「詭弁だ」「では、殿下。これらを作る役職名をお教えくださいませ」 ジュリアスが黙った。 そんな役職はない。 王太子妃候補。 それが、クラリスに与えられていた唯一の名だった。 けれど、その名で支払われたものはなかった。 朝から晩まで王宮に詰め、王妃執務院の滞りを直し、貴族夫人の機嫌を取り、神殿への寄付金が遅れないよう財務卿に書簡を送り、王太子の挨拶文を直し、妹のドレスの色まで気にかける。 それらはすべて、未来のため。 いつか王太子妃になるのだから。 そう言われれば、断れなかった。 だが、その未来は今、王太子自身の口で消された。「クラリス」 ジュリアスの声には、苛立ちが混
Last Updated : 2026-08-09 Read more