一月第二週、木曜日、午前十時。 神崎のオフィスは、都心から少し離れた場所にある。古いビルの三階、エレベーターもなく階段を上がると、ドアの横に『KAN DESIGN LAB』というプレートがある。初めて来た日、想像よりずっと小さくて、少し意外だった。でもその小ささが、今は居心地よく感じている。 ドアをノックすると、神崎本人が開けた。 「あけましておめでとうございます」 「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」 「どうぞ」 奥の打ち合わせスペースに通された。四人掛けのテーブルと、壁一面のホワイトボード。窓から冬の光が入っている。神崎はすでにホワイトボードの前に立っていて、何かを書きかけていた。 「早いですね、もう何か書いてるんですか」 「頭の中にあるうちに出しておかないと、消えるんです」 ホワイトボードには、図のようなものがあった。円が三つ、少しずつ重なって並んでいる。それぞれの円の中に、まだ言葉は入っていなかった。 「座ってください。コーヒー、飲みますか」 「いただきます」 神崎がコーヒーを用意する間、沙耶はホワイトボードの円を見ていた。 何が入るんだろう。 コーヒーカップが二つ、テーブルに置かれた。 神崎が向かいに座った。 「今日のメインは、クライアント向けプレゼンの構成確認です。三週間後、コンセプトを持っていく。それに向けて、岸谷さんにブランドデ
Huling Na-update : 2026-10-04 Magbasa pa