LOGIN病弱だった前世を終え、異世界に光精霊として転生した俺――工藤一樹。 目覚めた世界は、俺が生前プレイしていた**乙女ゲーム『エテルニアの誓い』**にそっくりだった。 しかし、俺が推していたのはヒロインではなく悪役令嬢・クラリス・フォン・ルクレール。 彼女は公爵令嬢として完璧に振る舞うものの、ゲームでは報われることなく破滅する運命をたどる。 (そんなの許せるか! 俺が彼女を救ってみせる!) 精霊として人間界へ降り立った俺は、まずクラリスを探すことに。 しかし、たどり着いた先で出会ったのはまだ幼い5歳のクラリスだった――!? これは、"推し"を救うために奮闘する光精霊の物語である。
View More工藤一樹は、生まれつき体が弱かった。幼い頃から病院で過ごす時間が長く、自由に外で遊ぶことはほとんどなかった。
唯一の楽しみは、ベッドの上でプレイする乙女ゲームだった。
その中でも彼が夢中になっていたのは、『エテルニアの誓い』というゲームだ。
しかし、彼が推していたのはヒロインではなく、悪役令嬢だった。
「お決まりの展開とはいえ、悪役令嬢っていつも報われないよな……」
このゲームの悪役令嬢、クラリス・フォン・ルクレールは、名門貴族の令嬢。
美しい金髪と赤い瞳を持ち、華やかなドレスを纏いながら、誇り高く振る舞う少女だった。
本来ならば彼女は、攻略対象の一人である王太子の婚約者。
しかし、物語が進むと王太子はヒロインに心を奪われ、クラリスは嫉妬深い悪女として扱われ、最終的に断罪される。
だが、一樹はそんな彼女の「努力」に気づいていた。
彼女は決して傲慢なだけの令嬢ではない。
王太子の隣にふさわしい貴族としての品格を身につけ、礼儀作法も完璧。
王家のために身を粉にして努力しているのに、ヒロインが現れた途端に「嫉妬深い悪役」にされてしまう。
「こんなの、あんまりだろ……」
一樹は何度も彼女のバッドエンドを回避しようと試みたが、結局どのルートでも彼女は不幸になってしまった。
そんな悔しさを抱えたまま、一樹は病気のため、この世を去った。
次に目を覚ましたとき、一樹は眩しい光に包まれていた。
「……え? 俺、生きてるのか?」
一樹は断片的な記憶しかなく戸惑う。
「え、ちょっ……何これ!? 俺、光ってる!?」
周囲を見渡すと、無数の光の粒が飛び交っていた。
それらは時折、人間の形のように見えたり、小さな光の球体のようになったりしている。
(なんだ、このファンタジー空間は……あれ?ファンタジーってなんだろ?)
戸惑いながらも、周囲を観察するうちに気づいた。
ここは「世界樹の森」と呼ばれる場所で、精霊たちが生まれる場所らしい。
精霊としての時間は穏やかに過ぎていった。
光精霊として生まれた一樹は、同じ光の精霊たちとともに、空を舞い、魔力を蓄え、成長していった。
そんなある日、突然、彼の中に眠っていた記憶が一気によみがえった。
「――っ!?」
頭の中に、かつての自分の記憶が流れ込んでくる。
病院で過ごした日々。
夢中になってプレイした乙女ゲーム。
そして――悪役令嬢クラリスの無念な結末。
「……マジかよ……俺、転生したのか?」
精霊としての自分と、かつての自分の記憶がつながったことで、一樹は自分の置かれている状況を理解した。
「ってことは……この世界って、まさか……」
ゲームの世界オープニングに出てくる世界樹の森に似ている。
ここがまさに、あの乙女ゲームの世界なんじゃないか?
それからさらに月日が流れ、いよいよ精霊たちが世界樹の森を旅立つ時が来た。
精霊たちは、各地へと散らばり、自分を視認できる人間と契約を結ぶことになる。
光精霊である一樹も、その流れに従うことになった。
(もしこの世界が本当に『エテルニアの誓い』の世界なら……)
彼は考えた。
クラリスを救えるかもしれないと。
「悪役令嬢推しとして、これはやるしかねぇだろ!」
強く決意し、一樹は世界樹の森を飛び立った。
クラリスの誕生日会は、王都の社交界の中でも一大イベントだった。会場には煌びやかな装飾が施され、貴族たちの華やかな談笑が響いていた。特に、同世代の令嬢や令息たちが集まり、社交の場としても重要な役割を果たしていた。クラリスは中央に立ち、招待客たちと優雅に挨拶を交わしていた。そんな中、ヒカリとカインは少し離れた場所から会場を眺めていた。「すごいなぁ……クラリス、めっちゃ人気者じゃん」ヒカリが感心したように言う。カインは腕を組みながら冷静に周囲を見渡した。「まぁ、クラリスは公爵令嬢だからな。当然と言えば当然だ」「でも、こんなに人がいるのに、クラリスの本当の友達ってどれくらいいるんだろうな……」ヒカリの言葉に、カインはふと考え込んだ。確かに、クラリスは社交界では完璧な貴族令嬢として振る舞っている。だが、それは「表向きのクラリス」であり、本当に気を許せる友達がいるかは別の話だった。そんな時、ヒカリの視線がある二人の令嬢に留まった。「ん? あの子たち……」一人は、明るくてシャキシャキと話す令嬢。鮮やかなエメラルドグリーンのドレスを着ており、そのそばには風の上位精霊が浮遊している。もう一人は、どこかおどおどした雰囲気の令嬢。淡い水色のドレスを着ており、視線を落としがちで、大人しい印象を受ける。ヒカリは小声でカインに話しかけた。「あの子、まだ精霊と契約してないみたいだな」カインも彼女の様子を観察しながら頷いた。「確かに、精霊の気配がしない。おそらく、まだ契約していないのだろう」「でもさ、なんで契約できてないんだろ?」ヒカリは疑問を口にした。その時、会話に聞き耳を立てていた水精霊が控えめに口を挟んだ。「あ、あの……あのオドオドした子、水属性だね」「えっ、そうなの?」ヒカリが驚いたように水精霊を見る。水精霊は少し緊張しながら続ける。「うん……でも、たぶん明るい子の精霊が上位だから、その影響で契約できてないんだと思う……」カインは納得したように頷いた。「なるほどな。精霊は、契約者の魔力の流れに引き寄せられる。だが、すでに強力な精霊が傍にいると、新しい精霊が近づきにくい場合がある」ヒカリはしばらく考え込んだ後、突然、何かを思いついたように顔を上げた。「……だったらさ、水精霊、お前があの子の精霊になればいいんじゃね?」「な
湖畔の風が静かに吹き抜ける。ヒカリとカインは、クラリスが庭で花を摘んでいるのを遠くから眺めながら、今後のことについて話し合っていた。「クラリスはもうすぐ11歳か……」ヒカリがしみじみと呟く。「そうだな」カインも腕を組みながら答える。「貴族の子供にとって、11歳の誕生日は大きな意味を持つらしい。正式に社交界へ足を踏み入れる準備が始まる年齢だからだとクラリスが言っていた。」「そうだな……そして15歳で学園に入学する」ヒカリは湖の水面を眺めながら続けた。「そして……18歳の卒業舞踏会……」ヒカリの声が少し沈む。それを察したカインが、横目でヒカリを見た。「どうした? お前らしくもない暗い顔をして」「……いや、なんでもない」ヒカリは苦笑しながら頭を振った。「それより、11歳の誕生日会には貴族の子供たちが来るんだろ? クラリスに本当に信頼できる友達を作るチャンスだよな」カインは軽く頷く。「確かにな。クラリスの周りには、クラリスの顔色を伺いただ従うだけの取り巻きが多いが、それではいざという時に力にならない。クラリスが本当に信頼できる仲間を見つけることができれば、それが一番だ」「でもさ……そんな奴、本当に見つかるのか?」ヒカリは少し疑わしそうに言う。「クラリスの周りには、結局名家の連中ばっか集まるんじゃねぇの?」「その可能性は高いが、だからといって何もしないわけにはいかない」カインは静かに言った。「俺たちは精霊だ。クラリスを導き、支える役目がある。ならば、彼女の未来を少しでも良くするために動くのが当然だろう」ヒカリはしばらく考えた後、ゆっくりと頷いた。「……わかった。なら、俺たちもクラリスのために動くか」カインは口元に微かな笑みを浮かべる。「そういうことだ。誕生日会では、クラリスが本当に信頼できる相手を見つけられるよう、俺たちもそれとなく手助けする」「でもクラリスには気づかれないようにしないとな」ヒカリは苦笑しながら言う。「あいつ、気を遣いすぎるところあるから、俺たちが何かしようとしてるって分かったら、逆に遠慮しちまいそうだし」「それが一番の問題だな」カインは腕を組みながら考え込む。「だが、何もしなければ何も変わらない。俺たちができる範囲で、自然に導くしかない」ヒカリは軽く拳を握りしめ、カインに向かって突き出した。「よし、決ま
クラリスが眠りについた後、夜の静寂の中でカインはじっと考え込んでいた。ヒカリが魔法を使った。それがカインにとっては大きな衝撃だった。精霊の役割は、基本的に契約者へ魔力を供給すること。精霊自身が魔法を使うことは、通常あり得ない。契約者が強ければ強いほど、大量の魔力を引き出せるが、ヒカリには契約者がいない。それなのに――「ヒカリは、どうやって魔法を使ったんだ……?」カインは拳を握りしめ、ふと自分の手のひらを見つめた。「俺に……魔法は使えるのか?」考えても答えは出ない。ならば、やるしかない。カインはヒカリを探し、屋敷の庭に出た。「ヒカリ!」「ん? 何、カイン?」ヒカリは、まだ空に浮かんでフワフワと漂っていた。「お前、魔法を使うとき何を想像した?」ヒカリは即答する。「クラリスをすべてから守る盾をイメージしたよ」「……イメージか」ヒカリは楽しげに続けた。「そそ! 誰にもクラリスを傷つけられない盾をって! まぁ光の盾は出たけど、正直、弱すぎてダメだったな……」「……なら俺は、クラリスに攻撃しようとする敵を撃つイメージをするか」カインは目を閉じ、仮想の敵を思い浮かべた。クラリスに刃を向ける、見えない敵。それを焼き尽くす力。その瞬間、カインの手元に赤い炎が集まり、槍の形を成していく。「《焔の槍》」カインが投げ放った槍は一直線に飛び、庭の大木に直撃した。だが――「……ダメか」木の皮が少し焦げただけだった。「俺もヒカリのことは言えないな……」しかし、ヒカリは興奮していた。「カイン、すげーな! ちゃんと魔法になってるじゃん!」カインは腕を組みながら考え込む。(これは、俺の魔力なのか? それとも……)すると、水精霊が小さく震えながら言った。「ひ、火精霊も魔法使えるんだ……」カインは無言で夜空を見上げた。もし、精霊が魔法を使えるのならば。それは、今までの常識を覆すことになる。焦りにも似た感情が、カインの胸の奥に広がっていった。ヒカリの魔法を目の当たりにし、自分も魔法を使えたことで、カインの心の中に焦燥感が広がっていく。「精霊が……魔法を使うなんて、あり得るのか?」カインは自分の手をじっと見つめた。今、確かにそこには炎が宿っていた。しかし、それは本来、精霊が扱えるものではないはずだった。「ヒカリ、
夜の静寂が屋敷を包む中、ヒカリはひとり、裏庭で魔法の練習をしていた。「……我は君を守る盾となり、君を癒す存在になろう。我の魔法をとくと見よ……《シャイニングシールド》! そして、《シャイニングシャワー》!」両手を大きく広げ、誇らしげに詠唱を唱えるヒカリ「……うーん、もうちょっと言葉を変えてみようかな」「しかし俺、中二病みたいだな」ヒカリが額に手を当てて悩んでいると、不意に背後から声が聞こえた。「お前は、何をしているんだ、それに中二病とはなんだ……?」「えっ!?」ヒカリは驚いて振り向いた。そこにはカインが腕を組みながら、呆れたような表情で立っていた。「ま、まさか……聞こえてた?」「ああ……最初からな」「うわー、マジかー!」ヒカリは顔を両手で覆い、穴があったら入りたい気持ちになった。「……いやー、その、イメージトレーニングは大事かなって……」「うむ、一理あるな」カインは普通に頷く。「いや、そこは笑って誤魔化してくれよ!」「別に変なことじゃないだろう。むしろ、お前の魔法がどうなるのか興味がある」「えっ?」「実際に魔力を出して試してみろ」「え、いや、流石に無理じゃないか? 今までそんな魔法使ったことないし……」「言い出したのはお前だろ。さあ、やってみてくれ」「ぐぬぬ……」「ヒカリ少し待ってくれ」カインがヒカリの魔法を使うのは止めた。そしてクラリスに向かって言う。「クラリスちょっとこっちに来てくれ」自室の窓から見ていたクラリスを呼び寄せた「何カイン?」クラリスは呼ばれるままに裏庭に来た。「今からヒカリがクラリスに魔法を使うからそこに立っててくれ」クラリスは頷いた。「ヒカリ準備は出来たぞ」カインがそう言うとヒカリは渋々、再び魔力を込めることにした。「……我は君を守る盾となる。《シャイニングシールド》!」そう唱えながら、クラリスを守る光の盾を強くイメージする。その瞬間――「えっ……?」クラリスの周囲に、眩い光が集まり、純白の輝きを放つ半透明の盾が展開された。「ええっ!? えええええ!?」クラリスは目を見開いて驚いた。「……おお」カインは納得したように頷く。「な、なんだこれ!? 本当に出た!?」ヒカリは動揺し、光の揺らめきを見つめる。「どうやら、お前の魔力の操作は間違っていなかったようだな」カインが分