第59話 「次の席替えで、隣じゃなくなるかもしれない」ずっと隣だった私たちは、初めて別の席を引きました 月曜日の朝、教室へ入った私は、いつものように自分の席へ向かい、隣に座っていた篠宮君へ「おはよう」と声をかけた。「おはよう、高梨」 それも、いつも通りだった。 篠宮君はすでに数学の問題集を開いていて、机の端には私が転校初日に貸した、あの青いシャープペンシルが置かれている。ぼさぼさの黒髪も、太い眼鏡も、少し猫背になった姿勢も、今では見慣れすぎているくらい見慣れた光景だった。 だからこそ、その十分後に佐伯先生が教室へ入ってきて、出席簿を机へ置きながら何気なく口にした一言が、私たちにとって思っていた以上の問題になった。「そうだ、今週席替えするからな」 教室の空気が一気に動いた。「やった!」「先生、くじ?」「前後だけ調整あり?」「今度こそ窓際!」 あちこちから声が上がる。 私は最初、そこまで深く考えなかった。 席替えなんて学校では普通のことだし、今までだって何度も経験している。ただ、この学校へ来てからというもの、篠宮君はずっと私の隣にいた。転校してきた日に誰も座りたがらなかった彼の隣へ私が座ったのが始まりで、そのあと多少の前後移動はあっても、学校側の事情や文化祭準備の都合などが重なり、結局ほとんど隣同士のままここまで来た。 それを、今さら急に「別の席になるかもしれない」と言われた。 私は反射的に隣を見る。 篠宮君も、まったく同じタイミングでこちらを見た。「……高梨」「何?」「席替えするんだって」「聞いてたよ」「隣じゃなくなるかもしれない」「席替えだからね」「&hel
Dernière mise à jour : 2026-10-10 Read More