カトリーヌ・メイア女官長は、翌朝になっても完璧だった。 完璧であろうとしていた、という方が正しいかもしれない。 王妃宮の別室。 監査局保全官が二名、扉の外に立っている。 窓は開かず、机の上には水差しと薬湯ではないただの白湯。 カトリーヌは椅子に腰掛け、背筋を伸ばし、白い手袋をはめていた。 昨夜、倒れた人間とは思えないほど姿勢が整っている。 だが、顔色は紙のように白く、目の下には濃い影が落ちていた。 髪も、よく見ればわずかに乱れている。 ほんの一筋。 かつてのリディアなら、その一筋を見ても気づかなかっただろう。 いや、気づいても、気づいてはいけないものとして目を逸らしたかもしれない。 王妃宮では、乱れを見ることさえ無礼だった。 だが今のリディアは、その乱れを見た。 記録はしない。 ただ、見た。 この人も崩れるのだと思った。「おはようございます、リディア様」 カトリーヌは静かに言った。「おはようございます、カトリーヌ女官長」 リディアは向かいに座る。 隣にはギルベルト。 後ろにはロザリーとセオ。 この配置にも、カトリーヌはもう異議を唱えなかった。 昨日までなら「王妃宮の内情をそのように大勢で扱うのは」と柔らかく釘を刺していただろう。 だが今日は違う。 柔らかな釘を打つ力も、少し失っているように見える。 ギルベルトが、机の上に一枚の記録紙を置いた。「昨夜の証言を正式聴取として確認する」「はい」「ユージーン・ヴァルモント公爵の名を出したな」
Last Updated : 2026-09-27 Read more