All Chapters of 拝啓「愛する女」のために私を捨てた旦那様。今度は私を選ばせます。: Chapter 31 - Chapter 40

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第31話

誠が運転する車はサービスエリアへ入った。満車ではないが駐車場は混雑している。そんな中、タイミングよく目の前の車が出ていった。誠は空いたスペースへ車を停める。バックミラー越しに、実里と目が合った。何も言わない。互いに目を見ただけだが、それだけで十分だった。誠は先に車を降り、後部座席の扉を開けた。「ありがとう」「お気をつけて」実里は車を降りる。そして、トイレへ向かいながら駐車場を見回し、東條家の黒い車を探す。(……いた)また十台ほど離れた場所。護衛の男はこちらを見ている。けれど、前回のように近づいてはこない。実里が歩いていると、不意に男の視線が横へ逸れた。その視線を追うと、サービスエリアの警備員がいた。実里は納得した。(騒がれたらまずいって分かっているんだ)先ほどのサービスエリアで、実里は大騒ぎした。トイレにも行かせてもらえない。監視されている。そう訴えれば、周囲の人間は護衛ではなく実里の味方をした。ここで同じことをされれば、今度こそ警備員が介入するかもしれない。だから近づけない。(それはつまり……)自分のしていることが、他人から見れば非難されるようなことだと、護衛自身も分かっているということ。そして――命じたのは広海。胸の奥に苦いものが広がったが、実里は前を向いた。(今は考えない).トイレの中も駐車場と同様に混んでいた。手を洗う人。化粧を直す人。子どもの手を引いている人。忙しなく用事を済ませる女性たちの間を、実里はゆっくりと歩いた。そんな実里に目を向ける人もいるが、膨らんだ腹部を見れば、歩みが遅い理由にも納得するのだろう。すぐに自分の用事へ戻っていった。
last updateLast Updated : 2026-09-13
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第32話

友梨の運転で、二人は空港を目指していた。「疲れたでしょう? 空港までは二時間くらいかかるから、少し寝ていたら?」「ありがとう。でも、気を張っているからか眠れないの」実里の言葉に友梨は頷いた。そして、友梨はハンドルを切って車線変更した。「それなら、大船に乗ったつもりで、私の華麗なドライブテクニックを見ていてよ」「ウインカー、点けっ放し」「あ……」友梨はウインカーを消す。「安心できない大船だね」実里は笑った。.(……台湾、か)実里は腹部をそっと撫でる。いま妊娠二十週。妊娠二十二週に入れば、少なくとも通常の人工妊娠中絶はできなくなる。だから、最初は国内に潜伏することを考えた。(でも、原則というだけ)二十二週を過ぎれば絶対に安心、というわけじゃない。原則、だ。そんな曖昧な線引きに、子どもの運命を賭けられない。(だから、台湾に逃げる……)台湾は決して広い国ではない。それでも、多くの人が暮らす街の中に紛れてしまえば、簡単に一人の人間を探し出せるわけではない。何より――。(東條家にとって、台湾はアウェーだ)。日本ほど自由に探すことはできないだろう。そうなれば、出産まで身を隠せるに違いない。それが高橋誠の計画だった。 ◇◇◇友梨のスマートフォンが鳴ったのは、空港まであと二キロという標識が出た頃だった。友梨は画面を見たあと、通話ボタンとスピーカーボタンを続けて押した。『計画変更だ』高橋誠の声。そして、計画変更という言葉に実里の心臓が嫌な音を立てた。『トラブルが起きた』「何があったの?」『土砂崩れだ』電話の向こうの高橋誠の呼吸は荒い。まさか。実里と友梨
last updateLast Updated : 2026-09-14
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第33話

「ちょっ、友梨! 前! 前!」「見てるって!」「絶対見てない! 今、横見てたでしょ!」「実里、細かい! 一秒くらいじゃん!」「運転中の一秒を軽く考えないで!」実里は助手席の取っ手を握りしめた。大阪に入ってからというもの、何度こうしたか分からない。車線変更。合流。次々と現れる車。その間を友梨の運転する車が走っていく――ヨロヨロと。「大阪の運転って怖い……道交法はどうなっているの?」友梨が呟く。「私は友梨が怖い。どうして免許を取れたの?」実里は真顔で返した。死んだ振りではなく、本当に死ぬのではないか。せっかく広海から逃げられそうだというのに、ここで交通事故で死んだら笑えない。「大丈夫だって。私、無事故無違反のゴールドだから」「それ、運転する機会が少ないだけでしょ」「失礼な! 東京のルールなら余裕よ」「ルールは共通よ」口をとがらせる友梨に実里は抗議した。.やがて天王寺周辺へ入り、コインパーキングへ車を停めた。駐車券を確認した友梨が満足そうに頷いた。「よし、完璧」「駐車場に入れるだけで三回切り返したけどね」「ぶつけてないから完璧なの」その基準でいいのだろうか。実里は呆れながら大きな紙袋を身体の前で持ち、車を降りた。その瞬間。「――実里」聞き慣れない女性の声に、実里の身体が強張った。反射的に振り返る。そこには、実里たちと同じくらいの年代の女性が二人立っていた。(誰……?)『久し振り』『会えてうれしい』(……中国語)二人とも笑顔だ。実里は二人を警戒したが。
last updateLast Updated : 2026-09-14
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第34話

「実里」肩を軽く揺すられる。「実里、起きられる?」「……ん……」目を開けると、そこには友梨の顔があった。ぼんやりとそれを見てから、実里は窓の外へ目を向けた。「……夜?」「うん」「私、そんなに寝てた?」「ぐっすり寝てたよ。起きられる?」頷いて、実里は身体を起こした。どれだけ緊張していたのだろう。眠ったというより、気を失ったような感覚だった。「気分は?」「大丈夫。お腹も問題ないと思う」「それならよかった」友梨は実里の顔を覗き込む。「これからどうする?」聞かれている内容が実里には分からなかった。それだけ、『これから』が未知数なのだ。「ごめん、聞き方が悪かったね。体調に問題がなければ、外に出ない?」「外……」心が揺れた。ずっと閉じ込められていた。屋敷から逃げている間も、景色を楽しむ余裕などなかった。普通に街を歩く。そんなことをしたのは、いつが最後だっただろう。でも。「やめておく」実里は首を横に振った。「私がここにいるってバレたら駄目でしょう?」すると。「ふふっ」友梨が笑った。「何?」「やっぱりそう言うと思った」意味が分からず、実里は首を傾げた。それに構わず、友梨が部屋の扉を開ける。「出番だよー」「はーい」入ってきたのは、先ほどの女性二人。その手には、大きな化粧道具のケースがある。「……何?」実里は思わず身を引いた。「変装すれば大丈夫です」
last updateLast Updated : 2026-09-15
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第35話

実里は画面の中の広海を見つめる。救助活動に加わる広海の姿を何度見ても違和感があった。普段の広海とは、あまりにも違う。(……あ)そこで、実里は思い出した。「そういえば……」「何?」隣にいた友梨が実里を見る。「予備自衛官」記憶の中にある広海と、画面の中にいる迷彩服姿の広海。ようやく二つが繋がった。「なるほど」友梨が納得したように頷く。そして、わざとらしく真面目な顔を作った。「あれは、本物」「え?」「コスプレだと思った」間ができた。そして。「……ふふっ」実里は思わず笑ってしまった。きっと、友梨はわざと言ったのだろう。実里が深刻な顔をしていたから。それでも、笑ったことで、少しだけ身体から力が抜けた。同時に。忘れていた昔のことを思い出す。◇◇◇広海が二十歳になった頃のこと。誕生日当日は、二人でのんびりと過ごした。特別なことをしたわけではない。実里が用意したプレゼントを広海が受け取って、一緒に食事をして、のんびりと過ごした。その数日後。「ちょっと面接に行ってくる」広海はそう言った。「面接?」「うん」「アルバイトの?」「違うけど……まあ、受かったら教えるよ」広海はそう言うだけで、実里もそれ以上は追及しなかった。東條家の跡取りである広海には、実里の知らない予定も多かったから。何か東條家に関係するものだろう。その程度にしか思っていなかった。それが予備自衛官になるためのものだったと知ったのは、ずっとあと。広海が大学を休学すると言い出したときだった。「何で休学するの?」「訓練
last updateLast Updated : 2026-09-15
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第36話

三日後。実里たちは大阪を離れた。移動手段はフェリー。大阪から博多まで、海を渡って移動する。大阪から博多までなら新幹線移動が一般的でフェリーは盲点。しかも、時間はかかるが実里の身体への負担も少ない。そう説明されれば納得できた。何より。「揺れない……安全安心……」大船に乗った気持ちに、実里は大きく息を吐いた。「失礼じゃない?」向かいに座った友梨が頬を膨らませる。「何が?」「私の運転と比較してるでしょ」「当たり前でしょう」「即答しないでよ」同じテーブルに座っていた二人が笑う。船内のカフェ。窓の外には海が広がっている。波は穏やかで、実里はゆったりと温かい飲み物を口へ運んだ。大阪へ着いたときには、まだ逃げているという意識が強かった。いつバレるのか。いつ見つかるのか。そんなことを思っていたが、この三日間、何も起こらなかった。報道では、いまだに実里は行方不明になっている。『東條実里』を探す人たちははるか遠く。ここに自分を探す人はいない。「何か食べる?」「何がある――」実里の声が止まった。人が近づいてきたからだ。目線だけそちらに向けると、中年の男性だった。男は実里たちのテーブルの横で立ち止まる。一瞬、身体が強張った。『お嬢さん』(……英語?)『これ、落としましたよ』実里は男を見て、その手元を見る。男の手には見覚えのないエコバッグ。「……」自分のものではないし、見覚えすらない。それでも。『ありがとう』
last updateLast Updated : 2026-09-16
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第37話

実里はパスポートを両手で持った。自分ではない顔。自分ではない名前。生年月日も確認する。そこに書かれている一人の女性。西村美晴。これから自分は、この人になる。その瞬間。胸の奥に、重いものが落ちた。(……東條実里が、いなくなる)分かっていた。自分で選んだ。事故に巻き込まれ。行方不明になり。そのまま消える。そうすると決めた。でも。それまでは、どこか現実味がなかった。高橋誠から説明を受けたときも。ニュースで自分の名前を見たときも。広海が自分を探している映像を見たときでさえ。自分はここにいた。東條実里として考え。東條実里として話し。東條実里として生きていた。でも。今。手の中には。西村美晴という人間が存在している。(私が、この人になるんだ)そうしたら。東條実里は?行方不明のまま。いつか。死んだ人と同じように扱われるのだろう。実里はパスポートを握る。自分が死ぬ。身体は生きたままだが、名前が死ぬ。これまでの人生が。社会の中にいた自分が。死んでいく。その重さを実里は初めて感じた。「……怖い?」友梨が聞いた。「少し」実里は正直に答えた。それから。腹部へ手を添える。「でも、大丈夫」この子がいる。実里が誰になっても。この子の母親であることだけは変わらない。それなら。東條実里という名前くらい捨てられ
last updateLast Updated : 2026-10-01
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第38話

「美空(みそら)! それ入れ過ぎだから!」「だいじょうぶ!」「何が大丈夫なの?」「おいしくなる!」自信満々に答える5歳の娘に、思わず笑った。最近まで赤ちゃんだった気がするのに。5歳児なりの理屈ではあるが、ずいぶん論理的に話すようになった。ちゃんと成長している。·台湾で暮らし始めて5年。あの日、お腹の中にいた子どもは無事に生まれ、元気に育っている。今では自分で何でもやりたがる年頃になった。「友梨ちゃん!」「はいはい」急須にお湯を入れすぎたようだ。「熱い、熱い」と言いながら、友梨が急須の中の余分なお湯を捨てている。あの勢いでは茶葉も流れ出ていると思うが、黙っていた。「美空がやる!」「これは駄目」「なんでー?」首を傾げる美空と、胸を張る友梨を交互に見る。美空に任せたら茶葉が全部流れ出るからに違いないと思ったが。「美空が火傷したら、私が美晴に怒られるから」違った。「怒らないわよ」今は西村美晴と名乗る実里がリビングから口を挟む。友梨が振り返った。「嘘。絶対怒る」「怒る前に心配で止めるもの」「それ、今の私だから」「……確かに」納得した。友梨は『ほらね』と言うように笑う。5年経っても友梨には敵わない。実里はソファに座ったまま、キッチンに並ぶ二人を眺めた。美空と友梨は、いま二人でお茶の準備をしている。いつもなら、キッチンは実里の独壇場だ。美空は幼いし、友梨は相変わらず料理が得意ではない。それでも、このお茶くらいなら安心して任せられるようになった。·暮らしているのは台湾の都市部にある高層のマンション。豪邸ではない。使用人もいない。けれど、部屋は広く、治安もよい場所にあり、生活に困ることはない。子どもを一人で育てる母親としては、十分すぎる生活だった。それができているのは、実里一人の力ではない。高橋誠からは今も経済的な援助を受けている。そして友梨は実里と一緒に暮らし、実里に手を貸してくれる。出産したときも。美空の夜泣きが続いたときも。美空が初めて熱を出して、実里が泣きそうになったときも。ずっと。「ママ?」「ん?」「どうしたの?」美空がこちらを見ていた。「何でもないよ」実里は笑う。「二人を見てただけ」「美空、ちゃんとできてるでしょ!」「うん。見てたよ」誇らしげな娘の姿を
last updateLast Updated : 2026-10-03
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第39話

上海へ着く頃には、実里の心にも少し余裕が生まれていた。次は上海から台湾へと向かう。そのために用意されていた船を見て、実里の体から力が抜けた。「……懐かしい」実里が思わず呟くと、友梨が不思議そうな顔をした。「実里、これに乗ったことがあるの?」友梨が不思議そうな顔をして首を傾げる。実里は首を横に振る。「この船ではないけれど、似たような船に乗ったことがあるの」「貨客船だよ?」「経験値豊富でしょ」実里が笑うと、驚いていた友梨の顔が呆れた表情に変わった。「どんな経験してるのよ」貨客船は豪華客船とはまるで違う。華やかな装飾もなければ、観光客向けの施設が充実しているわけでもない。広い船内は無骨で実用性、『運ぶ』という目的を最優先にした造りだ。でも、だからだろう。同じ船ではないけれど、知っている気がした。「昔、お父さんについて海外へ行っていたって言ったでしょう?」「うん」「こういう船に乗るほうが多かったの」「まあ、一般人が客として乗ることもできるけれど、子ども連れで?」「お父さん、そういうところ結構適当だったから」「……面白いお父さんだね」「私のお父さんも、面白さでは負けてないよ」面白いとは意味の広い言葉だ。二人はそう結論づけて、笑いあった。.父は仕事で出かけるとき、実里を連れていった。だから、保育園も学校もよく休んだのだが。(そういえば、どうしてお父さんは私を連れていったんだろう)家には住み込みの家政婦さんがいた。父が仕事で遅くなっても、父の不在を実里が寂しく思う以外は、生活には一切問題がなかった。それなのに、1泊でも必ず実里を連れていった。父一人子一人。子離れ、親離れが出来ていなかったと言えばそれまでだが。(いま考えると、『一緒にいなければいけない』何かがあったのかもしれない)色々なところに行った。飛行機だけではない。船も。車も。ときには、どうしてこんなところを通るのだろうと思うような場所まで行った。当時は全部、父との旅行だと思っていた。今なら分かる。きっと、実里に見えていたものは全てではなかったのだ。.――実里、こういうところでは迷子になるなよ。――迷子になったら?――お父さんが泣くな。――私じゃなくて?――実里は強いから大丈夫。そんなことを言って笑っていた父を思い出す。(
last updateLast Updated : 2026-10-04
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第40話

「実里、お茶の前に化粧を直してきたら?」自宅なのだから少しは手抜きさせてほしいと思ったが、こちらをじっと見る美空の目を見て、気を引き締める。「美空のお茶会だもんね。綺麗にしてくるね」実里の言葉に美空がパッと笑う。「まってるね」.洗面所に入り、実里は鏡で自分の顔を見る。鏡の中に『西村美晴』がいることにはもう慣れた。台湾に到着して数日後。あの日も、実里はこうやって鏡の前にいた。あのときはまだ『東條実里』だった。◇◇◇実里の前で、友梨が指を2本立てた。「選択肢は2つあるわ。完全に別人になるか。化粧や髪型を変えて、別人に見えるようにするか」「完全に別人って……」実里は鏡越しに友梨を見る。「整形?」「うん」あっさり返事をされた。「もちろん、いまじゃないよ」友梨の視線が実里の腹部へ落ちる。「妊娠中だし、必要なこと以外で身体に負担をかける意味はないから」「それは分かってる」「だから出産して、身体が落ち着いてからになるね」「……どこまで変えられるの?」「変えようと思えば、どこまでも」「怖いこと言わないで」実里は苦笑した。冗談ではない。友梨なら本当に別人にしてしまいそうで怖かった。目。鼻。輪郭。少しずつ変えれば、東條実里をよく知っている人とすれ違っても、気づかれない顔にすることができるのだろう。変えてしまったほうが安全。それは分かっている。実里はもう死んだ。正確には、あの事故で行方不明になったままだ。戸籍は生きている。でも、こうして違う名前で異国にいることが知られたら問題になる。西村美晴として生きると決めた。だから、東條実里だった痕跡は少ないほうがいい。「どうする?」聞かれて、実里は鏡の中の自分を見つめた。まだ逃亡中に施された化粧が残っている。髪型も少し変えている。それでも、洗い流せばいつもの自分に戻る。深沢実里だった頃から変わらない顔。東條実里になってからも変わらなかった顔。(……全部、変える)そう考えると、胸の奥に小さな抵抗が生まれた。「……お父さん」「え?」「ごめん……お父さんの娘だったこともなくなってしまいそうで」実里は鏡の中の自分を見る。父親似と言われたことはない。――実里はお母さんに似たな。そういう父は誇らしげで、どこか寂しそうで。母親のことは写真でしか知
last updateLast Updated : 2026-10-05
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