工藤一樹は、生まれつき体が弱かった。幼い頃から病院で過ごす時間が長く、自由に外で遊ぶことはほとんどなかった。 唯一の楽しみは、ベッドの上でプレイする乙女ゲームだった。 その中でも彼が夢中になっていたのは、『エテルニアの誓い』というゲームだ。 しかし、彼が推していたのはヒロインではなく、悪役令嬢だった。「お決まりの展開とはいえ、悪役令嬢っていつも報われないよな……」 このゲームの悪役令嬢、クラリス・フォン・ルクレールは、名門貴族の令嬢。 美しい金髪と赤い瞳を持ち、華やかなドレスを纏いながら、誇り高く振る舞う少女だった。 本来ならば彼女は、攻略対象の一人である王太子の婚約者。 しかし、物語が進むと王太子はヒロインに心を奪われ、クラリスは嫉妬深い悪女として扱われ、最終的に断罪される。 だが、一樹はそんな彼女の「努力」に気づいていた。 彼女は決して傲慢なだけの令嬢ではない。 王太子の隣にふさわしい貴族としての品格を身につけ、礼儀作法も完璧。 王家のために身を粉にして努力しているのに、ヒロインが現れた途端に「嫉妬深い悪役」にされてしまう。「こんなの、あんまりだろ……」 一樹は何度も彼女のバッドエンドを回避しようと試みたが、結局どのルートでも彼女は不幸になってしまった。 そんな悔しさを抱えたまま、一樹は病気のため、この世を去った。 次に目を覚ましたとき、一樹は眩しい光に包まれていた。「……え? 俺、生きてるのか?」一樹は断片的な記憶しかなく戸惑う。「え、ちょっ……何これ!? 俺、光ってる!?」 周囲を見渡すと、無数の光の粒が飛び交っていた。 それらは時折、人間の形のように見えたり、小さな光の球体のようになったりしている。(なんだ、このファンタジー空間は……あれ?ファンタジーってなんだろ?) 戸惑いながらも、周囲を観察するうちに気づいた。 ここは「世界樹の森」と呼ばれる場所で、精霊たちが生まれる場所らしい。 精霊としての時間は穏やかに過ぎていった。 光精霊として生まれた一樹は、同じ光の精霊たちとともに、空を舞い、魔力を蓄え、成長していった。 そんなある日、突然、彼の中に眠っていた記憶が一気によみがえった。「――っ!?」 頭の中に、かつての自分の記憶が流れ込んでくる。 病院で過ごした日々。 夢中になってプレイした乙女ゲ
Last Updated : 2026-07-30 Read more