クラリスは黙って聞く。 「十四歳の男の子がいました。もうすぐ奉公に出るから、自分は古いものでいいと言って、新しい外套を弟のように面倒を見ていた子へ渡しました。でも、その冬に熱を出しました」 エレナ院長は、淡々と話す。 淡々と話さなければ、続けられないのかもしれない。 「命に関わるほどではありませんでした。ですが、働き口へ出る日が遅れました」 外套一着。 帳簿では、そう書かれる。 けれど実際には、子どもの冬と、奉公に出る日と、体調と、未来に関わる。 クラリスは深く息を吸った。 「記録に残します」 「お願いします」 エレナ院長は、そう答えた。 それから、少し
Huling Na-update : 2026-09-12 Magbasa pa