俺だな……。「わかった。その、変なことはしないから安心してくれ」「信頼してなかったら、提案しませんよ。さあ、どうぞ」「……邪魔する」 彼女の懐に潜り込む。俺よりも長身の彼女に抱きしめられていると、なんだか不思議な安堵感を覚える。 ふかふかした毛の感触が心地良くて、うつらうつらしてきた。「ふかふかしてていいな、毛……」「人狼になります?」「遠慮しておく。冗談が言えるなら、元気な証拠だな」 うと、うと……。「あの、もう一つ提案なんですけど……。今度から、『ロイくん』って呼んで、弟みたいに接しても良いでしょうか? ほんとに、ちょっとした思いつきなんですけど」「好きにしてくれ……」 睡魔に勝てず、適当に相槌を打つ。 ナンシアが、頭を優しく撫でてくれたような気がした。なんだか懐かしい姉のぬくもりを感じながら、眠りの世界に落ちていく……。 ◆ ◆ ◆ ん……。 目が覚める。 ナンシアの懐から上体を起こすと、彼女も目を覚ましたようだ。「おはよう……」「すまん、起こしたか?」「ううん、大丈夫」 うん? どうもナンシアの口調が……。「その、言葉遣い変じゃないか?」「昨日約束したでしょう? 弟みたいに接していい? って」 あー……。そんな約束を、交わした気もする。「そうか。まあ、好きに呼んでくれ。もともと、君の方が年上だしな」「うん!」 ほんとに、がらりと態度が変わったもんだな。まあ、姉のように接せられるというのは、個人的事情から、悪い感じはしない。 イグルーから外に出てみると、もう陽が随分高い。泥のように眠り込んでしまったようだ。おかげで、快調とは言い難いが、随分と体力が回復したように感じる。「みんなを探しに行く?」 ナンシアが、出入り口からひょっこり、首だけ出す。「まずは食事だな。朝飯前とはいかないだろう」 再度、松明を取り出して焚き火にし、焼き干し肉と白湯を作る。 今朝も簡素な食事をとりながら、今日の方針を話し合う。「主に二パターンがある。我々だけで捜索を続けるか、一度下山して捜索隊を結成するかだ」「やっぱり、前者じゃない? サンちゃんたち心配だよ」「俺は、
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第四十九話 魔導剣士ロイ、労われる

 エーデルガルド市部に着いた頃には、すでに夕陽になりかけていた。 一度宿に戻り、「仲間が戻っていませんか!?」と店主に問うたが、「戻られてないですねー」とのことで、入れ違い回避にナンシアを宿に残し、一路市庁舎へ急ぐ。無論、ナンシアは人里に降りた頃には、人の姿に戻っている。「依頼の件だ。至急、市長に取り次いで欲しい。『スティング・ホーネット』のロイと言えば伝わるはずだ」 我ながら鬼気迫る様子だったのか、受付嬢が少々怯えるように市長室へと消えて行き、少しして戻ってきた。「ご案内します」 怒気、焦燥、不安、様々な感情を含んだ俺の歩みが、さぞ怖いのだろう。受付嬢が、身を縮こまらせて先導する。 ノックを四回。「入り給え」 許可が出たので、一礼して入室する。「穏やかではないね。失敗に終わったか……」 尋常ではない俺の様子を見て、肩を落とす市長。「いえ、ダイアーは討ち取りました。結論からいきましょう。ダイアーは間違いなく誘拐・殺人の教唆犯でした。いえ、正確にはさらにその上の、教唆犯がいたのですが」「ほう? かけてくれたまえ。長い話になりそうだ」 言われるままに彼の対面に腰掛け、被害者を救出したこと、シャックスなる謎の魔物を呼び出され、そいつが真犯人であったこと。激闘の末に討伐したものの、断末魔で起きた雪崩のせいでナンシア以外の仲間とはぐれ、被害者もまた生死・行方共に不明であることを告げた。 証拠品の巨大ゴーグルをテーブルに置くと、彼もこれを事実と受け止めたようだ。「引いては、受け取り予定の報酬で、明日早朝に、山狩り隊を召集して頂きたいのです」「たしかにダイアーは死んだが、教団の勢力がゼロになったわけではないのでな。表立っては……」「では、裏からでも手を回してください。予算的には問題ないはずです。事態は急を要します」 深く頭を下げる。 市長はしばし唸り逡巡した後、「わかった、手配しよう」と、承諾してくれた。「仲間と被害者の命がかかっていますので! よろしくお願いします!」 起立して、深々と再度礼をする。「ともかく、今から人を走らせ秘密裏に手配を進める。もうすぐ閉庁だ。今日は、これで引き取ってくれまいか」「はい。よろしくお願いします」 三度めの礼をして、市長室を後にし、宿へと急ぐ。もう、すっかり陽が落ちかかっていた。
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第五十話 魔導剣士ロイ、労う

 やがて、ロヒケイットなる料理とパンが運ばれてきた。見た感じ、サーモンと根菜のクリームスープって感じだ。「とりあえず、いただきましょう」 ナンシアが食べ始めるので、俺もスプーンですくい口に運ぶ。 ああ、なんてほっとする味なんだ。サーモンの旨味、じゃがいもや人参のホクホク感、玉ねぎの甘味、クリームスープならではのコク。 なんだろうな。子供の頃、冬に外で日が暮れるまで遊んで帰ってきたら、母さんが笑顔でよそってくれて、今日どんな遊びをしたか語りながら食べるような。そんなほっとする感じが、去来する。 これに主食のパンも加わると、腹にも溜まる。昨日からろくなものを食っていなかったから、美味さもひとしおだ。 早く、みんなにもこれを食わせてやりたい。本当に、無事でいてくれ。 その後はアニタ嬢の用意してくれたサウナに入り、冒険の汚れを流しすっきりする。仲間は心配だが、明日本腰を入れて捜索するためにもゆっくり休眠を取らなければ。 肉体の疲れは心労に勝ったようで、ほどなく眠りに落ちていった。 ◆ ◆ ◆ 山狩り隊は、市長が確かに手を回してくれたらしく、百人弱ぐらいの規模が結成された。ありがたいことだ。 早速あの山に向かい、捜索していく。衰弱が激しかったが、サン、パティ、フラン、クコ、そして被害者を無事発見できた。凍傷もかかっておらず、ほっと胸を撫で下ろす。 後で聞いたところによると、サン、パティ、被害者。フラン、クコの組み合わせで流され、俺たちのようにイグルーを作って寒さをしのいだらしい。防寒具こそなかったが、松明の持ち合わせと木の枝に火を点けてしのいだとのこと。 シャックスの存在も衆目に晒されることとなり、この未知の魔物に、捜索隊も舌を巻いた。程なくして、こやつの存在は広まっていくだろう。 ともかくも、皆の無事を祝い、下山する。 被害者は貴重な生き証人となり、教団の悪事を証言。残りの教団構成員も全員逮捕されたそうだ。 報酬は消し飛んでしまったが、皆の無事と事件の解決を今は祝おう。幸い、まだ蓄えはある。「それでは、皆の無事を祝して飲み、食おう! 乾杯!」 おなじみのミルクではなく、今日は酒。エーデルガルドの酒はエールが中心。この苦味とのどごし、実に良い。 そこに、ミートボールのホワイトソースがけ、リハプッラ。これをマッシュポテトとともに頂く。と
last updateLast Updated : 2026-07-22
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