真実を知った朱莉は、二つのことをした。一つ目は、妊娠5か月で中期中絶を受けることだった。お腹の子は、もう胎動を感じるほどに育っていた。処置の最中も歯を食いしばって泣かなかったが、看護師から「お子さんと面会されますか」と尋ねられた途端、泣き崩れながら首を横に振った。二つ目は、離婚届と財産分与に関する合意書を用意することだった。それから、佐久都に電話をかけた。以前なら、佐久都はすぐに電話に出て、優しい声で「朱莉、どうした?」と聞いてくれた。だがこの日は、何度かけてもつながらず、ようやく応答があったのは23回目だった。電話の向こうは騒がしく、続いて友人たちのからかう声が聞こえてきた。「初恋ってのは恐ろしいよな。絵里が帰ってきた途端、佐久都は妊娠5か月の奥さんを家に置き去りだ」「仕方ないだろ。あの子は絵里の身代わりなんだから。佐久都が昔どれだけ絵里を愛していたか、お前も知ってるだろ。別れたときは酒で命を落としかけたし、今まで一度も忘れられなかった。それで、よく似た若い子を口説いて身代わりにしたんだ」「奥さん本人は、まだ何も知らないんだろ。毎日、佐久都にべったりでさ。この前、二人がキスしてるところを見かけたけど、あんなふうに甘えられたら、見てるこっちまで骨抜きになりそうだった。俺なら、あんなかわいくて甘え上手な子が家にいたら、絵里のことなんてとっくに忘れてるよ」「佐久都は冷たそうに見えて、一途だからな。一生、絵里しか愛せないんだろ。さっきも絵里がハイヒールで足が痛いとこぼしただけで、抱き上げてフラットシューズを買いに行ったぞ……」スマホを握ったまま、朱莉は声もなく涙を流した。そのとき、向こうが急に静かになった。「誰だ、俺の電話に出たのは?」佐久都の声だった。「え?知らない。何かの拍子に触ったんじゃないか……」足音が遠ざかり、やがて周囲の物音が消えた。次に聞こえてきたのは、朱莉をいつも夢中にさせていた佐久都の優しい声だった。「朱莉ちゃん、どうした?雷が怖くて眠れないのか?今夜は付き合いがあるんだ。遅くなるけど、帰ったら朱莉と赤ちゃんのそばにいるからな」朱莉は深く息を吸った。「離婚の書類にサインしてほしくて――」言い終える前に、女の声が割り込んだ。「佐久都、足が痛い……」佐久都はしばら
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