【華栄14年・1月】 年が改まっていた。端毬の城下でも、門に新しい飾りが出ている。帝国と同じ暦を使い、1月を年の始まりとする土地だった。 奈世はそのことに、朝から引っかかりを覚えていた。国は違う。盟主も違う。それなのに元号は「華栄」のままだ。清蓮城内の廊下を歩きながら、奈世はその妙を口にした。隣を歩くのは源次。先を歩くのは党吉。烈焔はすでに広間へ入っているらしい。 「この地でも、“華栄”の号を使うのだな」 党吉が振り返らずに答える。 「使う。去年も、一昨年もな」 「帝国の皇帝が即位した際に定まった号だぞ。同じ号を使えば、皇帝を崇めることにはならんのか」 党吉は「がっはっは!」と、いつものように豪快に笑った後で答えた。 「敵を倒すには、まず敵を知ることだ。使っている元号が違えば、日の感覚が狂う。敵の書状を奪っても、書いてある日付を読み違えればそれが致命傷にもなる。それに、我らの元から帝国に侵入している間者も多い。使う元号の違いで正体がバレるようなことであれば、つまらんだろう」 それはつまり、実用性という話だろうか。敵と対等に戦うために、敵と同じ時の感覚を持つ――。 「単に自分たちの元号を定めるのが面倒なだけでは……」 源次が遠慮がちに言った。党吉は再び、高らかに笑う。 「がっはっは! 面倒、か。それも少しはある」 「少し、でござりまするか……」 やや呆れたように言う源次。だがそれを気兼ねすることなく、党吉は話を続けた。 「いずれ帝国を滅ぼし、そのとき我らの新たな元号を制定する。それを支配の証とするのだ」 なるほど、物は言いようだ。だが信焔が制定する元号となると、一体何になるのだろう。“信焔元年”と、自分の名をそのまま元号にするのではないか――などと奈世は考えたが、黙っておいた。 「なるほど、では盟主殿が新たに元号を制定されれば、“信焔元年”となるのでござるか?」 と、源次に先に言われる。奈世は源次を睨むが、党吉はまた「がっはっは!」と笑った。 「“信焔元年”か! それはさぞかし愉快だな!」 どうやら本気でそうなる未来が見えてきた気がした。そんな盟主が、今は奈世の夫なのだ。慣れるしかないのかと思いつつ、奈世は何やら頭痛を覚えた。 と、広間の戸が見えてきた。党吉が戸を開くと、中にはすでに連合各国の武将が
Zuletzt aktualisiert : 2026-09-08 Mehr lesen