幸い部屋の鍵は変えられていなかったので、貴重品と服を何とか持ち出し、事務所に戻る。「とりあえず、荷物は事務所に置いておいていいから。奥の部屋、しばらくの間なら使ってもらっても大丈夫だけれど、ずっとはねえ……」 と、宮園さんは告げ、東雲さんの家に仕事に向かった。 ひとり残された私は、仕事をこなしながら、どうしたものかと悩んだ。 でも答えなんてずっと出ない。とりあえず、しばらく家、間借りさせてもらってどうするか冷静になって考えようか。 何がどうしてこうなったんだろう。 深くため息をつきつつも仕事をしていると、宮園さんが戻ってくる。 その表情はなんだか複雑そうだった。「あ、お帰りなさい」「あぁ、坂本さん。ねえ、東雲さんに何か言われた?」「え?」 宮園さんはデスクに腰かけながら言った。「東雲さんに、改めて貴方に仕事どうかって言われて。東雲さんから直接誘われたっんですって? 今の状況考えるとどうなのかしら、と思って」 確かに仕事に誘われた。 今の状況考えると、時間も増えるしその分給料も上がる。 でも私、仕事として家事、できるだろうか。 食事は大丈夫だと思うけど、それ以外は人並みだもの。 「東雲さんのお子さんが貴方になついているし、柏木さんも復帰はしばらく無理そうだから。病気も見つかったみたいで」「え?」 そうなんだ…… 私は顔を伏せて考える。何をするにもまずお金が必要だし。 私はぎゅっと、手を握りしめてゆっくりと顔を上げて宮園さんを見た。「あの、私受けます。東雲さんの家政婦。うまくできるかはわかりませんが……」「わかったわ。それでね、東雲さんが話をしたいって言っていたから、お迎えの前に家に行ってもらえるかしら? 私から連絡しておくから」「あ、はい。わかりました」 本当に家政婦するなら話しないと、だもんね。 宮園さんが東雲さんに連絡してくれて、三時頃にお宅に行くことになった。 私は重い気持ちを抱えながら東雲さんのお宅に向かう。 マンションを見上げれば、空に薄い灰色の雲が広がっているのに気がついた。 雨が降るような雲ではないかな。そんな空を見上げて息をついて、私はマンションの中に入った。 玄関で、東雲さんが笑顔で私を迎え入れてくれる。「お待ちしていました、坂本さん」「し、失礼します」 緊張しつつ私は頭を下げて
آخر تحديث : 2026-08-09 اقرأ المزيد