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Todos os capítulos de 恋人はあまえた(元)優等生: Capítulo 11 - Capítulo 20

27 Capítulos

#4

久しぶりに名前を呼び合ったあの日から、俺の中の何かが弾けた。皆は相変わらず月仁にご執心だけど、それは俺も同じ。どこへ行くにも何をするにも月仁と過ごしたし、それは必然的に学校中に知れ渡っていった。“……川音君、最近は率先して動いてないよね。先生ともそんなに関わってないし。あ。生徒会選挙の立候補、辞退したんだって!”絶対何かあったよね。……という探りの念をひしひしと感じる。“優等生”として頑張ることをやめた。今までは品行方正のお手本、皆から好かれ、頼られる存在を目指していたけど、今以上にそのイメージが上がることはないと思えた。大勢の中のひとりに戻るのはあっという間で、気付けば俺は誰かに引っ張り出されることはなくなっていた。平和だ。普通ってこんなに平和だったのか。放課後、内心感動しながら廊下を歩いてると、肩を叩かれた。「川音。やっといいコちゃんやめたな」「都波」君、と付け足すと、彼は呼び捨てでいいと返した。「どうだよ、楽だろ?」「確かに。意識されないって、やっぱ良いね。落ち着く」笑って返すと都波は一瞬固まった。しかしすぐに悪戯っ子のような顔を浮かべ、俺に近付いてきた。「それなら見た目も合わせろよ。こんなきっちりネクタイ締めないでさぁ」「わっ! ち、ちょっと!」都波は恐ろしい手際の良さで、俺からネクタイを奪った。「ほら、ボタンも外して。……こっちの方が断然近寄りやすいぜ」「うん……」「何だよ、浮かない感じだな」彼が不思議そうに腕を組んだので、正直に告げた。「真面目そうだから皆近付いてきてくれてたと思うんだ。……恰好変えたら、避けられないかと思って」「はぁ? そんなわけないだろ。中身はお前なんだし」都波は笑い、壁に寄りかかった。「そもそもお前、全校生徒と仲良くなる気か? そんなん無理に決まってんだろ。無理して中身と真逆の恰好なんかしなくていいんだよ」「やっぱりそうかな」「そう。少なくとも俺は、素のお前が見たいけど?」視線が交わる。いつも隠してる部分を射抜くような視線に、思わず目を逸らした。都波は、飄々としてるようでよく相手を観察している。観察してるようで全然相手のことを見てない俺と対照的だ。その後ろめたさから、つい逃げようとしてしまう。「ま、お前が嫌がっても徐々に剥がれてくと思ってるけどなぁ。貴島効果で」
last updateÚltima atualização : 2026-09-10
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#5

月仁は静かに微笑んだ。その頬はわずかに紅潮している。後ろの藍色の空と対照的で、何だか見惚れてしまった。「そ……それなら良かった。俺もバイトしてるってことにすれば、堂々と一緒に帰れるし!」「な。明日は学校に許可証もらいに行く」月仁はぐっと腕を伸ばすと、俺の襟元にそっと触れた。「月仁?」「そういえば、今日はネクタイしてないんだな」彼は首を傾げ、不思議そうに呟く。風がひんやりすると思ったが、彼に言われるまですっかり忘れていた。「そうそう……何故か都波に外されたんだよな」「都波って、同じクラスの?」「うん。優等生なんかやめろってさ。……あ、悪い意味はないよ。俺もよく分かんなくなってたところだから」大きな河にかかった橋を渡る。見晴らしの良い街の景色を眺めながら、空を仰いだ。「俺が優等生じゃなくても、月仁と一緒にいられるなら。……必死に取り繕うのはもうやめようかな。って思って」かっこいい月仁の迷惑にならないように、ってずっと思ってた。でも現実は、みんな月仁の隣にいる人のことなんて気にしてない。それにようやく気付いた。自分のアホらしさに呆れたけど、同時に脱力した。俺はもう、弱い自分を殺さなくていいのだと。頬を搔いて俯くと、月仁は優しい顔で笑った。「無理してることは、最初から分かってたよ」でもお前意外と頑固だからな、と俺の顔を覗き込む。「頑張ってるのも分かったし、それを俺が否定すんのも変かと思って、黙ってた。……でもやっぱり、俺はお前に笑っててほしい」「月仁……」「泣いてる時のお前も可愛かったけど、笑ってる顔が一番可愛いし」「ちょっ……いつの話してるんだよ!」思わず言い返すと、月仁は吹き出し、可笑しそうに肩を揺らした。全力で抗議したいのに。彼が無邪気に笑ってる姿が久しぶりで、目を奪われる。可愛い。それこそずっと前から知ってたけど……何故だが目頭が熱くなった。月仁は俺が誰かにいじめられて泣いてるとすぐに駆け寄ってくれた。涙をぬぐってくれた。────心配しないで。俺が深白を守るから。目元を撫でられ、懐かしい記憶が蘇る。気付けば、月仁は鼻先が触れそうな距離でこちらを見ていた。近い……。このままだと当たっちゃうんじゃないか?心臓がバクバク鳴るのを抑えながら待ってると、彼は何事もなかったように身を引いた。「やっぱり変わらな
last updateÚltima atualização : 2026-09-11
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幼馴染の傷心

実際、これぐらいどうってことない。月仁の力になれたならそれだけで嬉しいから。俺が譲らない姿勢を見せたせいか、月仁は困ったように笑った。「そうだった。本当にありがとな」電車のドア付近に立ち、互いに笑い合う。ただそれだけのことで心が温かくなった。……そうだ。俺はずっと、こういうささいなことで彼と笑いたかったんだ。薄暗くなった空を見上げ、石畳の歩道を進む。駅から歩いて五分ほどのところに、月仁のお兄さんが暮らすマンションがあった。エレベーター前で別れようと思ったのだが、何故か中に引っ張られた為一緒に乗り込む。それで今度こそドアの前で別れようとしたんだけど。「上がっていけよ」「え! いやいや、いいって!」月仁は荷物を中に入れると、ドアを開けたまま呟いた。「突然過ぎて悪い。駄目」「俺だっていつも突然お前の家に行ってるだろ」「俺の家は店やってるから……ほら、お前のお兄さんに許可とってないし」「兄貴の部屋に入らなければ大丈夫って言われてる。それに帰ってくるとしてもいつも夜中だから」な? と言われ、手を差し出される。「……」迷惑じゃないか不安だ。月仁のことだから、気を遣ってる可能性もある。でも遠慮はしない、って言ったばかりだし。……ん?「深白。遠慮はしない、だろ?」「あ。ハイ……」こわごわお辞儀して中へ入る。遠慮は禁止、って……こういう時に使われると逆らえないな。ひとつ学んだところで、初めて月仁のお兄さんの部屋にお邪魔した。綺麗に整頓されていて、普段からしっかり掃除をしてる印象だった。男性の一人暮らしでここまで清潔感をキープできてることは、すごく尊敬する。「チリひとつない……素敵……」「キッチンは特にすごいよ」「ほんとだ、ピカピカじゃん! グリル使ったことあんの? 有り得ないぐらい綺麗。匂いもないし!」「さぁ……とりあえず落ち着け」月仁にやんわり宥められ、我に返る。いかんいかん。自分の家の台所はすごいことになるから、人様の台所事情が気になってしまった。買ってきた物をテーブルに出し、月仁に教えてもらいながら戸棚に仕舞っていく。「これで大体のものは揃ったよ」袋を畳んで、月仁はお湯を沸かした。「ほんとにありがとな。何から何まで」「全然! 何か俺も引っ越ししたみたいで楽しかったよ」笑って言うと、彼は二人分のマグに珈琲
last updateÚltima atualização : 2026-09-12
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#1

月仁は深い黒の瞳をこちらに向け、息をついた。「この世の終わりってこういうことを言うんだな、って思った」「あははっ。俺もそう」誰にも言えない苦しみを押さえ込んで、より暗い場所に潜ろうとしていた。今だから笑って言えるけど、当時は大泣きしたっけ。「月仁と離れたくない、って……毎晩ひとりで泣いてた」十一歳の頃だ。枕に顔をうずめて、泣き疲れて眠るという毎日を送っていた。今思うとどんだけ月仁に依存してんだ、って恥ずかしくなるけど。「……月仁?」「……そういうこと、さらっと言うなよ……」「えー。だって恥ずいし」月仁は何故か額を押さえてため息をついた。恥ずかしい告白なんだから俺が頭を抱えるところだと思うけど。反応が逆なのか可笑しい。「とにかく! 今こうして傍にいられるのが嬉しいよなっ?」「……お前ってほんとに素直だな」月仁は心底不思議そうに座り直し、背もたれに手をかけた。「モテる見た目で、中身まで完璧。でも良いことばっかじゃなかっただろ」「それはそうだけど……俺は目標があるから耐えられたよ」「目標って?」「だから、月仁に成長した姿を見せたい! って目標」高らかに言うと、彼はまたため息をついた。反応薄すぎて虚しくなるけど、彼の頬は妙に赤らんでいた。「月仁は俺の目標を軽んじてるな」「別に軽んじてるわけじゃない。俺といるのに何でそこまでエリートでいようとするのか理解できないだけ」だからそれは……と返しそうになって、珈琲を飲むことで押し込んだ。堂々巡りだけど、羨望の的の月仁の傍にいるには、それ相応のスペックが必要なんだ。小さい頃、月仁はクラスの中心にいた。皆が月仁と遊びたがっていたけど、当の月仁はクラスで一番大人しい俺といたから、それなりにやっかみもあった。「とにかく、昔の弱い俺だと色々問題があるの」「……そっか。でも、そうだな。気付いてやれなくてごめん」月仁が急に申し訳なさそうに頭を下げたから、驚いて椅子を引いた。「いやっお前は何も悪くないから!!」「お前が辛い想いしてた、ってだけで駄目だ。子どもの頃は特に、俺はお前を守れてるって過信して、勝手に誇らしく思ってたし」また、指先が痛んだ。今度は触れてないのに、テーブルの上に乗せてるのが辛いほど。強く握り締めたけど、月仁の辛そうな顔を見たら頭の中が真っ白になってしまった。「俺の
last updateÚltima atualização : 2026-09-13
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#2

月仁の両の頬を手ではさみ、上向かせる。彼はきょとんとしていたけど、すぐに吹き出した。「サンキュー。……お前って時々男らしいっていうか、……熱いよな」「え? ……あ、いや……」指摘されて、慌てて手を引っ込める。確かに、今の宣言はやばかったかも。気持ち悪がられたらどうしよう……。ビクビクしながら座り直すと、月仁は自身の目元を擦り、俺の口にクッキーを差し出した。「そういうところも大好きだ」「……っ!!」見惚れそうな、優しい笑顔。思わず口を開いたら、クッキーを詰め込まれてしまった。ひとまず食べたけど、尋常じゃなく喉が渇く。これ、俺がおかしい……わけじゃない、よな?俺も大概だけど、月仁の台詞も中々際どい気がする。実際どんなに好きな幼馴染でも、男に対して「好き」とか言わないような。でも彼はどこまでも純粋で良い奴だから、彼にとっては普通なのかもしれないし。はああ。幼馴染という繋がりは心強いけど、時々もどかしくもなる。俺が何を言っても、彼が何を言っても、深い意味はないとされてしまいそうで。「……俺も、月仁の強いところが好きだよ」「そう?」「うん。あ、でも無理はしないでほしい。……俺の前では弱いところも見せてほしい……みたいな」しどろもどろになってしまったが、言いたいことは伝わったみたいだ。月仁は頷き、俺に笑いかけた。「わかった。じゃあそれも、互いに約束しよう。絶対無理はしない、って」「……うん」小指に触れる。くすぐったて、でも胸の中がじんわりする。俺も月仁も、クラスメイトの前では見せない姿がある。それがまさに“今”なんだ。いつか、誰かの前でも素の自分に戻れるだろうか。気を抜いたら抱き締めそうなほど大切な彼を一瞥し、想像した。すると突然扉が開き、ひとりの青年が現れた。「ただいま。……って、あれ。友達?」「兄貴。早いじゃん。おかえり」「兄……っ!?」心の準備ができてないせいで、声が裏返ってしまった。月仁のお兄さん……! 久しぶり過ぎて動揺したけど、すぐに立ち上がってお辞儀する。「川音です。お邪魔してすみません!」「いえいえ、どうぞごゆっくり。ん……川音さん?」「兄貴、島根にいた時の俺の幼馴染。昔家の隣にあった小料理屋の子だよ」覚えてない? と月仁が言うと、彼は驚いた顔で手を叩いた。「あぁ! 梢さんところの…
last updateÚltima atualização : 2026-09-14
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#3

時晴さんは俺と月仁を交互に見て告げた。「そ、そうですね……!」多分、彼が言ってるのは青春っぽい活動のことだろうけど。俺は返事してる間もずっと、隣にいる月仁のことを考えてる。……なんて知ったら、彼らはどう思うだろう。普通にやばい奴認定だよな……。顔に出さないようにしないと。努めて真顔を保ち、熱々のピザを頬張る。月仁を盗み見するとやれやれみたいな顔をしていたので、いつも言われてるのかな、なんて思った。今しか言えないことか……。その後も三人で昔のことを話したり、近況報告もしたりして盛り上がった。時晴さんは本当に優しくて、また家に遊びに来てと言ってくれた。「もう真っ暗だから、送って行こうか」「大丈夫ですよ! 俺の家、ここから近いので」マンションの外で時晴さんが心配そうにしていたから、笑顔でお辞儀した。すると今度は月仁が俺の隣に移動し、歩き出した。「駅まで送ってから帰る」「そうか。悪い、頼んだぞ。深白君、またね」「は、はい。夜ご飯ご馳走様でした!」月仁の歩くペースが速いから、別れの挨拶は声を張り上げた。暗い住宅街で、月の光が道を照らしてくれる。俺はぼんやり目の前を見ながら、隣の月仁に話し掛けた。「月仁のお兄さんに会えて良かったよ」「あぁ……最後に会ったの小学生のときだから、びっくりしたろ」「うん。でもスーツ似合っててかっこいいし、やっぱ月仁の兄貴だな〜。って思った!」「何だそりゃ」月仁はくくっと笑って俺の髪を撫でた。「今日は嫌なこと色々聞かせちゃったし、ごめんな」「嫌なことって?」「お前が転校した後のこと。学校で浮いてたって話」踵を鳴らし、月仁は車道に面した細い道に乗り出す。さりげなく内側に押されたから、彼の腕を引いて自分の方に引き寄せた。「嫌なことじゃなくて、大事なことだよ。月仁を傷つけた奴らに腹立つけど……お前が辛いときに何もできなかった自分にも腹立つ」「教えてないんだから何もできないのは当然だろ」「そ、そうだけどさ。これからは教えてよ。俺は月仁の力になりたい」足を止め、力強く告げる。いつも何かしら告白してるせいで、段々耐性がついてきたのかもしれない。彼の目を見て、はっきり伝えることができた。「無理すんな、の前にもうひとつ約束したろ? ずっと傍にいるって。もう絶対、月仁に寂しい思いはさせないよ」「深白……
last updateÚltima atualização : 2026-09-15
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#4

そりゃあ俺は月仁が大好きだから、一緒にいられるのは死ぬほど嬉しい。でも常に罪悪感に苛まれる。自分なんかが彼を独占していいのか、と。だって俺は弱虫で、容量が悪い笑われ者だったから。「深白。おはよう」「あ。お、おはよ。……月仁」翌朝。学校に着いてすぐ、月仁と顔を合わせた。いつもと変わらない様子の彼に安堵し、上履きに履き替える。「ねぇねぇ、今の聞いた? あの二人名前で呼び合ってる!」「ね〜! やば……イケメン同士の名前呼びって破壊力あるぅ~!」聞こえてる聞こえてる。背後でキャッキャしてる女子達に内心ツッコみながら、二人で教室へ向かう。月仁に今の会話が聞こえてなければいいなと思ってると、今度は他のクラスの男子が話しかけてきた。「あっ。なぁ川音、今日の放課後暇? ちょっと女子と集まることになっててさぁ……貴島も来てくれると助かるんだけど」う。また合コンか。穏便な断り方を考えてると、月仁が前に出て毅然と言い放った。「ごめん。俺達バイト入ってるから」「あー、そっか。じゃあしょうがないな。サンキュー」彼はがっくりした様子で去っていった。「そうだ。“それ”があったこと忘れてた。さすが月仁」「お前が提案してくれたことだろ」月仁は腰に手を当てる。呆れられてそうだけど、彼は俺の額を指で押し、笑った。「深白が“そういう”場所に行ったら狙われて大変だ」「何言ってんだよ。そりゃ月仁の方だろ。今や学校を代表するイケメンて噂されてさぁ……」頬を膨らまして言うけど、内心は複雑だった。良いことばかりじゃなくて、同性からのやっかみを受ける可能性がある。しかもそれは月仁が変わるキッカケにもなったことだから、悪意をぶつけられるようなことがあれば何としても防いでやりたかった。俺が月仁を守らないと。頭の中で何度も繰り返して、胸に誓う。でも、ちょうどこの日を境に、俺を取り巻く環境が明確に変わった。「川音。今好きな音楽って何?」「おい、俺が好きな食べ物訊くほうが先だって」「ま、まあまあ……言うからちょっと待って」第二のモテ期襲来。しかし男限定。何故か急に学校中の男子から話しかけられるようになった。以前と決定的に違う点は、プライベートなことを訊かれることだ。前はあくまで優等生として、学校全般のお願いや質問をされていた。でも今はみんな、俺個人に関心を持
last updateÚltima atualização : 2026-09-16
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#5

「そうなの?」「そう。つうかそろそろ自分が可愛いこと自覚しろ」か……っ!?不意討ちの台詞に顔が熱くなる。「可愛くはない! 強いて言うならかっこいい、だ」「じゃあそういうことにしとくか。とにかく、今のお前はただ立ってるだけで狙われやすい。かわ……かっこいいから」何か言い直された気がするけど。月仁は変わらず、真剣な表情をしていた。「でも今度は絶対、俺が守る。だから俺の傍から離れな」「自分のことは自分で守る! もうガキじゃないんだから、大丈夫だよ」だけど、どうしても我慢できずに月仁の言葉を遮ってしまった。俺は自分どころか、月仁のことを守りたいんだ。なのに彼に守られるなんてこと、あってはいけない。使命感のようなものに支配されて言い放ったけど、月仁の表情も険しくなる。さっきより確実に強い語調で返してきた。「お前の気持ちは尊重する。でも今は意地張ってるようにしか見えない。……いや、初めからずっと……お前は何かを怖がってる」「……!」月仁の鋭い眼差しを受け、言葉を失った。きっと、図星だからだ。そして、それを否定する言い訳すら浮かばない自分に落胆している。月仁はどんな時も俺の本心を見抜いている。それに気付いたらいたたまれなくて、息が苦しくなった。「怖がらなくて大丈夫だ。もう離れることなんてない。ずっと傍にいるから」そっと指が伸び、俺の前髪を撫でた。でも俺は臆病で、それすらビクッとしてしまった。月仁の驚いた顔が見えた時……彼を傷つけてしまったんだと分かり、さらに頭が真っ白になった。「ごめん……!」「おい、深白!」考えるより先に、足が動いていた。廊下へ出て走り去る深白を追いかける為、月仁も扉へ向かう。そこには都波が佇み、腕を組んでいた。「取り込み中ごめん。貴島って、意外と熱いんだな」「……」月仁は足を止め、一旦呼吸を整える。彼の言うとおり過去最高頭に血が上っていたが、努めて冷静に答えた。「別に。親友だから」「親友? 嘘だろ?」都波は目を丸くし、今度は前に身を乗り出した。しかしそれは彼だけでなく、教室にいた数人も同じ反応で。「嘘じゃないよ。……でも色々熱くなってたから白状する。親友っていうか、深白とは幼馴染」「幼馴染? 嘘だろ?」都波含め、全員が先ほどと全く同じリアクションをした。隠していたことは申し訳ないけど、やや
last updateÚltima atualização : 2026-09-17
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幼馴染の本心

「何があったか言いなって。俺が力になる」彼は地面に膝をつき、息が当たりそうなほど顔を近付けてきた。匂いのことも気になるけど、それ以上にこの空気はまずい、と思った。腰に手を当てられ、顎を掴まれている。まさか、同性愛者か。力が抜けて立てないものの、後ろに身を引いた。「ほ、本当に何でもないって」「強がんなって。そんな顔して言われても、むしろ逆効果だし」彼の手が、さらに下へと伸びる。こんな外で何かするわけない。そう思ってはいるけど、────どうしよう。「いやだ……っ」助けて。……月仁。瞼を伏せ、心の中で叫んだとき……彼の手が離れた。「……何してんだ?」「月仁……っ!」彼の腕を押さえ、俺から引き離したのは月仁だった。いつもと同じ無表情だけど、息を切らしている。走って来てくれたことはすぐに分かった。「いってえな! いきなり何すんだよ、ぶっ飛ばすぞ!」「かまわないけど、そしたら先生に来てもらうよ。殴ったことより、ヤニ臭い方を問い詰められると思うけど」月仁も気付いたようだ。バツが悪くなったのか、慌てて手を振り払い、少年は校舎の中へ去って行った。怖かったけど解放されて、また力が抜けてしまった。両手を地面について俯くと、目の前に月仁の靴が見えた。「深白」「月仁。さっきはマジでごめ……わっ!?」謝ろうとしたものの、突然視界が急上昇してパニックになる。有り得ないことに、月仁にお姫様だっこされていた。「ちょっとちょっと! 何だよ急に!」「暴れんなって。大人しくしてろ」月仁は静かに言うと、そのまま倉庫室に入っていった。一番奥まで向かい、棚の影に隠れる。ようやく下ろしてもらえたけど、大きな声を出してはいけない気がした。壁に背を預けながら、目の前に屈む月仁を見つめる。「大丈夫か? さっきの奴に何された」「あ……ううん、大丈夫。何かされる前に月仁が来てくれたから」少しはだけた襟元を押さえると、月仁は明らかに苦しそうな表情を浮かべた。「この学校は危険だらけだな」「あはは……たまたまだよ。何も心配ないって」「泣いてるのにか?」目元に月仁の指が触れる。教室にいた時はともかく、今はもう大丈夫だと思ったのに。……月仁の指と膝には、俺の頬を伝う雫が零れていた。嘘。そんな怖かったのか。っていうか……。月仁が助けに来てくれたことが、本当に嬉
last updateÚltima atualização : 2026-09-18
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#1

「何があったか言いなって。俺が力になるけど?」彼は地面に膝をつき、息が当たりそうなほど顔を近付けてきた。匂いのことも気になるけど、それ以上にこの空気はまずい、と思った。腰に手を当てられ、顎を掴まれている。まさか、同性愛者か。力が抜けて立てないものの、後ろに身を引いた。「ほ、本当に何でもないって」「強がんなって。そんな顔して言われても、むしろ逆効果だし」彼の手が、さらに下へと伸びる。こんな外で何かするわけない。そう思ってはいるけど、────どうしよう。「いやだ……っ」助けて。……月仁。瞼を伏せ、心の中で叫んだとき……彼の手が離れた。「……何してんだ?」「月仁……っ!」彼の腕を押さえ、俺から引き離したのは月仁だった。いつもと同じ無表情だけど、息を切らしている。走って来てくれたことはすぐに分かった。「いってえな! いきなり何すんだよ、ぶっ飛ばすぞ!」「かまわないけど、そしたら先生に来てもらうよ。殴ったことより、ヤニ臭い方を問い詰められると思うけど」月仁も気付いたようだ。バツが悪くなったのか、慌てて手を振り払い、少年は校舎の中へ去って行った。怖かったけど解放されて、また力が抜けてしまった。両手を地面について俯くと、目の前に月仁の靴が見えた。「深白」「月仁。さっきはマジでごめ……わっ!?」謝ろうとしたものの、突然視界が急上昇してパニックになる。有り得ないことに、月仁にお姫様だっこされていた。「ちょっとちょっと! 何だよ急に!」「暴れんなって。大人しくしてろ」月仁は静かに言うと、そのまま倉庫室に入っていった。一番奥まで向かい、棚の影に隠れる。ようやく下ろしてもらえたけど、大きな声を出してはいけない気がした。壁に背を預けながら、目の前に屈む月仁を見つめる。「大丈夫か? さっきの奴に何された」「あ……ううん、大丈夫。何かされる前に月仁が来てくれたから」少しはだけた襟元を押さえると、月仁は明らかに苦しそうな表情を浮かべた。「この学校は危険だらけだな」「あはは……たまたまだよ。何も心配ないって」「泣いてるのにか?」目元に月仁の指が触れる。教室にいた時はともかく、今はもう大丈夫だと思ったのに。……月仁の指と膝には、俺の頬を伝う雫が零れていた。嘘。そんな怖かったのか。っていうか……。月仁が助けに来てくれたことが、本
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