隼人は、じっとスマホに届いた彩花からのメッセージを見つめていた。『富橋ひなたという方が、うちのオフィスに来ました。婚約者である私がどういう人か見たかったそうです。どういう人なのか、また聞かせてください』 妙な苛立ちを覚えた。ひなたが彩花の元を訪れて、何かしらのマウントを取ったことは見当がつく。「あいつ、余計なこと……」 大きな溜息をついて、隼人はスマホをデスクの上に置いた。 ドアのノック音が聞こえたのは、そんな時だった。「はい?」 隼人が声をかけると、ドアが開いた。「良かった、まだいた」 屈託ない笑みを浮かべたひなたが入ってきた。「何の用だ?」「用事がないと来ちゃいけないの?」「悪いが、お前みたいな暇じゃないんだ、こっちは」「冷たいね、相変わらず隼人兄ちゃんは」 応接用のソファーに呑気に深々と座るひなたを見て、隼人の苛立ちはますます募っている。「お前、今日彩花の会社に行ったらしいな?」「何? もう隼人兄ちゃんの耳に入ったの? あの女も分かりやすいね、隼人兄ちゃんに告げ口するなんて」 隼人は向かい合うようにして、ソファーに座り込むと、「どういうつもりだ?」「何が」「とぼけるな。俺の婚約者がどんな相手か、わざわざ彩花を調べるようなことして」 数分前の笑顔が嘘のように、ひなたは突然冷たい表情になった。そんなひなたの顔を見て、隼人は思わず警戒した。「あんな女、辞めた方が良いよ」「お前にそんなこと言われる覚えはない。お前に何が分かるんだ」「分かるよ。私はね、あの女よりもずっと前から隼人兄ちゃんのこと見てきたの。あんないつ潰れるか分からない小さい会社の社長なんかと結婚して、隼人兄ちゃんにどんなメリットがあるの?」 彩花を悪く言われたことが、隼人には許せなかった。婚約者のフリだけだったはずが、今や隼人にとって彩花の存在が大事なものになっていることは、自分自身が一番よく分かっていた。「周りにどう言われようが、俺はあいつと結婚する。邪魔する奴は、例え相手が誰でも容赦しないからな」 隼人は思わず声を荒げた。「失礼します。社長、どうかされましたか?」 隼人の声を聞いて、千晴が駆け込んできた。「いや……何でもない」「ひなたさん。社長もお忙しいんです、プライベートなことでしたら、改めていただけませんか?」 冷静に諭す千晴を見て、
Last Updated : 2026-09-03 Read more