その言葉に、礼次は雷に打たれたような衝撃を受けた。あの日、沙羅が見せた不自然な態度が脳裏によみがえった。「願いはきっと叶うから」と言っていたことも、黙々と荷物をまとめていた姿も。今になって思えば、すべて前触れだったのだ。あのときにはもう、沙羅は礼次のもとを去ると決めていた。「駄目だ!」礼次はドアを開けようとしたが、梨香に腕をつかまれた。「礼次!今日は私たちの結婚式なのよ!何をするつもりなの!」その言葉に動きを止めて振り返ると、梨香は声を上げて泣いていた。頭から冷水を浴びせられたように、礼次はようやく我に返った。「悪い、梨香。俺はただ……どうしてなのか、聞きたかっただけだ」「今朝、私をヨーロッパへ追いやろうとしたから」沙羅は静かに言った。「今こうして、瀬川さんとの結婚式へ向かっているから。そして、この7年間、あなたが一度も私を心から愛してくれなかったから」ちょうどそのとき、蒼介が窓を閉め、車はゆっくりと動き出した。朝倉家の車列が橋を離れていき、しばらくして高城家の車列も走り出した。二つの車列は、それぞれ別の方向へ進んでいった。礼次は無意識に振り返り、遠ざかっていく車を目で追おうとした。「礼次……」梨香の声に、礼次はようやく我に返った。「悪い、梨香。さっきは……少し……」礼次は梨香の手を握ったが、口にする言葉はどれも空々しく、結局まともに説明することさえできなかった。そんな礼次の胸に、梨香は身を寄せた。「礼次、何も言わなくていいの。全部分かってるから。藤崎さんは、あなたが苦しかった時期をずっとそばで支えて、一緒に苦労して、立ち直るまで付き添ってくれたんだもの。未練が残るのも当然よ。でも藤崎さんにも新しい相手ができたんだから、私たちは喜んであげるべきでしょう?」梨香はすっかり忘れているようだった。そもそも礼次が梨香との結婚を急いだのは、梨香が遊び人の蒼介と結婚しようとしていると知り、このままでは不幸になると思って式から連れ去ったからだ。礼次は腕の中の梨香を強く抱き締めた。何か言おうとしたが、車は刻一刻と式場へ近づいていた。今さら何を口にしても、もう遅かった。結婚式が終わったら、沙羅ときちんと話そう。そうすれば、きっと許してくれる。礼次はそう考えていた。
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