いつものように依頼票を見に行ったが、今日は芳しいものがない。こんな日もあるものだな。 幸い蓄えはまだ十分なので、皆でタマゴときゅうりのサンドイッチと、牛乳をゆったり楽しんでいると、突如、店の入口が勢いよく開け放たれ、からんからんと呼び鈴が鳴る。 何ごとかと注視してみれば、歳のほど十五と伺える街娘姿の女の子が、すごい形相で入り口に立っている。髪型は、一本に伸ばした黒髪のおさげを、二重に結ぶという、変わったリボンの結び方で束ねていた。あどけなさが残る童顔と、鬼気迫る様子が実にミスマッチだ。「たのもー!!」 声を張り上げる少女。おいおい、殴り込みかよ。朝っぱらから勘弁して欲しいなあ。まあ、何かあれば店の外につまみ出そう。「いらっしゃいませ。お食事ですか? ご宿泊ですか?」 平常運転で接客する、女将さん。肝が座ってるな。「で……」「で?」 言い淀む少女、首を傾げる女将さん。「弟子にしてください!!」 両手をびしっと伸ばし、九十度に折れた見事なお辞儀をしてくる。なんと、弟子入り志願だったのか。 ◆ ◆ ◆「私、バーシムレ・ストルバックといいます! 昔、ここで頂いた女将さんの料理に感動して、弟子入りをしたいと、ルンドンベアにやって来ましたた!」 少女はとりあえず手近なテーブルに通されたので、女将さんと一緒に事情を聞く。背筋をピンと伸ばしてハキハキと答える、少女改めバーシムレさん。耳が痛くなるぐらい、声がでかい。何で我々が同席しているかというと、まあ成り行きというやつだ。「気持ちはありがたいのだけれど、弟子も従業員も採らないことにしているの。ごめんなさいね」 申し訳無さそうに、頭を下げる女将さん。「横から口出しすいません。前々から思ってたんですけど、どうして従業員を雇わないんです? お一人で大変でしょう?」 せっかくの機会なので、ずっと抱いていた疑問をぶつけてみる。「それは、常にすべて責任を持って、お客様にサービスを提供するためなんです。誰かが間に入ると、責任を負いきれませんから……」 うーむ、仕事ぶりから真面目な人だとは思っていたが、ここまで徹底していたとは。「そこを何とか! お願いしますッ!」 それでも食い下がる、バーシムレさん。テーブルに、額を擦り付けんばかりだ。放っといたら、土下座までしかねない。「ご
Last Updated : 2026-07-22 Read more