Tous les chapitres de : Chapitre 61 - Chapitre 69

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第59話 「次の席替えで、隣じゃなくなるかもしれない」ずっと隣だった私たちは、初めて別の席を引きました

第59話 「次の席替えで、隣じゃなくなるかもしれない」ずっと隣だった私たちは、初めて別の席を引きました 月曜日の朝、教室へ入った私は、いつものように自分の席へ向かい、隣に座っていた篠宮君へ「おはよう」と声をかけた。「おはよう、高梨」 それも、いつも通りだった。 篠宮君はすでに数学の問題集を開いていて、机の端には私が転校初日に貸した、あの青いシャープペンシルが置かれている。ぼさぼさの黒髪も、太い眼鏡も、少し猫背になった姿勢も、今では見慣れすぎているくらい見慣れた光景だった。 だからこそ、その十分後に佐伯先生が教室へ入ってきて、出席簿を机へ置きながら何気なく口にした一言が、私たちにとって思っていた以上の問題になった。「そうだ、今週席替えするからな」 教室の空気が一気に動いた。「やった!」「先生、くじ?」「前後だけ調整あり?」「今度こそ窓際!」 あちこちから声が上がる。 私は最初、そこまで深く考えなかった。 席替えなんて学校では普通のことだし、今までだって何度も経験している。ただ、この学校へ来てからというもの、篠宮君はずっと私の隣にいた。転校してきた日に誰も座りたがらなかった彼の隣へ私が座ったのが始まりで、そのあと多少の前後移動はあっても、学校側の事情や文化祭準備の都合などが重なり、結局ほとんど隣同士のままここまで来た。 それを、今さら急に「別の席になるかもしれない」と言われた。 私は反射的に隣を見る。 篠宮君も、まったく同じタイミングでこちらを見た。「……高梨」「何?」「席替えするんだって」「聞いてたよ」「隣じゃなくなるかもしれない」「席替えだからね」「&hel
last updateDernière mise à jour : 2026-10-10
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第60話 「三年生になったら、本当の名前に戻ろうと思う」冴えない転校生が初めて自分で選んだ“九条蓮司”

第60話 「三年生になったら、本当の名前に戻ろうと思う」冴えない転校生が初めて自分で選んだ“九条蓮司” 席替えから三日が経った水曜日の朝、私は新しい席へ鞄を置きながら、すでに目の前に立っている篠宮君を見上げた。「おはよう」「おはよう、高梨」「今日も来たね」「来た」「毎朝来るなら、席が離れた意味あんまりなくない?」「授業中はちゃんと自分の席にいる」「それは褒められることじゃなくて普通なんだよ」「でも昨日、休み時間も二回しか来なかった」「数えてるんだ」「減らしたから」「何回から?」「最初は全部の休み時間に来ようと思ってた」「重いよ!」 思わず声が少し大きくなり、近くのクラスメイトがこちらを見る。 私は慌てて声を落とした。「篠宮君、席が離れたからって、十分ごとに生存確認しなくていいからね」「生存確認ではない」「じゃあ何?」「高梨がいるの見たい」「もっと悪い言い方になった!」 本人は真面目なのだから困る。 そこへ窓側の席から美咲がやってきた。「おはよう。篠宮君、今日も出勤してる」「出勤?」「紗季の席に」「朝の挨拶」「毎朝?」「今のところ」 美咲が私を見る。「紗季、どうするの?」「何が?」「このまま許したら卒業まで毎朝来るよ」「そこまでしないと思う」「する」 篠宮君本人が言った。
last updateDernière mise à jour : 2026-10-11
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第61話 「次のデートは俺が決めたい」御曹司が選んだ場所は、高級レストランではなく水族館でした

第61話 「次のデートは俺が決めたい」御曹司が選んだ場所は、高級レストランではなく水族館でした 木曜日の昼休み、私は新しい席で英語のプリントを片づけながら、教室の後ろからこちらへ歩いてくる篠宮君を見ていた。 席替えから一週間も経っていないのに、彼が私の席まで来る姿はすでに見慣れ始めている。「高梨」「今日は何?」「その言い方、俺が毎回何か用事あるみたい」「実際あるでしょう。朝も来たし、二時間目の休み時間も来たし」「二時間目はプリントの範囲聞いただけ」「隣の人に聞けばよかったじゃん」「高梨に聞きたかった」「範囲は誰に聞いても同じだよ」「でも高梨に聞くと話せる」「目的そっちでしょう」「半分」 最近この人は、「半分」という言葉を覚えてから妙に便利に使う。 全部私が理由だと言えば重いと言われるし、まったく関係ないと言えば嘘になる。だから「半分」と言えばだいたい許されると思っている節がある。「それで、今日は何?」「今度の日曜日」「うん」「空いてる?」「午前中は店の手伝い。午後なら」 私が答えると、篠宮君の表情が少し明るくなった。「デートしたい」「今度は蓮司が決める番だったね」「うん。決めた」「もう?」「かなり考えた」「また調べすぎてない?」「前よりは」「その『前より』が信用できないんだよなあ」 私は笑いながら机の端へ肘をついた。「どこ?」 篠宮君が一度だけ周囲を見る。 近くにはクラスメ
last updateDernière mise à jour : 2026-10-12
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第62話 「お兄様、恋人ができてから普通すぎません?」御曹司の妹が学校帰りに突然やって来ました

第62話 「お兄様、恋人ができてから普通すぎません?」御曹司の妹が学校帰りに突然やって来ました 水族館へ行った翌日の月曜日、私は朝から少し眠かった。 別に帰りが遅かったわけではないし、夜更かししたわけでもない。ただ、寝る前になって篠宮君から送られてきた青いクラゲのキーホルダーの写真を見返してしまい、そのあと水族館でのことを思い出し、さらに海沿いのベンチでしたキスまで思い出した結果、布団へ入ってからなかなか眠れなくなっただけだ。 自分でも十七歳らしいと言えば十七歳らしいし、落ち着きがないと言えばその通りだと思う。「おはよう、高梨」 教室へ入ると、今日も私の席の横に篠宮君がいた。「おはよう。今日は何分いる予定?」「ホームルーム五分前まで」「自分で時間決めてるんだ」「佐伯先生に毎朝戻れって言われるから」「言われる前に戻ること覚えたんだね」「うん」 篠宮君が少し得意そうにする。「そこ褒めるところじゃないよ」「でも改善した」「改善前がひどいの」 私は笑いながら鞄を置いた。 篠宮君の学校鞄には、当然ながら昨日買ったクラゲのキーホルダーはついていない。「クラゲは?」「家で使ってるバッグにつけた」「本当に使ってるんだ」「使うって約束したから」「約束まではしてないよ」「でも高梨が『使うならいい』って」「言ったけど」「朝、かなり見た」「そんなに気に入った?」「昨日思い出すから」「はいはい」 軽く返すと、篠宮君が少し不満そうな顔になる。「最近、高梨『はいはい』増えた
last updateDernière mise à jour : 2026-10-13
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第63話 「赤点を取ったら次のデートどころじゃないよ」御曹司に勉強を教わったら、放課後の補習が本気すぎました

第63話 「赤点を取ったら次のデートどころじゃないよ」御曹司に勉強を教わったら、放課後の補習が本気すぎました 美玲ちゃんが演劇部への入部を決めた翌日、私たちの教室では、それとはまったく別の意味で逃げられない現実が突きつけられた。「来週から定期考査二週間前だからな。文化祭前後で授業進度がかなり乱れた教科もあるが、それを理由に範囲が狭くなると思うなよ」 朝のホームルームで佐伯先生がそう言った瞬間、教室のあちこちから悲鳴に近いため息が上がった。「先生、それはひどくないですか?」「文化祭で授業潰れたの学校側ですよね?」「だったら範囲も減らしましょうよ」 次々と不満が飛ぶ中、佐伯先生はまったく動じない。「授業が潰れたぶん、補足プリントも出してる。あと、今さら私に文句を言っても試験問題を作るのは各教科担当だから無駄だ」「先に逃げた!」「教師としてどうなんですか!」「現実を教えるのも教育だ」 そう言われてしまうと反論しづらい。 私は配られた考査範囲表へ目を落とし、最初の国語と英語までは「まあ何とかなる」と思っていた。 問題は、その下だった。 数学。 数列と図形。 物理。 力学。 私は思わず小さく唸った。「高梨」 少し離れた後ろの席から声がする。 振り返ると、篠宮君がこちらを見ていた。「何?」「今、かなり嫌そうな顔した」「数学と物理見たらね」「苦手?」「苦手ってほどじゃないけど、得意ではない」「前回何点?」「数学七十二、物理六十八」「赤点ではない」
last updateDernière mise à jour : 2026-10-14
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第64話 「篠宮君、勉強会なのにケーキを三回断るのやめて」御曹司をうちの店に連れてきたら、友達まで彼の不器用さを知りました

第64話 「篠宮君、勉強会なのにケーキを三回断るのやめて」御曹司をうちの店に連れてきたら、友達まで彼の不器用さを知りました 最初の勉強会から三日後の金曜日、私たちは予定通り、パティスリー・ソレイユの二階で二回目の勉強会をすることになった。 考査まで残り十日ほど。 相沢君は数学で六十点、私は八十点という目標を決め、美咲は「とにかく後半の大問まで手をつける」、莉奈は「数学で前回より五点上げる」と、それぞれ現実的なのか少し背伸びなのかわからない目標を設定している。 そして篠宮君だけは、自分の点数目標を聞かれても「前回よりケアレスミスを減らす」としか言わなかった。「それ点数目標じゃないでしょう」 昼休み、私がそう言うと、少し離れた席からこちらへ来ていた篠宮君は困ったように考えた。「でも前回九十八だったから、百点って言うしかなくなる」「腹立つなあ」 美咲が即座に言った。「篠宮君、本当にそれ学校で大きい声で言わないほうがいいよ」「今かなり小声」「声量の問題じゃない」「じゃあ何て言えばいい?」「『俺もミス減らしたい』くらいでいい」「でも点数聞かれたら?」「そこまで細かく正確に答えなくても人間関係壊れないから」「曖昧にする?」「嘘は駄目だけど、全部開示する義務もないでしょう」 篠宮君が少し考える。「最近、その区別かなり増えた」「何が?」「嘘をつかないことと、何でも話すことは違うって」 私が一瞬黙る。 あの人は最初、私が「嘘をつかない人が好き」と言った言葉を、ずっと強く覚えていた。「そうだね」「前は、隠したら全部嘘になると思ってたかも」
last updateDernière mise à jour : 2026-10-15
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第65話 「八十一点。約束だから、お願いしてもいい?」御曹司に教わった数学で目標を超えたら、逃げられなくなりました

# 第65話 「八十一点。約束だから、お願いしてもいい?」御曹司に教わった数学で目標を超えたら、逃げられなくなりました 定期考査初日の朝、私はいつもより十五分早く教室へ着いた。 試験前日に夜更かしをするとろくなことにならないと母にも篠宮君にも念を押されていたので、昨日は十一時前には布団へ入ったのだけれど、目を閉じたあとになって数列の公式が頭に浮かび、「あの問題でもし一般項が出なかったらどうしよう」「物理の単位を間違えたら嫌だな」と考えてしまい、結局いつもより寝つきは悪かった。 それでも睡眠不足というほどではない。 むしろ問題は、学校へ着いた途端に周囲の空気へ飲まれたことだった。「ここ絶対出るって!」「いや先生、昨日ここ飛ばしたから出さないでしょう」「それが逆に怪しいんだって」「英単語あと二十個しか覚えてない!」 教室中で最後の確認が始まっている。 こういう時間に新しいものを見ると余計に混乱するとわかっているのに、誰かが「ここ出る」と言えば気になるし、自分だけ知らない公式が書いてあるような気までしてくる。 私は自分の席へ座り、数学のノートを開いたところで、一度深く息を吐いた。「高梨」 声がして顔を上げる。 今日も篠宮君が教室後方の自分の席からこちらへ来ていた。「おはよう」「おはよう。今日は早いね」「高梨も」「落ち着かなくて」「昨日何時に寝た?」「十一時前には布団入った」「勉強は?」「十時半で終わり」「よし」「何、その確認」「夜中までやってないか気になった」「蓮司こそ?」「学校」「あ」 私は周囲を確認して声を落とす。「篠宮君こそ何時まで?」「十時まで。そこから風呂入って本読んで寝た」「珍しい。もっと勉強するかと思った」「莉奈に『前日に詰め込んで睡
last updateDernière mise à jour : 2026-10-16
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第66話 「蓮司くんって、もう一回呼んで」約束のプラネタリウムで、御曹司が子供みたいに照れました

第66話 「蓮司くんって、もう一回呼んで」約束のプラネタリウムで、御曹司が子供みたいに照れました 数学の答案が返ってきた翌日、教室では他の科目の返却も始まり、朝からあちこちで喜びと悲鳴が入り混じっていた。「英語、七十八。前回より三点上がった」 美咲が答案を見せてくる。「いいじゃん」「でも現代文七十六だった。もう少し欲しかったな」「十分でしょう」「紗季は?」「英語八十三。国語七十九」「安定してるね」「数学だけ急に八十一だったから、自分でもそこが一番嬉しい」「そこは篠宮先生のおかげ?」「先生って言ったら本人嫌がるよ」「じゃあ家庭教師彼氏」「もっと嫌な言い方になった!」 私たちが笑っていると、後ろのほうから相沢君の声が飛んできた。「高梨! 英語何点だった?」「八十三」「うわ、負けた」「相沢君は?」「六十八。前より十二上がった」「すごいじゃん!」「篠宮に『長文で止まるな』って言われたのと、桜井の読み方真似したら結構いけた」「ちゃんと成果出てる」「だろ?」 少し得意そうだった。 そこへ当の篠宮君が、自分の答案を持ってこちらへやってくる。「相沢、英語六十八おめでとう」「お前は?」「九十六」「聞かなきゃよかった」「何で?」「こっちが十二点上げて喜んでんのに、お前平然と九十六出すからだよ」「でも相沢は前回よりかなり上がった」「そういう正論っぽい慰め、今日は嫌じゃない
last updateDernière mise à jour : 2026-10-17
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第67話 「下手でも笑わないでくださいね」御曹司の妹の初舞台は、たった一言の台詞から始まりました

第67話 「下手でも笑わないでくださいね」御曹司の妹の初舞台は、たった一言の台詞から始まりました プラネタリウムへ行った翌週の木曜日、昼休みになってすぐ、篠宮君が珍しく自分の席から動かないままスマートフォンを見ていた。 席替えをしてからというもの、朝は私の席まで来るし、昼休みも相沢君と食べる日以外はだいたいこちらへ顔を出すので、逆に来ないと少し気になる。「紗季」 美咲が、私の視線の先を追って小さく笑った。「気になるなら行けば?」「何が?」「篠宮君」「別に気になってないよ」「三回見た」「数えないで」「席替えしてから、紗季も結構わかりやすくなったよね」「前からこんなもんでしょう」「前は隣にいたから見る必要なかっただけじゃない?」 その指摘には少しだけ言い返しにくい。 私は弁当箱の蓋を開けながら、もう一度だけ教室の後ろへ視線を向けた。 すると今度は篠宮君と目が合った。 本人が立ち上がる。「ほら来た」「美咲、実況しないで」 篠宮君はスマートフォンを持ったまま私たちのところへ来た。「高梨」「何?」「今週の土曜日、予定ある?」「午前中は店。午後なら空いてると思うけど」「美玲の学校へ行かない?」「美玲ちゃん?」 その名前を聞き、美咲も顔を上げる。「演劇部の?」「うん」 篠宮君が少しだけ笑った。「入部した」「本当に?」「先週正式に」「よかったじゃん」
last updateDernière mise à jour : 2026-10-18
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