目を覚ますと、鼻をつくほど消毒液の匂いがした。体中が軋むように痛い。頭もぼんやりしていて、ひどく気分が悪かった。看護師に聞いてようやく事情が分かった。昨夜、俺は自宅の玄関前で倒れていたらしい。それを見つけた近所の人が、病院まで運んでくれたのだという。ふと、ひまりが電話口で口にした、悠真お兄ちゃん、という言葉が脳裏をよぎった。深見悠真。美月の初恋の相手だ。ちょうど昼時だった。病室のあちこちから、患者と見舞いに来た家族の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。けれど俺のベッドのそばには誰もいなかった。しばらく黙って天井を見つめたあと、結局俺は美月に電話をかけたが、やはり出ない。SNSを開いてみると、少し前に美月が新しい投稿をしていた。【大好きな人たちと、最高の連休を満喫中】添えられていた写真には、美月と悠真が娘を挟んで肩を寄せ合い、観光地を背景に満面の笑みを浮かべていた。どう見ても、仲睦まじい三人家族だった。思わず自嘲の笑みが漏れる。傷つかなかったと言えば嘘になる。だがこんなこと一度や二度じゃない。もう慣れてしまった。俺はその投稿にわざわざ「いいね」を押してから、スマホを伏せた。それから数日。俺が病院にいる間、美月とひまりはずっと悠真と遊び歩いていた。そして退院の日まで、二人が病院に顔を出すことは一度もなかった。荷物をまとめるのも、家に帰るのも、すべて一人だった。玄関のドアを開けた瞬間、中から美月とひまりの楽しそうな声が聞こえてきた。リビングでは、美月とひまりがソファに並んで座っている。二人の周りには、大小さまざまなプレゼントの箱が山のように積まれていた。どれも凝った包装がされていて、ひと目で安物ではないと分かる。俺に気づいた途端、二人の表情が変わった。さっきまで笑っていたのが嘘のように冷たくなり、まるで俺が敵でもあるかのような目を向けてくる。以前の俺なら、何事もなかったふりをして自分から話しかけ、険悪な空気をどうにかしようとしていただろう。でも今は、心も体も疲れ切っていた。そんな気力は、もうどこにも残っていない。美月は脚を組んだまま、不満げに俺を見上げた。「航平、今までどこほっつき歩いてたの?何日も連絡一つよこさないで、今さら帰ってくるなんて。父親としてどうなの?」思わず耳を疑
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