真帆の目から大粒の涙がこぼれ、真っ白なベールの上へ落ちた。「答えろ!」奏人の怒鳴り声が、静まり返った教会に響き渡った。「そうよ!私が愛してるのは奏人くん!」真帆はついに堪えきれなくなったように泣き叫んだ。「でも、奏人くんが一番愛してるのは紗良さんでしょう?紗良さんが戻ってきたからって、私を捨てたじゃない!奏人くんにとって特別なのはあの人で、私は何でもない!私が残ってどうするの?二人が幸せそうにしてるのを見てろっていうの?!」奏人は涙に濡れた真帆の顔を見つめ、大きく息を吸った。何かを決意したように、一言ずつ、はっきりと言った。「今は、違う」そう言うなり、周囲が息をのむ中、奏人は邪魔なベールを乱暴に取り払い、真帆の手を強く握ると、そのまま教会の外へ駆け出した。会場は一瞬で混乱に包まれた。参列者たちは声を上げ、人波が大きく揺れた。止めようとする者もいれば、面白がって見ようとする者もいる。押し合う人々に巻き込まれ、よろめく者までいた。紗良は人波に押され、頭の中が真っ白になっていた。耳の奥では、奏人の「今は、違う」という言葉だけが、何度も繰り返されていた。奏人が真帆の手を引き、人混みをかき分けて教会を飛び出していく。まぶしい陽射しの中、二人の絡み合うような後ろ姿は、走りながら次第に遠ざかっていった。一方の紗良は、人波に押されて足元を崩し、そのまま床へ倒れ込んだ。起き上がろうとしたが、人が多すぎた。無数の足が慌ただしくそばを行き交う中、必死に身をよけ、もがいても、どうしても立ち上がれない。そのときだった。耳をつんざくようなエンジン音が、急速に近づいてきた。教会脇の車道から、黒いスポーツカーが猛スピードで走ってくる。奏人が乗ってきた車だった。床に倒れたまま、紗良は恐怖に目を見開いて顔を上げた。次の瞬間、タイヤが両脚の上を通過した。耐えきれず、紗良の口から凄まじい悲鳴が上がった。「きゃああっ!」窓がわずかに開いていたのか、真帆の慌てた声がかすかに聞こえた。「奏人くん、今、誰かにぶつからなかった?降りて見たほうがいいんじゃない?」奏人の冷たい声は風にかき消されかけながらも、壊れそうな紗良の耳に届いた。「放っておけ。誰を轢いたとしても、金ならいくらでも払う」「今、
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