第49話 「どうして、うちの息子なんですか?」御曹司の父に聞かれて、私は三十三円のシャープペンシルの話をしました 金曜日の放課後、私は帰りのホームルームが終わっても、すぐには席を立つことができなかった。 このあと篠宮君の家へ行く。 正確に言えば、世界的財閥である九条家の本邸へ行き、九条グループの経営を実質的に担っている篠宮君の父親、九条隆臣さんと改めて話をすることになっている。 文化祭の前後にも九条家へ足を運んだことはあるし、征一郎さんや宗一郎さんともすでに話しているのだから、今さら本邸そのものに驚く段階ではないはずなのに、「恋人の父親から正式に話がある」と考えた途端、それまでとは別種類の緊張が朝からずっと胃のあたりに居座っていた。「紗季、まだ帰らないの?」 美咲が鞄を肩へ掛けながら私の机へ来た。「帰るというか、これから行く」「ああ、今日だったね。篠宮君のお父さん」「うん」「顔怖い?」「会ったことはあるよ。でも今日は私に話があるっていうのが怖い」「何聞かれるか予想してる?」「お母さんからは『家柄の話されたら普通に答えなくていい』って言われたし、篠宮君からは『面接じゃないって三回確認した』って言われたし、玲華さんからは昨日『夫は不器用だから、言い方が堅くても怒っているとは限りません』って連絡来た」「周囲が全力で予防線張ってるじゃん」「それが逆に怖いんだって」 美咲が笑いながら、隣の席へ視線を向ける。 篠宮君は少し離れたところで相沢君に捕まっていた。「なあ篠宮、お前今日また家の用事?」「うん」「高梨も一緒?」「うん」「おお、ついに親公認の挨拶?」 相沢君の声が少し大きい。「違う!」
Última atualização : 2026-09-30 Ler mais