誠が運転する車はサービスエリアへ入った。満車ではないが駐車場は混雑している。そんな中、タイミングよく目の前の車が出ていった。誠は空いたスペースへ車を停める。バックミラー越しに、実里と目が合った。何も言わない。互いに目を見ただけだが、それだけで十分だった。誠は先に車を降り、後部座席の扉を開けた。「ありがとう」「お気をつけて」実里は車を降りる。そして、トイレへ向かいながら駐車場を見回し、東條家の黒い車を探す。(……いた)また十台ほど離れた場所。護衛の男はこちらを見ている。けれど、前回のように近づいてはこない。実里が歩いていると、不意に男の視線が横へ逸れた。その視線を追うと、サービスエリアの警備員がいた。実里は納得した。(騒がれたらまずいって分かっているんだ)先ほどのサービスエリアで、実里は大騒ぎした。トイレにも行かせてもらえない。監視されている。そう訴えれば、周囲の人間は護衛ではなく実里の味方をした。ここで同じことをされれば、今度こそ警備員が介入するかもしれない。だから近づけない。(それはつまり……)自分のしていることが、他人から見れば非難されるようなことだと、護衛自身も分かっているということ。そして――命じたのは広海。胸の奥に苦いものが広がったが、実里は前を向いた。(今は考えない).トイレの中も駐車場と同様に混んでいた。手を洗う人。化粧を直す人。子どもの手を引いている人。忙しなく用事を済ませる女性たちの間を、実里はゆっくりと歩いた。そんな実里に目を向ける人もいるが、膨らんだ腹部を見れば、歩みが遅い理由にも納得するのだろう。すぐに自分の用事へ戻っていった。
Last Updated : 2026-09-13 Read more