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第29話:奪還と残された足場

last update publish date: 2026-09-16 23:59:17
城内の広間で、算衛門が窓の外を見ながら言った。

「今日も塀に捕虜を磔にしておるのですか」

その横で秀久が、茶器を手にしながら言う。

「昼は見せしめだ。夜は愛でる。2つ役割を担ってもらう。だが、見せしめの効果はまだないようだがな」

「それが、ようやく効果を発揮したようでござりまする。城下にひとつ、不自然な人の流れが見えますれば」

秀久は器の縁をなぞった。

「とうとう信焔の奥方が取り返しに来たか――ぐふふ、我が姫よ。であれば、従者は取り返されても構わぬ。所詮は前菜よ」

「おやおや、あのように重宝されておりましたのに、もういたのでござりまするか」

算衛門は笑わなかった。笑わぬ目が、城下の西の角を見つめていた。

西の角の下で、行商が捕虜を見張っている役人たちに声をかけた。「この荷を見てほしいのでござりまするが……」と言えば、ずっと見張り続きで飽きたと見える役人の1人が、塀を降りて近づいてくる。

「これは世にも珍妙な、暗闇で光る石にござりますれば。おお、そこの路地がちょうどよい。あそこでご覧に入れまする」

路地に入ったところで、声が消えた。離れて見ていたもう1人の役人が、不審に
道中ヘルベチカ

※2026/9/20 21:05(JST)更新

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