All Chapters of 運命の番を監査する私、冷血アルファ王の偽装結婚を暴くはずが「お前こそ俺の唯一だ」と刻印されました: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話 父は法廷で「娘は嘘をついています」と証言した

第11話 父は法廷で「娘は嘘をついています」と証言した 七年ぶりに父と会ったとき、最初に思ったことは、「老けたな」だった。 もっと怒ると思っていた。 もっと怖いと思っていた。 あるいは顔を見ただけで、十七歳の頃の自分へ戻ってしまうのではないかと、昨夜はほとんど眠れないまま考えていた。 けれど実際に王宮法廷の証言席へ座る父を見た瞬間、頭に浮かんだのは、そんなひどく普通の感想だった。 白髪が増えた。 頬も少し痩せた。 昔は真っ直ぐだった背中が、ほんのわずかに丸くなっている。 それでも。 ヴァレリウス・ヴェイル。 灰牙群に属するヴェイル家当主。 私の父。 私を七年前、『家の恥だ』 と言った人。「リア」 隣から声がした。「……はい」「呼吸」「え?」「止めていた」 カエルだった。 法廷なので、いつものように私の隣にはいない。 王として、一段高い審理席の左側に座っている。 それでも生命共有があるせいで。 私が緊張していることは、全部ばれている。「大丈夫です」 小声で答える。 カエルの眉が動いた。 嘘だと分かっている顔。「今だけは」「何です?」「大丈夫と言っておけ」 意外だった。 いつもなら「嘘をつくな」と言うのに。「あとで聞く」
last updateLast Updated : 2026-08-18
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第12話 「その女を捨てれば王になれる」と言われた王は、自分から王位を止めた

第12話 「その女を捨てれば王になれる」と言われた王は、自分から王位を止めた 父親に法廷で嘘をつかれた日の夕食は、驚くほど味がしなかった。「リア様」「はい」「それ、三分ほど前から同じ場所を切っておられます」「……何がです?」「お肉でございます」 言われて皿を見る。 確かに。 私の前に置かれた牛肉の煮込みは、一口大を通り越して、細かな肉片になりつつあった。「考え事をしていました」「お肉に罪はございません」「分かっています」「でしたら、そろそろお召し上がりください」「はい」 マルタに叱られた。 二十四歳にもなって、食事のことで。 でも不思議と嫌ではなかった。 父から何を言われても、王都へ戻れば一人だった頃とは違う。 今は、食べないと叱る人がいる。 それだけでも。 かなり違う。 私は小さくなりすぎた肉を口へ運んだ。 やっぱり。 味がしない。「リア様」「今度は何です?」「塩を足されますか?」「味付けの問題ではないと思います」「承知しております」「だったら聞かないでください」「何かして差し上げたかったもので」 手が止まった。 マルタは食器を整えながら、こちらを見ない。 そういうところが。 ずるい。「……ありがとうございます」「いいえ」
last updateLast Updated : 2026-08-19
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第13話 殺された証人の手には、私の短剣が握られていた

第13話 殺された証人の手には、私の短剣が握られていた 人間は、自分の名前が刻まれた凶器を死体の手から発見されると、思ったより腹が立つらしい。 怖い。 もちろん怖い。 これからどうなるのかという不安もある。 けれど王都南門から半日ほどの街道で、殺された老薬師の遺体を前にした私が最初に感じたのは、恐怖よりも明確な怒りだった。「……雑」「何?」 隣にいたユアンが私を見る。「雑です」 もう一度言った。 馬車の脇。 草地に横たえられた老人。 胸には一つの刺創。 そして右手には、黒い柄の短剣が握らされている。 柄の根元。 銀色の文字。 R・V。 リア・ヴェイル。「人を殺しておいて何ですが、私を犯人にするなら、もう少し工夫してほしかったです」「リア」 後ろから低い声が飛んできた。 カエル。 近衛隊を率いて現場へ来ている。「今のお前が言う台詞ではない」「だってそうでしょう」「何がだ」「被害者が、犯人本人の名前入り短剣を握って死んでいるんですよ。こんな都合のいい証拠、三流の劇でももう少し考えます」「つまり罠だと」「罠でしょう」「即断するな」「分かっています」 言いながら。 腹が立つ。 カエルが正しい。 自分に不利な証拠だから偽物だ。 そう決めた瞬間、私は監査官ではなくなる。
last updateLast Updated : 2026-08-20
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第14話 王宮牢に入れられましたが、監査用の机を持ち込んだ王が一番おかしいと思います

第14話 王宮牢に入れられましたが、監査用の机を持ち込んだ王が一番おかしいと思います 王宮の牢獄という場所について、私は長いあいだ一つの偏見を持っていた。 暗い。 臭い。 寒い。 石壁には苔が生え、どこかから水滴が落ち、隣の牢からは人生を諦めた囚人の呻き声が聞こえてくる。 そういう場所だと思っていた。 実際には。「……机、大きくないですか?」「小さいと仕事がしにくいだろう」「そういう問題ではありません」 私は鉄格子の向こうに立つカエルを見た。 その後ろでは、近衛兵二人が大きな木製机を抱えている。 さらに別の兵士が椅子。 もう一人は書類棚。 そしてマルタは毛布と湯沸かし器まで持ってきていた。「陛下」「何だ」「ここ、牢屋ですよね?」「ああ」「私、殺人事件の重要参考人として拘束されてるんですよね?」「ああ」「何で執務室を作ってるんです?」「お前が牢の中からでも調べると言った」「言いましたけど!」「だから仕事ができるようにした」「限度があります!」 牢番が。 どうしていいか分からない顔をしている。 本当に申し訳ない。「法的に問題は?」 カエルが牢番へ聞く。「ええと……」 若い牢番が必死に記憶を探す。「机を持ち込んではならない、という規則は……ございません」
last updateLast Updated : 2026-08-21
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第15話 吹雪の山小屋で、「番だから触れる」は禁止です

第15話 吹雪の山小屋で、「番だから触れる」は禁止です 牢屋という場所は、外から見るより中に入ったほうが時間の流れが遅い。 時計がなくても分かる。 朝食が来る。 食べる。 書類を読む。 隣の牢にいるディンから話を聞く。 書類を読む。 昼食が来る。 また書類を読む。 そして顔を上げると、まだ午後になったばかりだった。「……暇ですね」「囚人が仕事をしながら言う台詞じゃないぞ」 隣の牢からディンの声。「仕事が足りないんです」「監査官って全員そうなのか?」「私が少し特殊みたいです」「少し?」「黙ってください」 姿は見えない。 石壁を挟み、鉄格子の向こうから声だけが来る。 三年前から王宮牢へ入っている文書偽造犯、ディン・ファレル。 昨夜、彼は七年前に月印監査院中央保管庫の鍵を複製したと証言した。 依頼人の顔は知らない。 名前も。 ただ。 いつも黒い手袋。 そして右手には銀色の焼け跡のような傷。「もう一度確認します」「何回目だよ」「四回目」「十分だろ」「証言っていうのは、同じことを何度聞いても内容が変わらないか確認する必要があるんです」「嫌な仕事だな」「嘘をつかなければ早く終わります」「俺は鍵を偽造した男だぞ」「だから時間がかかってるんですよ」 向こうで笑う。
last updateLast Updated : 2026-08-22
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第16話 あなたの失った三日間に、誰かがあなたの身体を使っていたとしたら

第16話 あなたの失った三日間に、誰かがあなたの身体を使っていたとしたら 信頼している人間から「拘束する」と言われたとき、人はどんな顔をするのだろう。 怒る。 裏切り者と罵る。 事情を問いただす。 少なくとも私は、そのどれかだと思っていた。 けれどカエルは。「そうか」 それだけだった。 雪の降り積もる山小屋の前。 十数人の武装兵に囲まれながら、彼は本当にそれしか言わなかった。「陛下」 思わず横を見る。「何だ」「それだけ?」「何が」「ローデンさん、あなたを拘束するって言ったんですよ」「聞こえていた」「もう少し驚きません?」「驚いている」「顔に出してください」「無理だ」 こんなときまで。 いつもの会話。 でも。 胸を通して流れてくるものは、いつもと違った。 怒っている。 かなり。 ただ。 ローデンへ怒っているというより。 何かを考えている。「カエル・ドラヴェン殿下」 ローデンがもう一度呼ぶ。「武器をお捨てください」「持っていない」「……そうでした」「服も半分ない」「それも確認しております」「確認するな」 こんな状況なのに。 ローデンの口元が、ほんの一瞬だけ緩んだ。
last updateLast Updated : 2026-08-23
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第18話 裏切ったはずの忠臣は、「信用されなくても構いません」と言った

第18話 裏切ったはずの忠臣は、「信用されなくても構いません」と言った 落ちる瞬間というものは、思ったより長い。 少なくとも私は、床が抜けて暗闇へ放り出されてから水面へ叩きつけられるまでの短い時間に、 ――また落ちるの? ――最近、走るか落ちるかしかしていない気がする。 ――監査官って、こんなに身体を使う仕事だったっけ。 と、かなりどうでもいいことを三つほど考える余裕があった。「リア!」「います!」「掴まれ!」「どこを!」「俺を!」「許可は!?」「今聞くのか!」「そっちがいつも聞くからでしょう!」 暗闇の中でカエルの腕が腰へ回り、次の瞬間。 ばしゃん、と。 二人まとめて冷たい水へ落ちた。「――っ!」 冷たい。 痛い。 寒い。 水を飲む。「リア!」 腕を引かれる。 顔が水面へ出る。「げほっ、げほ……生きてます!」「見れば分かる!」「確認です!」「喋れるなら大丈夫そうだな!」「その基準やめてください!」 足。 底。 つく。 思ったほど深くない。 腰くらい。「……処刑場って聞いたわりに」 私は咳をしながら周囲を見る。「ただの水路?」「まだ分からん」 カエルの声
last updateLast Updated : 2026-08-25
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第19話 「愛しているから従う」のではなく、「従わせるために愛していると思わされていた」

第19話 「愛しているから従う」のではなく、「従わせるために愛していると思わされていた」「――命令だ」 捕虜の男がそう言った瞬間。 私は、何が起きたのか理解できなかった。 さっきまで泣いていた。 十年間、好きでもない女を愛していると思わされていた、と。 この刻印を取ってくれ、と。 大の男が、恥も外聞もなく私の袖を掴み、ほとんど子供のような顔で頼んでいた。 それなのに。 今。 彼は笑っている。 心の底から幸せそうに。「監査官」「……何です」「ありがとう」 男の声は穏やかだった。「何が?」「やっと」 首筋。 黒い刻印。 脈打つ。「妻の役に立てる」 ぞっとした。「さっきと言ってることが違います」「何が?」「あなた、妻じゃないって」「何を言ってるんだ」 本気だ。 演技ではない。「俺は妻を愛してる」 カエルが一歩前へ出た。「リア、下がれ」「待って」「刻印が動いている」「だから見たいんです」「お前は本当に」「あとで怒ってください」「今怒っている!」「知ってます!」 胸から来ている。 かなり。 でも。 今は。 男。
last updateLast Updated : 2026-08-25
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