Lahat ng Kabanata ng RE:RE:RE 離婚してください~都合のいい女、やめました~: Kabanata 41 - Kabanata 50

52 Kabanata

第41話 最初の打ち合わせ、新年

一月第二週、木曜日、午前十時。 神崎のオフィスは、都心から少し離れた場所にある。古いビルの三階、エレベーターもなく階段を上がると、ドアの横に『KAN DESIGN LAB』というプレートがある。初めて来た日、想像よりずっと小さくて、少し意外だった。でもその小ささが、今は居心地よく感じている。 ドアをノックすると、神崎本人が開けた。 「あけましておめでとうございます」 「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」 「どうぞ」 奥の打ち合わせスペースに通された。四人掛けのテーブルと、壁一面のホワイトボード。窓から冬の光が入っている。神崎はすでにホワイトボードの前に立っていて、何かを書きかけていた。 「早いですね、もう何か書いてるんですか」 「頭の中にあるうちに出しておかないと、消えるんです」 ホワイトボードには、図のようなものがあった。円が三つ、少しずつ重なって並んでいる。それぞれの円の中に、まだ言葉は入っていなかった。 「座ってください。コーヒー、飲みますか」 「いただきます」 神崎がコーヒーを用意する間、沙耶はホワイトボードの円を見ていた。 何が入るんだろう。 コーヒーカップが二つ、テーブルに置かれた。 神崎が向かいに座った。 「今日のメインは、クライアント向けプレゼンの構成確認です。三週間後、コンセプトを持っていく。それに向けて、岸谷さんにブランドデ
last updateHuling Na-update : 2026-10-04
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第42話  ブランドの声と、私の声

三浦彩乃からLINEが来たのは、打ち合わせの翌日だった。 「今週末、ランチどうですか。お店、私が選びます」 沙耶はすぐに返した。「行きます」 以前なら、達哉の予定を確認してから返事をしていた。今日は自分が行きたいと思ったから、先に返した。達哉の予定は後で確認すればいい。そう思えることが、少し前までは難しかった。 土曜日の昼、彩乃が選んだのは、駅から少し歩いた路地の中にある小さなイタリアンだった。 「ここ、好きなんです。うるさくないから」 「いいですね」 テーブルに向かい合って座った。彩乃は去年より少し落ち着いて見えた。最初に会った頃──要求が多くて、沙耶が毎回どこかを削りながら対応していた頃──とは、確かに変わっている。 「サイトのアクセス、まだ伸びてるんですよ」と彩乃は言った。「リニューアルしてから半年経つのに。不思議ですよね」 「ブランドの軸が決まったから、だと思います。発信がぶれなくなった」 「それ、全部あなたのおかげじゃないですか」 「彩乃さんが決めたことです。私は整理しただけで」 彩乃が少し首を傾けた。「岸谷さん、前からそういう言い方しますよね。自分の手柄を渡す感じの」 沙耶は少し止まった。 「……そうですか」 「気になってたんです。もったいないなって」 責めている声ではなかった。ただ、見えているものを言葉にした、という声だった。
last updateHuling Na-update : 2026-10-05
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第43話  プレゼン前夜

プレゼンまで、あと二日になった。 資料はほぼ仕上がっていた。ターゲットの定義、コアコピーの背景、ビジュアルイメージとの接続、競合との差別化。骨格は神崎との打ち合わせで決まっていた。そこに沙耶の言葉を乗せた。 何度も読み直した。削って、足して、また削った。 これでいい。 そう思えるところまで来た。思えるところまで来た、という感覚自体が、以前とは違った。以前は「これでいいだろうか」で終わっていた。今日は「これでいい」だった。 夜の九時過ぎ、スマートフォンが鳴った。 神崎からだった。 「今、少し話せますか」 「はい、大丈夫です」 「資料、確認しました。一点だけ」 沙耶は手元のノートを開いた。 「ターゲット定義の三番目、『まだ踏み出せていない人』の説明が、少し説得側に寄っています。説得じゃなくて、共感から入ってほしい」 「……説得と共感の違いを、もう少し聞かせてもらえますか」 「説得は、こちらが正しいことを証明しようとする。共感は、あなたのことを知っている、と伝える。今の文章は、『踏み出した方がいいですよ』という構造になっています」 沙耶は資料を開いた。 該当箇所を読んだ。 ──確かに。 「わかりました。書き直します」 「急がなくていいです。明日の朝までに送ってもらえれば」
last updateHuling Na-update : 2026-10-06
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第44話 前に立つ

プレゼン当日の朝、六時半に目が覚めた。 アラームより三十分早かった。眠れなくなったわけではなく、目が自然に開いた。天井を見て、今日が何の日か思い出した。 怖いか、と自分に聞いた。 少し。でも昨日より少ない。 起き上がって、仕事部屋に行った。 コルクボードを見た。昨夜貼った言葉がある。 「踏み出せない夜を、知っている。」 今日、この言葉を持って、外に出る。 達哉はまだ寝ていた。 沙耶は静かにキッチンに立って、コーヒーを淹れた。トーストを一枚焼いた。一人で食べた。 窓の外、一月の朝の光が、まだ低い角度から差し込んでいた。 今日着ていく服は昨夜決めていた。紺のジャケットに、白いシャツ。派手ではないけれど、真剣な場に似合う格好だと思った。自分のために選んだ服だった。誰かに褒めてもらうためでも、怒られないためでもなく。 着替えて、鏡を見た。 大丈夫だ。 根拠はなかった。でも、そう思った。 神崎とは現地で合流する約束だった。 クライアントのオフィスは、都心のビルの十二階にあった。エレベーターを降りると、広い受付があった。神崎はすでにそこにいた。 「おはようございます」 「おはようございます。早いですね」 「岸谷さんの方が早い仕事を
last updateHuling Na-update : 2026-10-07
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第45話 静かな夜に、音がする

翌朝、神崎からメールが届いたのは、九時を少し過ぎた頃だった。 件名は「ご報告」だった。 村瀬様より、正式にプロジェクト継続の承認が出ました。岸谷さんのプレゼンが、決め手になったと思っています。引き続きよろしくお願いします。 短いメールだった。 沙耶は三回読んだ。 一回目は、意味を確認するために。 二回目は、本当に書いてあるか確かめるために。 三回目は、自分のことだと受け取るために。 決め手になった。 打ち消しそうになった。でも今日は、打ち消す前に、もう一度読んだ。 「岸谷さんのプレゼンが、決め手になったと思っています」 神崎が、思っていないことを書く人ではないことを、沙耶はもう知っていた。 返信を書いた。 ありがとうございます。引き続き、よろしくお願いします。全力で取り組みます。 送信して、少しの間、画面を見ていた。 「全力で」という言葉を書いたのは、初めてだった気がした。今まで使ったことがなかったわけではないと思う。でも、今日書いた「全力で」は、今まで書いたどの「全力で」とも、少し違う感触だった。 自分の言葉として、書いた。 午前中は次のフェーズの資料整理をした。 ブランドの承認が出たことで、次はビジュアルの具体化に入る。神崎のチームのデザイナーと連携しながら、コンセプトをビジュアルに落とし込
last updateHuling Na-update : 2026-10-08
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第46話  言葉の重さ

神崎のオフィスに向かったのは、一月の最終週、水曜日だった。 今日は初めて、チーム全員が集まる日だった。第19話で一度顔を合わせていた田中と林のことは、覚えていた。田中は三十代のマーケティング担当で、林は二十代のコピーライター志望のアシスタントだった。もう一人、デザイナーの名前は、事前にメールで知っていた。井上颯太、二十六歳。神崎のチームに入って二年目だと聞いていた。 階段を上がって、『KAN DESIGN LAB』のプレートの前に立った。 ノックすると、神崎が開けた。 「おはようございます」 「おはようございます。今日もよろしくお願いします」 奥に三人いた。田中がこちらを見て軽く頷いた。林は立ち上がりかけて、少し迷ってから立ち上がった。井上は細身で、髪が少し長い。ノートパソコンの前に座っていたが、沙耶が入ってくると立ち上がった。 「井上です。初めまして」 「岸谷です。よろしくお願いします」 田中が言った。「田中です。以前一度ご挨拶しましたね」 「はい。お世話になっています」 林が小さく頭を下げた。「林です。よろしくお願いします」 声が少し緊張していた。沙耶も、少し緊張していた。 テーブルに五人で向かった。 神崎が口を開いた。 「今日から、コンセプトをビジュアルに落とし込む作業に入ります。井上がビジュアルを作り、岸谷さんが言葉との整合を確認する。 田中はマーケティング視点からチェ
last updateHuling Na-update : 2026-10-09
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第48話  四人の朝

木曜日の朝、神崎のオフィスに向かった。階段を上がりながら、今日の議題を頭の中で確認した。ビジュアルの進捗確認、次フェーズのスケジュール、林が初めてコピー案を出すと聞いていた。最後の一点が、少し気になっていた。気になる、というのは、悪い意味ではなかった。林がどんな言葉を持ってくるか、純粋に知りたかった。ドアを開けると、三人すでにいた。神崎がホワイトボードの前に立っていた。田中はコーヒーを飲みながらノートを開いていた。林はテーブルの端に座って、手元の紙を見ていた。紙を持つ手が、少し固かった。「おはようございます」三人が顔を上げた。林が沙耶を見て、少し表情が動いた。緊張が、隠しきれていなかった。「おはようございます」と沙耶は林に向かって言った。いつもより少し、柔らかい声で。林が小さく頷いた。神崎が口を開いた。「今日の確認事項は三つです。ビジュアルの進捗、スケジュールの調整、それから林さんのコピー案。順番に行きます」ビジュアルの進捗は、沙耶と井上のやり取りを田中が整理して報告した。「重力が出た、という岸谷さんの評価で、方向性が固まりました。来週、井上が第二稿を上げます」「スケジュールは?」と神崎が聞いた。「三月頭のクライアント確認に間に合います」「わかりました。では林さん」林が顔を上げた。手元の紙を、テーブルの上に置いた。「
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第50話  半分の場所

二月の第三週、火曜日。 神崎のオフィスに向かいながら、今日は少し違う感覚があった。 いつもは、打ち合わせの内容を頭の中で確認しながら階段を上がる。今日は、確認よりも先に、聞きたいことがあった。 聞きたいこと。 自分から、聞く。 そのことが、少し緊張を作っていた。 ドアを開けると、神崎一人だった。 今日は二人だけの打ち合わせだった。ビジュアルの最終確認と、三月のクライアント向け提示の準備。 「おはようございます」 「おはようございます。コーヒー、淹れますね」 「ありがとうございます」 神崎がコーヒーを用意する間、沙耶はテーブルに資料を並べた。 今日持ってきたのは、ビジュアルと言葉の整合チェックシートと、提示用の構成案だった。 コーヒーが二つ、テーブルに置かれた。 打ち合わせが始まった。 ビジュアルの確認は、三十分ほどで終わった。井上の第二稿は、方向として固まっていた。細部の調整は来週でいい、という結論になった。 提示の構成も、大きな変更はなかった。沙耶が作ってきた構成を、神崎が二箇所だけ手を入れた。どちらも、沙耶が迷っていた箇所だった。 「ここ、迷っていました」と沙耶は言った。
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