胃の奥から、激しい吐き気がこみ上げた。奏人は1階の洗面所へ駆け込み、洗面台に身を屈めて、何度もえずいた。吐き出せたのは酸っぱい胃液だけだった。喉が焼けるように痛んでも、止められない。内臓まですべて吐き出してしまいそうなほど、何度も繰り返した。目の前には、電流を流されて激しく痙攣する紗良の体が浮かんでいた。爪を剥がされた指からあふれ出した血。そして最後に、紗良が自分へ向けたあの目。違う。自分を見ていたのではない。化け物を見ていたのだ。奏人は鏡を見た。映っていたのは、血の気を失った自分の顔だった。額には冷たい汗が浮かび、その目にはまだ、奏人自身さえ見覚えのない残虐さと冷酷さが残っていた。ほんの数時間前。奏人はこの目で、苦しむ紗良を見ていた。何も感じないまま。「うっ……」再び吐いた。今度は胆汁まで込み上げ、あまりの苦さに涙がにじんだ。奏人はリビングへ駆け戻り、スマホを拾った。震える手で、もう一度動画を開く。きちんと見直さなければならなかった。あれは紗良ではない。自分の見間違いだ。映る角度や、暗い照明のせいだと確かめたかった。だが、何度見ても違わなかった。再生するたび、心臓を重い槌で叩き潰されるようだった。目に焼きついた一つ一つの光景と紗良の悲鳴が、奏人の胸を容赦なくえぐった。紗良だった。今日の午後、倉庫で「真帆を傷つけた女」だと思い込み、電流を流させ、両手の爪を剥がさせた相手。あれは紗良だった。3年間、狂ったように捜し続けた紗良。残りの人生を懸けて償うと誓った紗良。誰より愛していると、何度も口にしてきた紗良だった。「俺は……何をしたんだ……」奏人は呟いた。声はかすれ、自分のものとは思えなかった。「紗良に……俺は何をした……」なぜ、あのとき気づかなかったのか。倉庫は暗かった。顔はひどく腫れ、口もふさがれていた。それでも、あの目があった。どうして紗良の目だと分からなかったのだ。ほんの一瞬でも見れば、気づくべきだった。真帆だ。真帆に騙された。電話で真帆は、欲しかったワンピースを奪われ、殴られたと泣きついた。ボディーガードがその「おかしな女」を捕まえたとも言った。だが最初から最後まで、それが紗良だと
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