白羽の会の資料は、美しかった。 それが、リディアの第一印象だった。 王国監査局の資料室に運び込まれた箱は、全部で七つ。 どれも白い封紙で包まれ、角には小さな羽根の印が押されている。 帳簿は紺革で綴じられ、背表紙には金の文字。 支援先一覧は月ごとに整理され、寄付者名簿は家格順ではなく五十音順。 受領証の写しも残っている。 礼状も保管されている。 地方修道院、王都病院、未亡人救済所、退役兵家族会、孤児院。 どこから見ても、几帳面で、清潔で、善良だった。 清潔すぎるほどに。「綺麗ですね」 セオが横で言った。 彼は白羽の会の帳簿を一冊開き、眉をひそめている。「綺麗すぎますね」 リディアは答えた。「やっぱり補佐官もそう思います?」「ええ」「普通、善意で動いている団体って、もっと字が乱れていたり、月末だけ妙に帳尻が合わなかったり、担当者が変わった時に書式が崩れたりするんですよね」「経験則ですか」「監査局にいると、善意も怠慢も筆跡に出ると学びます」「嫌な学びですね」「はい。でも結構当たります」 セオは帳簿のページをめくった。「白羽の会は、まるで最初から誰かに見られることを想定して作られているみたいです」「同感です」 リディアは、支援先一覧を指でなぞった。 配分額。 申請額。 承認額。 受領日。 感謝状の有無。 備考欄。 美しい。 しかし、美しさと正しさは同じではない。「ロザリー、旧印章の照合結果は?」 リディアが尋ねると
Last Updated : 2026-09-08 Read more