ヴェルクレア公爵家の処分通達は、王宮東棟の小会議室で読み上げられることになった。 広すぎない部屋だった。 天井も低く、窓も大きくない。 王宮の大審問室や中央議事室のような、権威で人を押し潰すための場所ではない。 だからこそ、逃げ場がなかった。 家族の顔が、近い。 父レオポルド・ヴェルクレア公爵。 母オルガ・ヴェルクレア公爵夫人。 妹セレスティナ。 そして、リディア。 同じ家の者たちが、同じ机の前に座っている。 かつてなら、これは家族会議だったかもしれない。 けれど今、机の上にあるのは茶菓子ではなく、処分通達書だった。 リディアは、王国監査局常任監査官候補として出席している。 家族の一員としてではない。 少なくとも、形式上は。 だが、形式が感情を消してくれるわけではなかった。 父の顔を見ると、胸の奥が硬くなる。 母の伏せた目を見ると、腹の底が痛む。 セレスティナが膝の上で指を握っているのを見ると、昔の小さな妹と、階段の下で泣いた妹と、孤児院で焦げた焼き菓子を出した妹が、全部重なってしまう。 面倒だ。 家族というものは、本当に面倒だ。 罪を裁つだけなら、もっと簡単だった。 だが、人間は帳簿の項目だけでは終わらない。 ギルベルトは、リディアの斜め後ろに座っている。 同席者として。 宰相として。 そして、リディアの隣にいる者として。 彼は口を出していない。 ただ、いる。 それが今日はありがたかった。 王太子府の担当官が、処分通達書を開いた
Last Updated : 2026-10-07 Read more