拓海を探しに行こうとしたそのとき、進行表を抱えた式場スタッフが小走りで近づいてきた。「柏木様、そろそろお時間です。グルームズマンの皆様もご準備をお願いします」拓海はカフスを直しながら「はい」と返した。そのとき初めて、拓海の隣にいるのが弟の水野悠真(みずの ゆうま)ではないことに気づいた。拓海の隣にいたのは、彩乃の弟・藤井健太(ふじい けんた)だった。健太はグルームズマン用のスーツ姿で、胸元には白い花飾りをつけていた。それは昨夜、私が悠真のために用意した小箱に入れておいたものだった。スーツを試着したとき、悠真は緊張して、手をどこに置けばいいのかも分からない様子だった。私が笑うと、悠真は花飾りを手に取り、しばらくじっと眺めていた。「姉ちゃん、明日は絶対、恥かかせないから」今、その花飾りは健太の胸元についていた。健太は胸元をぽんと叩き、屈託なく笑った。「似合ってるだろ?拓海さんも、俺のほうが似合うってさ」私は健太には目も向けず、拓海だけを見た。「悠真は?」「健太に替えた」「どうして?」「悠真はこういう場だと固くなるだろ。今日は柏木グループの株主や大事なお客様も来る。グルームズマンなら、もう少し場慣れしてるやつのほうがいい」「だから、悠真を外したの?」拓海は声を落とした。「もうすぐ披露宴が始まるんだ。今はこんな話してる場合じゃないだろ」悠真が外されたことも、拓海にとってはその程度のことらしい。私は何も言わず、そのまま控室へ向かった。悠真はソファの隅に座っていた。グルームズマン用のスーツはもう脱いでいて、古い白シャツの袖口が少し毛羽立っていた。私を見るなり、悠真はすぐに立ち上がり、手にしていたものを慌てて背中に隠した。「姉ちゃん、どうしたの?」私は悠真のそばまで行き、背中に隠そうとする手をつかんだ。握っていたのは、昨夜花飾りを入れておいたあの小箱だった。花飾りはなく、曲がった小さなピンが一本残っているだけだった。悠真はうつむき、耳まで赤くなった。「拓海さんに、健太が代わりに出るから、僕は出なくていいって言われた」少し黙ってから、悠真はぽつりと続けた。「姉ちゃん、僕はほんとに平気だから。ちゃんとできるか不安だったし」その声は、傷ついていることを悟られまいとするよう
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