絵姿を見た時に感じたサンドラとローズの接点は、シャルロッテの一言でまた絡まり始める。 けれど一つ分かった事もある。やはりヴェール家は長女のリリアナが支えていたという事だ。 アルフレッドは帰りの馬車の中で頭を抱えていた。「一体何がどうなっているんだ……」 サンドラとは誰だ。あの夜の女は誰だ。そしてヴェール家の長女リリアナは、どこに姿を隠している。 サンドラは相変わらず自分の素性を何一つ教えてはくれない。それは自分を守る為なのか、それとも別の誰かを守るためなのか、それさえも分からなかった。 それにルークは言っていた。あの夜の女もまたヴェール家と何かしらの関わりがあるかもしれないと。「ヴェール家はその名の通り、秘密ばかりだな!」 だが突然のアルフレッドとアイリーンの婚約や薬を盛られた事、さらにはアイリーンの執拗なまでのサンドラへの執着はどう見ても無関係とは思えないし、今日に至ってはヴェール家の当主までもがサンドラに会いに来た。「こんな事なら会議など蹴り出してサンドラに同席すれば良かった……」 そうすれば何か少しでも分かったのではないか。それにサンドラは大人しくて控えめな女性だ。ヴィンスに何か吹き込まれていやしないかも心配である。 アルフレッドは屋敷に戻るなり早足でサロンへと向かったが、そこにはもう誰も居ない。片付けをしていたメイドにサンドラがどこに居るか尋ねると、サンドラは相変わらずラボに居るという。 それを聞いてラボに向かい窓から中を覗くと、サンドラが調香用のエプロンをつけて皆に囲まれながら調香していた。「本当に好きなんだな、この仕事が」 試験管を覗き込む表情は真剣そのもので、持ったスポイドは少しも揺れない。そんな様子を仲間たちも固唾をのんで見守っている。 すぐにでもサンドラに今日の事を聞こうと思っていたアルフレッドだったが、踵を返して部屋へ戻った。サンドラの邪魔はどうしてもしたくなかった。 サンドラが屋敷のリビングへ戻ってきたのは半時ほどした頃だ。「もう戻られていたんですね! 馬車を見て驚きました」
最終更新日 : 2026-10-03 続きを読む