「総大将殿、考え直されよ。先ほど“手柄を急くあまり、無謀な攻めに出るな”と申したのは、総大将殿ではあるまいか」 攻めに出ると言う烈焔を克時が説得しようとするが、この若き総大将は耳を貸さなかった。 「俺はこれを無謀とは思っておらん。むしろ、敵が引いたということは、攻められては困ると言っているようなもの。そこを逆手に取るのだ」 閉じた門を見ながら言う烈焔に、克時はなおも食い下がろうとする。 「しかし、門は堅く閉じられておる……どうやってこじ開けるのだ?」 烈焔は答えず、兵たちの後方を指した。 「我らが何のために森に潜んでおったと思っておる」 指の先で、数十の兵が動いていた。彼らが肩に担いで運んでくるのは、切られた巨木だ。 樹皮のまだ新しいその巨木が、大手門の前に据えられる。間を取り、兵たちは息を合わせた。 「うらあああああ!」 「おりゃああああ!」 巨木が城の閉ざされた大手門を突く。薄い石垣の城にしては、扉だけが厚い。1打目では破れない。2打目で金具が鳴る。そして3打目で、きしみが門の向こうまで届いた。 ※ 城内の広間で、秀久が茶器を置いた。置き方が雑だった。縁が皿に当たる。 「やつら、無理やりにでも門を破り、城に乗り込んでくる気だ! どうする!?」 算衛門は窓の外を見ていた。巨木が門に当たるたびに、石がパラパラと落ちる。 「確かに予想外でござりまするが、それはやつらが予想外の阿呆だったというだけのこと」 鼻で笑い、弓の配置を顎で示した。 「先ほどと同じように、弓の雨を降らせてやりましょうぞ」 秀久は器の縁をなぞった。なぞる指が、いつもより早い。 「……そうだな。門が開いたところで、中は同じだ。同じ罠で足りる」 そう言って、自分を納得させる声だった。 ※ 間もなく、門は破れた。 裂けた板の向こうに、細い通路と、両脇の高い塀が見える。烈焔が刀を抜いた。 「かかれー!」 本隊が一気に門へ殺到する。百騎に近い数が、破れた隙間へ流れ込む。その頭上から、昼間と同じ弓の雨が落ちた。矢羽が風を切り、最初の数本が肩を探す。 まんまと罠にかかった——かに見えた。 だが、矢が届いた先で、乾いた音がした。貫かれたのは肉ではない、木だ。 兵たちの頭上も、側面も、森の木を削った盾で隙間なく塞がれている。兵がまるで塊のよ
Zuletzt aktualisiert : 2026-09-21 Mehr lesen