Todos los capítulos de 五年の贖罪婚を終わらせた日、愛だけはくれなかった御曹司は私を狂おしいほど求め始めた: Capítulo 61 - Capítulo 62

62 Capítulos

61話

  画面の向こうで、湊は膝の上の拳を、白くなるほど握り締めていた。「莉子に、です」 雪乃は顔を上げる。「音楽で飯を食っている人間が、他人の曲を自分の名前で歌った。この仕事で一番やっちゃいけないことを、一番堂々とやったんです。しかも昨日、そのまま俺に『年末のトリを譲ってくれませんか』って言ってきたんですよ。許せません」 湊の声は低く、荒げてはいなかった。(責められるのは、私のはずなのに) 雪乃は膝の上で、左手を握り直した。「それから、桐生社長にもです」 柊也の名に、左手がぴくりと動いた。「あの人は、この業界で何人ものミュージシャンを預かる側の人間でしょう。莉子が誰かの曲に手を出しかけたら、本来は止める立場のはずです。それなのに、自分の手で持ち出して、渡した」 湊は短く息を吐いた。「曲が似てしまうことは、この仕事をしていればあります。俺だって、どこかで聴いた曲に似てると言われたことは何度もある。でも、データごと持っていって別の人間の名前で出すのは、それとは全然違います」 そこで湊は、言いにくそうに目を逸らした。「それに、悔しいけど、あの曲はいい曲でした。売れると思った。先輩の曲なんだから、当たり前なんです。それが他人の名前で売れていくのが、一番腹が立つ」『私が、不用心だったから』「そこじゃないんです」 湊は首を横に振った。「そりゃあ、用心してほしかったとは思います。でも、それより盗んだ側が悪いに決まってる。先輩に腹は立ちません」 ほんの一瞬、湊の声が掠れた。「俺が怒ってるのは、先輩が『もう曲を作るのをやめます』って言ったことです。さっき頭を下げた時の顔、『これで終わりだ』って顔でした」 雪乃は息を呑んだ。 顔に出ていたのだ。湊の目は、少しも逸れない。「俺は、先輩の曲が欲しくて頼んだんです。……まだ、歌いたいんですよ。今回の三曲だけじゃなくて、この先、先輩が作る曲も」 湊は一度口を閉じたが、すぐにまた話し始めた。「なのに、もう作らないなんて言わ
last updateÚltima actualización : 2026-10-19
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62話

 『――はい』 雪乃はまっすぐ湊を見つめ返し、深く頷いた。「よし!」 画面の向こうで湊がパッと弾けるような笑顔を見せる。「チャンネルは登録者と再生数が増えれば、収益にもなりますから。これから忙しくなりますよ! チャンネル開設に、曲作り、俺のソロ曲! あ、俺今日オフなので先輩が落ち着いたら後で連絡ください。電子透かしの方法を説明するんで、パソコン繋げて画面共有しましょう」『本当は今夜、湊の事務所の社長に曲を披露する予定だったんだよね……』「あ、それは代わりに彗を行かせることにしました! あいつ、この秋にソロ活動をするので、その時の曲を披露する、って名目ですので心配しないで下さい!」『そうなんだ……彗はソロ活動をするんだ』 ふと……大きなお世話かもしれないが雪乃の胸に心配が過る。彗は、今夜、社長と喋ることができるのだろうか……? 雪乃の表情から心配を察したのか、湊は笑った。「曲を歌わせておけば大丈夫です!」 湊はハッと我に返ったように苦笑いした。「って、朝早くに電話すみませんでした! また、あとで!」 ぶつりと通話が切れる。雪乃は携帯を胸に抱き締めた。 さっそく曲を作ろうと思い部屋を出ると、廊下に立っていた黒木が静かに声をかけてくる。「奥様、まずは朝食です」 雪乃は小さく頷いた。「朝食のあとは病院です」 雪乃は自分の右手に視線を落とし、それから黒木を見上げた。『痛みは引きました』「まだ腫れています。診てもらうべきです」 早く曲を作りたい――そう思って口を開けかけるも、黒木の静かな圧に押されて素直に頷いた。 黒木がタオルに包んだ保冷剤を差し出す。雪乃はそれを受け取り、腫れた右手に当てた。 人に心配され慣れていないせいで、黒木から心配されると妙に擽ったい。「……良かったですね」 ポツリと漏れた黒木の呟きに、雪乃
last updateÚltima actualización : 2026-10-20
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