Lahat ng Kabanata ng RE:RE:RE 離婚してください~都合のいい女、やめました~: Kabanata 21 - Kabanata 30

52 Kabanata

第21話  美和からの荷物

 玄関のチャイムが鳴ったのは、火曜日の午後だった。 宅配の伝票に書かれた差出人の名前を見た瞬間、沙耶の胸の中で何かが、ほんの少しだけ緩んだ。 高梨美和。母からだった。 段ボール箱を開けると、新聞紙に丁寧に包まれた野菜が出てきた。大根が一本。人参が三本。ほうれん草の束。それから、泥のついたままの里芋が袋に入って。 実家の近所の農家から分けてもらったものだろう。子どもの頃から、この時期になると必ず届いた。野菜の種類は毎年少しずつ違うけれど、新聞紙の包み方だけはいつも同じだった。几帳面に、でも温かみのある手つきで、角を折って止めてある。 箱の底に、封筒が一枚入っていた。 便箋ではなく、メモ用紙を折りたたんだものだった。 沙耶は台所のテーブルに座って、それを開いた。沙耶へ。声が変だったから心配してます。お父さんも何も言わないけど気にしてるよ。食べてね。 三行だった。 沙耶は、その三行を三回読んだ。 四回目を読もうとして、視界がにじんだ。 「声が変だった」という一文が、思ったより深いところに刺さった。自分では気をつけていたつもりだった。普通に話していたつもりだった。でも母には、わかってしまったらしい。 電話越しの声を、三行の手紙にして、野菜と一緒に送ってくる。それがこの人のやり方だった。「大丈夫?」と何度も聞いてくることも、「話してごらん」と迫ってくることも、しない。ただ、野菜を送る。 その加減が、今夜の沙耶には少し、苦しかった。 達哉が帰ってきたとき、箱はもう片付けてあった。「何か届
last updateHuling Na-update : 2026-09-14
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第22話 義実家の食卓

 日曜日の昼前、沙耶は助手席で窓の外を見ていた。 高速を降りてから、景色が変わる。住宅街の中に田んぼが混じり始め、コンビニの間隔が広くなる。義実家まであと十五分、というあたりで、沙耶はいつも静かに息を整える。 今日も、そうした。 岸谷家の玄関を入ると、煮物の匂いがした。 景子が割烹着のまま出てきて、「来た来た、待ってたのよ」と言った。声は明るい。でも沙耶への視線は一瞬で、すぐ達哉に移った。「痩せたんじゃない? ちゃんと食べてる?」「食べてるよ」と達哉が笑う。沙耶は「お邪魔します」と言って、靴を揃えた。 食卓には、常夫がすでに座っていた。 新聞を広げたまま、顔を上げなかった。「お義父さん、こんにちは」 沙耶が言うと、常夫は新聞から目を離さずに「ああ」とだけ答えた。それがこの人の「こんにちは」だった。二年経っても変わらない。最初の頃は自分の挨拶の仕方が悪いのかと思って、声のトーンを変えたり、タイミングをずらしたりしてみた。何を変えても、常夫の「ああ」は変わらなかった。 達哉が座ると、常夫はすぐに新聞を置いた。「最近どうだ、仕事は」「まあまあかな」「そうか」 父と息子の会話が始まった。沙耶はその二人の間に座り、景子が運んでくる料理を受け取った。 食事の間、常夫は一度も沙耶に話しかけなかった。 沙耶は景子と二言三言、料理の話をした。煮物の味付けを聞いた。景子が丁寧に答えた。その間も、常夫と達哉の会話は続いていた。
last updateHuling Na-update : 2026-09-15
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第23話 彩乃からの電話

電話が鳴ったのは、水曜日の午後三時過ぎだった。 画面に「三浦彩乃」と出た瞬間、沙耶は少し姿勢を正した。先週のブランドサイト公開から、まだ一週間も経っていない。何かトラブルがあったかもしれない、と思いながら通話ボタンを押した。 「もしもし」 「岸谷さん! ちょっと聞いてください、大変なことになってます」 彩乃の声は、いつもより半音高かった。 「どうしました」 「売上が──先月比で、三倍になりました」 沙耶は一瞬、言葉を飲み込んだ。 「三倍」 「三倍です。三倍。問い合わせも全然止まらなくて、インスタのフォロワーも昨日だけで四百人増えて──どうしましょうこれ、うれしすぎて怖いんですけど」 「それは──よかっ──」 「岸谷さん、本当にありがとうございます」 彩乃の声が、少しだけ変わった。明るさの中に、何か別のものが混じった。 「あのね、言っていいですか」 「はい」 「なんで今まであんな無茶言ってたんだろうって、思って」 沙耶は、返す言葉が出なかった。 「最初の打ち合わせ、私すごかったじゃないですか。あれもこれも、修正もっとって、ブランドの方向性もよくわかってないくせに注文だけ多くて」 「……最初は、方向性を探る時期だったので」 「フォ
last updateHuling Na-update : 2026-09-16
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第24話  仕事部屋がほしい

 思ったのは、特別な瞬間ではなかった。木曜日の午後、寝室の隅のデスクで作業をしていたときだった。神崎から送られてきたブランドの資料を開いて、コメントを書き込もうとした瞬間、達哉が部屋に入ってきた。「あ、ごめん、邪魔した?」「大丈夫」と沙耶は答えた。 達哉は特に何をするわけでもなく、クローゼットから何かを取り出して、また出ていった。それだけのことだった。 でも沙耶は、達哉が入ってきた瞬間に画面から目が離れたことに気づいた。集中が、糸を切られたように途切れた。達哉が何も言わなくても、その気配だけで、沙耶の思考は一度止まった。 作業部屋があったら、と思った。思ってから、その考えが思ったより自然に出てきたことに、少し驚いた。その夜、夕飯の片付けが終わった後、沙耶は達哉に話した。「ねえ、ちょっといい?」「なに」達哉はソファに座ったまま、スマートフォンを置いた。話を聞く体勢になった。それは悪くない兆候だった。「仕事部屋、作ってもいいかなって思って」「仕事部屋」「今、寝室のデスクで作業してるんだけど、集中できなくて。納戸を片付けたら、デスクくらい置けるんじゃないかと思って」達哉は少し考えるような間を置いた。「どこに作るって?」「納戸」「俺の荷物があるけど」「片付けるの、手伝うよ。段ボールに入れて、押し入れに移せば──」「別に今のままでいいじゃん」それで、終わった。
last updateHuling Na-update : 2026-09-17
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第25話  神崎の仕事の流儀

 画面の向こうで、神崎が資料を開いた。オンライン打ち合わせの背景は、いつもと同じオフィスの一角だった。本棚と、白い壁と、観葉植物の端。余分なものが映り込まない角度を、この人はいつも選んでいる。「今日は少し、僕の話をしてもいいですか」神崎が言った。議題の確認よりも先に、そう切り出した。「もちろんです」「ブランドの言葉を作るとき、僕がまず考えることがあって」「はい」「そのブランドを、嫌いな人は誰か、ということです」沙耶はペンを持ったまま、少し止まった。「嫌いな人、ですか」「そうです」と神崎は言った。表情は穏やかだった。「好きになってくれる人を考えるより、先に」「それは──なぜ」「全員に好かれようとすると、誰の心にも届かない。言葉が丸くなりすぎて、触れても何も感じないものになる」神崎は資料のページをめくった。「誰かに届けようとするとき、その誰かを選ぶことが必要です。選ぶということは、別の誰かを選ばないということでもある。それを恐れると、ブランドは輪郭を失う」沙耶はメモを取った。誰かを選ぶことが、誰かを救うことになる。書きながら、手が少し止まった。「岸谷さんは、これまでのクライアントワークで、そこを意識したことはありましたか」神崎に聞かれて、沙耶は少し考えた。「……意識していなかったと思います。届けたい人を考えることはあっても、届けなくていい人を考えたことは、なかった気がして」
last updateHuling Na-update : 2026-09-18
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第26話  父の誕生日

父の誕生日は、十一月の終わりだった。 沙耶は一人でデパートへ行った。 達哉には「出かけてくる」とだけ言った。どこへ、とは言わなかった。父の誕生日だから、と説明することもできた。でも──説明しなかった。 説明する必要がなかったから、という理由が、今の沙耶には自然に出てくるようになっていた。 平日の午後、デパートの中は人が少なかった。 沙耶はエスカレーターを上りながら、父に何を贈るかを考えた。毎年、この時期になると考える。毎年、答えを出すのに時間がかかる。 父は欲しいものを言わない人だった。 聞いても「何もいらない」と言う。「何でもいい」とも言わない。ただ「何もいらない」と言って、それ以上話さない。だから沙耶はいつも、父が何を好きかを思い出しながら、売り場を歩く。 今年は何にしよう。 紳士用品のフロアを歩きながら、沙耶は父のことを考えた。 無口な人だった。家族の中で一番、言葉が少なかった。食卓でも、リビングでも、父の声が聞こえる時間は短かった。でもその分、たまに言う言葉が、妙に重かった。 「無理すんな」と電話口で言われたとき、沙耶は泣いた。五文字だった。それだけで、泣いた。 どうして五文字で泣けるんだろう、と思いながら泣いた。 ハンカチの売り場の前で足が止まった。父はハンカチをよく使う。いつもズボンのポケットに入れている。布製の、柄のないもの。沙耶が子どもの頃、転んで膝を擦ったとき、父はそのハンカチで血を拭いてくれた。何も言わずに、しゃがんで、丁寧に拭いた。 沙耶はハンカチを三枚
last updateHuling Na-update : 2026-09-19
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第28話  達哉の残業

珍しいことだった。 「今日、遅くなる」 朝、達哉がそれだけ言って出ていった。何時になるかは言わなかった。沙耶も聞かなかった。 扉が閉まって、鍵がかかる音がした。 午前中は、神崎から送られてきた資料の確認をした。 新ブランドのターゲット設定について、神崎がいくつかの案を出していた。沙耶はそれぞれにコメントを書き込みながら、自分の考えを整理した。 誰に届けるか。誰を選ぶか。 神崎の言葉が、作業の中にまだ生きていた。 午後になって、沙耶は好きな音楽をかけた。 いつもはイヤホンをつけて作業する。達哉がいると、音が気になると言うから。でも今日は一人だったから、小さなスピーカーから流した。部屋に音楽が広がった。それだけのことが、少し特別に感じられた。 夕方、小腹が空いたので、冷蔵庫にあったチーズと、クラッカーを出した。 夕飯の時間を気にせずに食べた。 達哉がいる日は、夕飯の時間が決まっている。七時までには食卓に出す。それが暗黙のルールだった。誰かが決めたわけではなかった。でも七時を過ぎると、達哉の機嫌が少し変わった。だから沙耶は六時半には台所に立っていた。 今日は、その時間が来ても台所に立たなかった。 七時になった。 クラッカーをもう一枚食べながら、資料の続きを読んだ。 八時を過ぎた頃、沙耶は一人でご飯を食べた。 冷蔵庫にあったもので、簡単に作った。味噌汁と、卵焼きと、残
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第29話  神崎の問い

十一月の終わり、打ち合わせは午後二時からだった。 神崎のオフィスに着くと、チームの二人はすでに席についていた。沙耶が入ると、「お疲れ様です」と声がかかった。 三ヶ月前、初めてここに来た日には、この部屋の空気に少し緊張した。今日はそれがなかった。 「始めましょうか」と神崎が言った。 新ブランドのターゲット設定について、沙耶が用意してきた案をもとに、一時間ほど議論した。チームの意見が出て、神崎が整理して、沙耶がまた言葉を足す。その往復が、今日はよく機能していた。 打ち合わせが終わって、チームの二人が席を外した。 神崎がコーヒーを二つ持ってきた。 「少しいいですか」 「岸谷さんは」と神崎は言った。「どんなブランドを作りたいですか。自分自身の、という意味で」 仕事の延長線上にある質問だった。 でも沙耶には、その問いが仕事の外側まで届いた。 「……考えたことが、なかったです」 正直に言った。 「そうですか」 「自分が作りたいもの、というより、相手が必要としているものを考えてきた気がして。クライアントが何を求めているか、どう応えるか──そちらに、ずっと意識が向いていたので」 神崎はコーヒーカップを両手で持って、少し考えるように間を置いた。 「それは強みでもある」 「強み」 「相手を見
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第30話  景子からのライン

メッセージが届いたのは、月曜日の朝だった。 スマートフォンを手に取ると、通知の送り主に「お義母さん」と表示されていた。沙耶は少し間を置いてから、画面を開いた。 先日はごめんなさいね。達哉のこと、よろしくお願いします。 短いメッセージだった。 沙耶は二回読んだ。 「先日はごめんなさいね」が最初にあった。義実家での食事の日のことを指しているのだろう、と沙耶は思った。台所で言われた言葉──「あなたがもう少し上手くやってあげれば」「慣れるものよ」。あの言葉への謝罪、のように見えた。 でも「達哉のこと、よろしくお願いします」が後にあった。 謝罪が前にあって、お願いが後にある。 その順番を、沙耶はしばらく見ていた。 謝罪のように見えて、謝罪ではなかった。 「よろしくお願いします」が、本題だった。 先日のことを詫びながら、同時に、沙耶に達哉の世話を続けるよう求めている。二つが一つのメッセージの中に、きれいに収まっていた。 以前の沙耶なら、すぐに返信していた。 「こちらこそ、よろしくお願いします」と打って、送信していた。景子の求める答えを、考える前に返していた。そうすることが、円滑に物事を進める方法だと思っていたから。 今日は──その言葉が、出てこなかった。 打ちかけて、消した。 何と返せばいいか、わからなかった。 「こちらこそ」は違う気がした。景子の謝罪を受け取って、同じよう
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