旧財務卿執務室は、王宮の中でも妙に乾いた部屋だった。 豪奢ではない。 かといって粗末でもない。 壁際には分厚い書棚が並び、窓辺には重い机があり、床には年季の入った絨毯が敷かれている。けれど、王妃執務院のような柔らかさはなかった。 花がない。 香もない。 茶器も、来客を迎えるためというより、長い会議を耐えるために置かれているように見える。 ここは、人を迎える部屋ではない。 数字を閉じ込める部屋だった。 バルツァー元財務卿が長年使っていた執務室。 その扉の前に立った時、クラリスは思わず息を整えた。「緊張しているのか」 隣でレオンハルトが尋ねる。「少し」「珍しいな」
Última actualización : 2026-09-17 Leer más